引退の原口文仁 帝京高時代、正捕手として持参したノートに日本代表・大藤敏行監督は感心

「原口文仁」が記憶に残る名前になったのは09年夏、中京大中京(愛知)の大藤敏行監督(当時、現享栄監督)に聞いた話からだった。 中京大中京は同年夏の甲子園を制し、大会後に開催された日米親善野球で大藤監督は日本代表を率いることに。大会に向けた合宿が始まった日の夜、監督の部屋をたずねてきたのが帝京(東京)の捕手、原口だった。持参したノートには、代表入りした投手陣の...

「原口文仁」が記憶に残る名前になったのは09年夏、中京大中京(愛知)の大藤敏行監督(当時、現享栄監督)に聞いた話からだった。 中京大中京は同年夏の甲子園を制し、大会後に開催された日米親善野球で大藤監督は日本代表を率いることに。大会に向けた合宿が始まった日の夜、監督の部屋をたずねてきたのが帝京(東京)の捕手、原口だった。持参したノートには、代表入りした投手陣の...

DeNAとの熱戦が続いていた、CSファイナルステージ期間中のことだ。阪神ジョン・デュプランティエ投手(31)は、決戦前に少し特別な想いを抱いていた。 「まずは誇らしいな、と。自分たちがこういうところで、この場面で出会えること。投げ合えるチャンスがあるということはすごく誇らしい」 CSファイナルステージでは第4戦に登板だった右腕。阪神の3連勝で登板は幻となった...

ようやく阪神のポストシーズンが始まる。史上最速9月7日の優勝決定から中37日。レギュラーシーズンが終わった10月2日から中12日。気がつけば秋が深まり、ナイターの時間帯は半袖だけでは心もとない。 出場6チームは毎回、この期間をどう過ごすか頭をひねった。最も間隔が空く阪神はフェニックスリーグに1軍本隊を“移設”することにした。 2軍が経験を積む秋の教育リーグで...

ドラフト1位金丸夢斗投手(22)のプロ1年目のシーズンが終わった。15試合で2勝6敗も、防御率は2・61と安定感は見せた。 初勝利は10度目の先発となった8月7日阪神戦(バンテリンドーム)、2勝目は13試合目の9月10日ヤクルト戦(神宮)。金丸はこの2試合は試合前から「何か勝てそうな気がしていた」と話す。 もちろん、全試合勝つために先発として登板間隔を空けて...

阪神藤川球児監督(45)は、よく天気に例えて話をする。みやざきフェニックス・リーグに向けて、宮崎入りした5日。ごく自然体で言った。 「きょうの天気のように、少し秋雨前線で、季節の変わり目なので、季節を楽しむというか、それがまず一番重要なのではないかな、と。アスリートは特に『雨でなかったらいいのに』とか『晴れたらいいのに』と思いますけど、それは日本の四季の良さ...

オリックス岩崎翔投手(35)は9月30日、横浜スタジアムに足を運んだ。21年までソフトバンクでともにプレーした森唯斗投手(33)の引退試合。西武甲斐野央投手(28)や元ソフトバンクの嘉弥真新也氏(35)ら、かつてのチームメートが集結。9回に登板し、通算500奪三振を達成する姿を見届けた。 「一緒に頑張ってきた仲間の1人でもあるし、その中でも先頭を切って頑張っ...

9月7日に2リーグ制後最速でリーグ優勝を決めた阪神。シーズンの大半を1軍で過ごすも出場が8試合にとどまった選手がいる。阪神栄枝裕貴捕手(27)だ。 シーズン中盤の7月。雨天で練習を室内練習場で行っている際、ウオーミングアップ中に先発投手と横並びになって歩きながらコミュニケーションをとっていた。雑談をしているだけかもしれないとも思いつつ、何を話していたか気にな...

9月27日、ソフトバンクがリーグ連覇を成し遂げた。2位に13・5ゲーム差をつけた昨季から一転、今季は他球団から厳しいマークを受けながら139試合目で決着をつけた。胴上げの舞台は敵地ベルーナドーム。孫オーナーも駆けつけてチーム一丸笑顔だったが、唇をかんだ選手もいる。 高卒5年目、笹川吉康外野手(23)はその1人だった。9月2日に1軍昇格も、同21日のオリックス...

チーム最年長右腕の背中を見せていた。藤川監督も視察していた9月24日の2軍広島戦(SGL)。先発した阪神西勇輝投手(34)は立ち上がりから不運に見舞われていた。初回から味方の落球などが重なり2失点。4回1死には、打ち取った遊ゴロを高卒2年目の遊撃山田が後逸した。申し訳なさそうに外野からの返球を受ける山田。西勇は自ら歩み寄り、声をかけに向かっていた。 「『もっ...

