【内匠宏幸】「引き分けは引き分けよ」岡田彰布のドロー論、負けないチームで首位を守る
シーズンの約6分の1を消化した時点で首位に立つ。それもどん底の状態を脱してからの右肩上がり。これが阪神の底力…。現在、連勝も更新中で、4月24日の雨の横浜で9回逆転劇。これで7連勝である。 この連勝中に引き分け試合が2度もある。監督の岡田彰布はこれに胸を張る。確かに勝ちきれなかったこともあるけど、負けないチームになっていること。これがデカい。 例えば24日の...
日刊スポーツ記者、フリーライターとして約50年にわたって阪神の戦いぶりを見続けてきた内匠宏幸氏。特に岡田彰布氏との縁は深く、6球団競合の末、早大からドラフト1位で阪神に入団した1980年に密着連載を担当。その後も選手、コーチ、第1次監督時代を通じて精力取材を続け、監督としてリーグ優勝を果たした2005年も日刊スポーツ紙面(大阪版)でコラムを連載した。その野球観、猛虎愛に触れてきた内匠氏が「岡田の野球」を追います。
シーズンの約6分の1を消化した時点で首位に立つ。それもどん底の状態を脱してからの右肩上がり。これが阪神の底力…。現在、連勝も更新中で、4月24日の雨の横浜で9回逆転劇。これで7連勝である。 この連勝中に引き分け試合が2度もある。監督の岡田彰布はこれに胸を張る。確かに勝ちきれなかったこともあるけど、負けないチームになっていること。これがデカい。 例えば24日の...
中日との初戦(4月19日)、試合前の練習を終えたあと、ヘッドコーチの平田勝男が近づいてきた。「いやー、よく粘ったかいがありました。監督が言っていた通り、チームがガラリと変わりましたからね」。長く続いた底の状態を抜けた。ポイントになったのは? こちらの問いに平田は即座に返してきた。「あのゲームです。よく引き分けたから。負けていたら、どうなっていたか。巨人と引き...
1985年4月17日、甲子園でのバックスクリーン3連発…。バースが打ち、掛布が打った。直後の打席、大騒ぎの中、岡田彰布は実に冷静だった。 「バース、カケさんに打たれたあと、槙原は何を投げてくるか。必ずスライダーがくる。そう確信していた」。岡田は振り返っている。狙い球を絞り、その通りの甘めの球がきた。打って当然とばかり、岡田が狙い打った打球は、センターのクロマ...
その日の打順はどう決まる? これは各球団によって違いがある。阪神の場合は? 例えば星野仙一が監督だった2002、2003年は試合前、当時の打撃コーチだった田淵が原案を作成し、それをヘッドコーチの島野に提出。よほどのことがない限り、変更することなく星野に示される。そこで星野が「よっしゃ」となれば、GOサイン。試合に臨むことになる。 前回の岡田体制でも同様の手順...
「アレ」から19年…。今回のアレとは2005年9月7日、マウンドで発した阪神監督、岡田彰布の言葉。「打たれろ。むちゃくちゃやったれ。オレが責任を取る」。9回裏1死満塁。投げる久保田はその時のことを、はっきりと覚えているのだろうか。 20年近く過ぎた今年、久保田と雑談した時、あのシーンに話題が移った。岡田が本当に「むちゃくちゃやったれ」と伝えたのかどうか。所説...
開幕から3カードを消化した。チームとしての成績は4勝5敗とひとつの負け越し。昨年はといえば9試合が終わって5勝3敗1分け。さほど変わりはない。状態が悪い中、この成績で収まっているわけだから、スタートとしてはまずまず…といったところではないか。 スポーツ新聞のリーグ打撃表を見直した。規定打席に足りているバッターの中、下から2番目のところに、その名前があった。佐...
4月3日のDeNA戦の試合後だった。逆転勝ちした展開に、阪神監督の岡田彰布は「守り勝ちよ」と言った。勝負どころでの守備が光ったゲームで「これが阪神の野球」と納得する結果だった。 その前日、2日は真逆の内容だった。先発の村上がまさかの初回4失点。引き金になったのは三塁佐藤輝のエラーだった。1死一、三塁での三塁ゴロ。強い当たりではあったが、正面だったし、併殺で脱...
東京に乗り込む直前。阪神監督の岡田彰布と会った。大阪で所用があり、それを済ませたあと「少しなら時間があるで」と老舗のバーで待ち合わせた。お気に入りのハイボールを飲みながら、開幕カードのことを語り始めた。 「なあ、今年はそんなにうまくはいかへんやろ。去年は特別よ。うまくいき過ぎたからな」。本音が出た。その時、すでに予感があったのか。巨人戦はまさに苦しすぎる3連...
先日、NHKの放送企画で監督座談会が開かれ、放映された。昨年とほぼ同じ顔ぶれだったが、ひとり新監督が。巨人の阿部慎之助である。 最年長の阪神監督、岡田彰布は阿部のことをよく知らない。巨人といえば前監督の原辰徳のイメージが強く「原のことなら、何でもわかるけどな」。収録中の休憩時間。岡田は部屋で中日の立浪、そして阿部と3人になる時間があった。岡田と立浪は昔、同じ...