1軍初昇格から1軍同行を続ける辻大雅投手(21)は遠征先でも心強い味方がいる。遠征時に背負うリュックには「30」と入った赤いバッジが付いている。 自身のものではない。今夏、育成選手から支配下選手登録されたばかりで、背番号は98。バッジをよく見ると「ICHIOKA」の文字が描かれている。 「何かでもらって、自分が自分のバッジを着けるのもおかしいので、大雅にあげ...

22年以来2度目の最多安打、23年以来のフルイニング出場を狙う中日岡林勇希外野手(23)から最後まで目が離せない。 10日ヤクルト戦(神宮)ではプロ初の4打点をマークし、金丸の2勝目を援護した。その時、2カ月前のことがよみがえった。7月1日DeNA戦(横浜)で、金丸が初回に3点を失ったが立ち直り7回3失点も、打線が2点しか援護できなかった。試合後、記者に囲ま...

阪神の優勝マジックが順調に減っていた8月の中ごろ、球団関係者に「あのころの落合中日に似てきたなあ、と思ったことがありますよ」と言われた。 一瞬、堅実な戦いぶりのことかと想像したが、違った。理由は「『1軍の選手』が増えたと感じる。中継ぎ投手なんて、戦力になりそうな投手が2軍にもたくさんいる。選手層がどんどん広がっているように思える」だった。こちらはあまり意識し...

2年ぶり7度目のリーグ優勝を決めた阪神には「神ドラフト」と呼ばれる世代がいる。20年ドラフトで指名された、育成も含めて9選手。優勝の瞬間、実に7人が1軍登録され戦力となっていた。 嶌村聡球団本部長(57)はしみじみと回顧する。「くじに当たったのがとにかく大きくて、その後もスムーズに進んだ」。この年の1位は4球団競合の末、ドラフトの目玉だった佐藤輝明内野手(2...

阪神が7日、90年巨人の9月8日を更新し、2リーグ制後最速の優勝を決めた。 虎番1年目で入社2年目の私は、いきなり貴重な経験をさせてもらった。 そして、チームの中には「最速優勝」の直前に大きな経験をし、貢献した新人右腕がいる。育成ドラフト3位ルーキーの早川太貴投手(25)だ。 優勝マジック14で迎えた、8月27日DeNA戦。7月に1軍昇格と初登板を果たした男...

2日、ソフトバンク戦が行われるみずほペイペイドームでオリックス曽谷龍平投手(24)と山下舜平大投手(23)が1軍に合流した。曽谷はコンディション不良もあり、8月13日の楽天戦(京セラドーム大阪)を最後に再調整。山下は腰のコンディション不良で開幕前に離脱し、調整を続けてきた。 通常、遠征にはそのカードに先発する投手が同行し、次カードの先発陣は大阪・舞洲で残留練...

24日中日戦、広島のスタメンに1桁選手は1人もいなかった。1桁といっても成績ではなく、背番号。1桁背番号といえば、チームを代表する選手や大きな期待を背負う選手たちの番号とされる。対する中日は1番の岡林を始め、3選手が1桁背番号だった。広島は過渡期にいる。優勝争いから脱落し、クライマックス・シリーズ出場圏内の3位入りを目指す状況も影響している。首脳陣は3位浮上...

プロ野球記録を更新しても、試合後の阪神石井大智投手(28)は普段と変わらず淡々としていた。8月17日巨人戦(東京ドーム)。前人未到の40試合連続無失点を達成し、NPB記録を塗り替えた。記録について問われても「たまたまです」とキッパリ。淡々と答えた一方で、少し続けて話していたことがある。 「その『たまたま』を引き寄せる、いろんなことをしている自覚はあります。結...

「チャレンジ枠」という言葉を野球ファンはよく使っているようだ。レギュラーが不在で、流動的なポジションのこと。阪神では左翼になる。若手がしのぎを削るポジション争いが、首位快走の推進力になっていると感じる。 藤川監督が先日発した言葉が印象的だった。「本当に選手全員が切磋琢磨(せっさたくま)しながらやってくれている。どの選手の状態がいいのか、楽しく見ながら戦いたい...

「ハッピバースデートゥーユー」。8月9日バンテリンドームで行われた広島戦で、23歳の誕生日を迎えた中日高橋宏斗投手が2回の第1打席に入ると、右翼席からトランペットの演奏が始まった。 マウンド上の広島森下はグラブをはめずボールをこねこね。捕手坂倉は前へ出て、ホームベースを拭き拭きし演奏が終わるまで“時間稼ぎ”。高橋宏は森下にヘルメットを取り、一礼して再び打席に...

プロ唯一の高専卒の右腕が、球史に残る記録を作った。13日の広島-阪神戦(マツダスタジアム)。最終回のマウンドに上がった阪神石井大智投手(28)は、気迫のこもった投球で1安打無失点。西武平良海馬投手(25)に並ぶプロ野球記録の39試合連続無失点を達成した。「最後終わって監督と写真を撮らせていただいている時に、すごく実感が湧きました。記録的にはすごく、素直に喜び...