岡田阪神は果たして球団史上初のセ・リーグ2連覇、2年連続日本一を達成できるのか-。日刊スポーツが誇る名物ライター3人がシーズン開幕を直前に控え、24年猛虎への思いを書き込んだ。オープン戦は球団ワーストの開幕9連敗から苦しんだチームだが、もちろん本番はこれからや! ◇ ◇ ◇ ◇ 2024年シーズン開幕 直前のタイミング。阪神開幕特集の原稿依頼をいただいた...
オープン戦の最後。3月24日のオリックス戦の7回裏だった。この時点で1点リード。ここからどう逃げ切るか。阪神監督の岡田彰布が得意とする継投に入る。 この回、オリックスの先頭は紅林。そこでマウンドに送ったのが漆原だ。右対右で封じにかかる。計算通りにショートゴロに仕留めたところで、岡田がベンチを出る。漆原はワンポイントで、宗を迎えたところで左の島本に代えた。ここ...
レギュラーシーズンに入ると、ヒーローインタビューがある。いわゆる「お立ち台」というものだ。その時、打のヒーローからよく聞くフレーズがこれ。「気持ちで打ちました!」。そんなこと、あるかいな…といつも思っていた。 それで現役時代の岡田彰布に尋ねた。「気で打てるものか?」。すると真顔で「打てる。打てます」と返してきた。岡田だけではない。取材した超一流打者も同様だっ...
大昔を思い出した。いまから44年も前のことだ。1980年の3月。その時の阪神の監督はブレイザー。彼はかたくなにビッグルーキーを試合に使わなかった。ドラフト1位の岡田彰布に対して、本当に冷たい対応に終始した。 阪神ファンは声を上げる。「岡田を使え!」と騒ぎ、関西のマスコミもブレイザーに迫る。「どうして起用しないのか?」「考え方を聞かせてほしい」。当時、日刊スポ...
「あの時」の真弓明信はすさまじかった。日本一になった1985年。時の監督、吉田義男は迷うことなく、真弓を1番で起用。小細工なしの先頭打者に、ほとんど制約はなかった。「最初にガツンとやってくれればいい」。それで真弓の強烈なパンチ力が開花した。打率はゆうに3割を超え、ホームランは34本。こんな1番打者はこれまでになかった。異色の1番で、その長打率は6割。バース、...
さえない顔つきもわかる。オープン戦、勝ちなしの9連敗。いくらリハーサルとはいえ、ミス連発の内容に、監督の岡田彰布の口調は重い。 最近、試合後によく聞くのが捕手への苦言だ。中には強烈なフレーズもあった。「キャッチャーが若い投手を殺してしまう…」って、あまりに過激。それほど今は、捕手問題で頭を痛めている。 実は…の話をひとつ。沖縄キャンプ中に梅野が故障。右肩の肉...
日刊スポーツの評論家、梨田昌孝と久しぶりに会った。3月6日の甲子園。評論の仕事で来ていた梨田に聞いてみた。「オープン戦といえども連敗はこたえる?」。阪神はここまで勝ちはなし。連敗中だけに、監督の心持ちはいかに。 「関係ない。まったく関係ないよ。この時期の試合で、勝ち負けは気にしない。監督のほとんどはそう思っている。岡田監督だって、そうだと思うよ」。梨田は監督...
岡田彰布は怒っていた。本気で怒っていた。監督復帰する前、評論家時代のことである。怒りの矛先、それは木浪、北條に向けたものだった。 矢野体制下、ショートのポジションを争っていた2人。ところがいとも簡単にルーキーに抜かれてしまった。「なあ、何をしてたんやろな。新人にポジションを奪われてな。ホンマ、情けないわ」。2021年。いまから3年前のこと。ネット裏から阪神の...
いよいよ3月。開幕まで1カ月を切った。3月29日、東京ドームでの巨人戦で2024年シーズンの幕が開く。監督の岡田彰布にとって、開幕で巨人と激突するのは2004年、監督就任の年以来になる。この試合、先発にエース井川を立て、打線も活発。8-3の激勝だった。 あれからちょうど20年。今年の開幕カードを「大事な開幕カード」と岡田はすでに位置付けている。もともと開幕戦...
1カ月に及ぶキャンプは、いよいよ打ち上げを迎える。果たして合格点のキャンプだったのか? 監督の岡田彰布が見せた渋い表情が、答えを表している。 プロの世界、やはり甘くはない。岡田が期待した新戦力の出現はなかった。特に野手に関しては顕著だった。スポーツ新聞で大きく扱われた井上、野口、ルーキーの福島は1軍定着へのアピールは不発。前川だけが生き残るという厳しい結果を...