7月20日、レクザムボールパーク丸亀(香川)で「フレッシュオールスターゲーム2025」が行われた。阪神担当1年目で入社2年目の私も「フレッシュ」な気持ちで取材に臨んだ。 試合後、目に入ったのは“マッスルポーズ”を決めていた阪神の選手2人だった。それは、開幕前に支配下昇格をつかんだ育成ドラフト1位ルーキー工藤泰成投手(23)と、同2位の新人で支配下昇格を目指し...

一見、ぶっ飛んだ企画が多いオリックス。7月29日の西武戦からは毎年恒例のイベント「Bs夏の陣」が開催されている。選手は「#戦闘モード」、ファンは「#銭湯モード」をコンセプトとして、球場全体が熱気に包まれている。球場内にはフォトスポットや、温泉をイメージしたのれんがかけられる徹底ぶり。サウナハットやバスローブなどの銭湯グッズや、サウナドリンクなども販売されてい...

「マイナビオールスターゲーム2025」が終わった。阪神からは9選手が出場。佐藤輝が横浜スタジアムで特大の1発を放つなど、それぞれが輝いた。現地取材メンバーではなかったため試合はテレビで観戦したが、違和感が残った。 今年から採用したという選手がマイクとイヤホンをつけて会話するという試み。選手間同士の会話もあったが、中継ブースから選手たちとも会話する。フィールド...

27日巨人戦の試合時間は4時間を超えた。広島林晃汰内野手(24)が球場から出てきたのは、試合終了から約1時間30分後だった。「並々ならぬ覚悟で試合に入っていたんですけどね…。チームに迷惑をかけられない、と。サードを1試合守るとしんどいですね」。三塁でのフル出場は、23年5月25日中日戦以来、794日ぶりだった。打球は1度も飛んで来なかったが、表情からは疲労が...

パ・リーグ2位のソフトバンクは首位日本ハムを1ゲーム差で追う。今後は日本ハムとの直接対決はさることながら、キーとなりそうなのが楽天戦だ。 現在5勝9敗。パのカード別成績で唯一負け越している。次の楽天戦は8月1~3日の本拠地3連戦。11試合を残しており、みずほペイペイドームで6試合、楽天モバイルで3試合、弘前と秋田で1試合ずつ行う。 特に弘前と秋田の「みちのく...

この夏、「喫茶ドアラ」ができるという。8月6日からジェイアール名古屋タカシマヤで開催される「開店25周年記念 中日ドラゴンズ激闘の軌跡展」の会場にオープンする。 「喫茶ドアラ」は昔、昔のナゴヤ球場にもあった。人気マスコットのドアラが誕生したのは1994年。だが、その6年前の88年には当時の1軍本拠地に同名の喫茶店があった。この年に最寄り駅から内野入り口へつな...

7月。夏の訪れとともに阪神が“スパート”をかけた。1カ月前には想像できなかった勢いで優勝に向かって突っ走っている。 我々取材班は、いろいろな角度から強さの理由を探っている。前回優勝の23年と比べると、主力選手に大きな違いはない。一方で藤川球児監督(45)をはじめ、1軍首脳陣の顔ぶれは変わった。日々阪神の現場にいると、チームを支えるコーチの仕事にも目がいくよう...

試合で投げられること。その感謝を強く持っているだろう虎戦士がいる。阪神育成の伊藤稜投手(25)だ。3年目での初登板から約1年。今季は2軍戦で15試合に登板して、13試合で先発。計68回を投げ、防御率は3・44となっている。 「3年間投げられていなかったので。イニングをしっかり投げられているのは、いいかなと」 21年育成ドラフト1位で入団。4年目左腕が、初めて...

プロ13年目で初めての選出だった。中日松葉貴大投手(34)が、今年の球宴に監督選抜で初出場する。防御率2点台をキープし、DeNA東や阪神村上らと最多勝を争う活躍を認められた。7日の発表時には「プロ野球選手でいる間に1度は選ばれたいなと思っていたので、とてもうれしい。基本的にテレビで見るものだと思っていたので、自分が出る側になってワクワクというか早くその日を迎...

夏真っ盛りの11日の甲子園のグラウンド。控えめな笑顔の29歳が、タテジマの首脳陣、チームメートに歓迎されていた。「久しぶり」。そう声をかけた阪神野村克則バッテリーコーチ(51)の右手を、両手で握ったのは高橋遥人投手。「会えて良かったです」。少し恥ずかしそうに笑って返した。 昨年11月に「左尺骨短縮術後に対する骨内異物(プレート)除去術」を受け、リハビリを経て...