就任会見に先立ち行われた対談で岡田彰布前監督(左)から花束を渡され、笑顔を見せる真弓明信新監督(2008年撮影) 唐突ですが、昔を振り返り「JFK」のことを書く。 球界の革命的システムと評された体制。2004年、阪神の監督になった岡田彰布と投手コーチの中西清起が綿密に検討を重ね、準備して作り上げた。「相手のラッキーセブンをまず抑え込む」。ここから8、9回を牛...
キャンプの主役はコーチ! 監督の岡田彰布が好んで使うフレーズだ。そのコーチ陣、昨年と同じ顔ぶれである。日本一になったわけだから、手を加える必要はなし。新たに上本、渡辺亮がスタッフに加わったが、基本は変動なしの安定内閣…といったところか。 2年前のオフシーズン。監督復帰が決まった段階で、岡田は球団と話し合い、組閣検討を続けていた。その結果、ヘッドコーチの平田が...
2月14日、沖縄にて。久しぶりの沖縄で阪神監督、岡田彰布に会った。半ドンで終えた練習後、夕方から食事。同席していたのが投手コーチの久保田だった。彼に聞いてみた。うわさの門別…についてだった。 「それはすごい資質の持ち主。すべてに際立っているけど、これから先のことはわからない。でも可能性は無限大。現時点で僕が気にしているのがスタミナ。肩、肘のスタミナ、気持ちの...
ポカポカの陽気に、多くのファンの来場。沖縄キャンプは第2クール終了まで、それは順調な歩みだった。天候に恵まれ、スタンドの空気もよし。選手もその気で練習に励む。ここまでは何の不満もなく…といったところか。監督の岡田彰布の口から不満やグチは飛び出さない。現場で取材する日刊スポーツのトラ番に聞くと「機嫌はいいです。取材時間を多くとってもらい、穏やかな会見が続いてい...
沖縄から小気味いい打球音が届いている。キャンプインしてからのスポーツ新聞。大きな見出しで「〇〇、サク越え〇発!」。これはキャンプならでは、キャンプ恒例の記事だが、ここ数年、必ず名前が出るのが井上広大である。 今年もいきなり登場した。沖縄・宜野座の球場のレフト側。ポンポンと打球がフェンスを越えていく。これだけで期待が膨らむが、これもまた例年通り。キャンプでの大...
阪神の沖縄・春季キャンプは第1クール終了。極めて順調なようで、監督の岡田彰布も納得の表情を浮かべている。 「ここ数年、コロナ禍の影響で、何をするにも制限が設けられた。それがなくなったわけやし、気分的にもホンマ、エエ感じ」。それを表すように、すでに「臨時コーチ」として球団OB、球界OBが続々、宜野座を訪れている。制限がなくなり、球団も受け入れを自由にしている。...
2月1日、キャンプイン。その前日、沖縄入りした阪神監督の岡田彰布は選手を前に熱弁をふるった。チームミーティングでのこと。「今年も勝ちたい。オレはホンマに勝ちたいと思っている」。それは「優勝できる力があるから」と根拠のある願望を口にしたのだ。 今年の沖縄1軍キャンプ。投手、捕手、内野手、外野手合わせ40人。平均年齢はなんと25歳である。若い、本当に若い選手層。...
テレビやスポーツ新聞で取り上げられる「岡田語録」。キャンプイン直前で最も興味をそそられたのが巨人の印象を語ったもの。「最もてこずりそうな相手」として挙げたのが新生巨人だった。 監督が原辰徳から阿部慎之助に代わった。これだけでも変化が生まれる。さらに2年連続Bクラスの屈辱。「巨人は常に優勝を求められるチームやからな」と常々、ライバルを意識してきたが、今回のこの...
1月25日付の日刊スポーツの1面。「レギュラー白紙よ」の大見出しだった。今シーズン、投手を除く8つのポジションで、レギュラーが決定しているのが大山(一塁)、中野(二塁)、近本(センター)の3人だけ。残るポジションはレギュラー白紙と監督の岡田彰布が明かしたというものだった。 あと1週間後に迫った春のキャンプ。ここで選手間競争をあおり、さらなるレベルアップを…と...
1月19日、兵庫・西宮市内のホテルで、今年初のスタッフ会議が開かれた。事前に連絡し、監督の岡田彰布は早めに会場入りしてくれることになった。2024年、初の取材であったが、やはり聞きたいのは「連覇」についてだった。 岡田の経歴は球団では非常に珍しいもの。1985年は現役でリーグ優勝、そして日本一になり、2003年はコーチで、2005年は監督としてリーグ優勝を味...
あと10日ほどでキャンプイン。「連覇」へのスタートを切る。2リーグ分立後、初の連覇に挑む2024年シーズン。期待は膨らむばかりだが、そこには壁が立ちはだかる。38年前がそうだった。 初の日本一になった翌年、1986年。シーズン前の予想でも阪神が大本命だった。打ちまくった打線があれば…という予想だったが、僕はそのシーズンから広島カープ担当、いわゆる赤ヘル番にな...