ニッカンプロ野球

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もはや元プロ選手ではなく医療者 元広島川島堅氏3

 元広島の川島堅さん(49)は、右肘に異変を感じた。「甲子園で最も美しい」と評されたフォームから、スリークオーターに変えて約2カ月がたった5月中旬、ウエスタン・リーグで登板中だった。  川島さん(以下、敬称略) 投げた瞬間に肘がブチッと音を立てました。何が起きているか自分でも分かりませんでした。1球投げるごとに電気が走るように痛みました。でも、当時は故障者...

コンタクトで達川さんに叱られて 元広島川島堅氏2

 元広島の川島堅さん(48)は、一部メディアで「甲子園史上最も美しいフォーム」と称された。東亜学園2年の秋にブロック予選で敗退した後、自ら試行錯誤を重ねてつかんだものだった。  川島さん(以下、敬称略) 2年と3年では投げ方がまったく違います。2年の時は力任せで投げていました。野茂さんほどではないけど、打者に背中を向けていました。 1987年夏の甲子園準...

甲子園史上最も美しいフォーム 元広島川島堅氏1

 元広島の川島堅さん(48)は、東京・小平市で整骨院を経営している。西武多摩湖線の一橋学園駅から徒歩3分ほどの場所に「一橋整骨院」がある。 経営する一橋整骨院の前に立つ川島さん  川島さん(以下、敬称略) 赤ちゃんからお年寄りまで、幅広い方が来てくれます。スポーツをしている中、高校生もいますよ。機会があればトレーニングの方法なども指導します。  東亜学...

選手生活の充実と球界貢献が目標 元阪神森忠仁氏2

 元阪神の森忠仁さん(56)は、球界を離れて証券会社に入った。最初の仕事は「場立ち」といって、証券取引所の立会場で手サインを使って売買注文を伝達する役目だった。 選手会の事務所に立つ森さん  森さん(以下、敬称略) 若い人は最初にそこをやっていました。今はシステム化されていて、なくなった仕事ですね。  引退した直後、証券の知識は持っていたのか。千葉商時...

選手会事務局長が選手だったころ 元阪神森忠仁氏1

 元阪神の森忠仁さん(56)は、日本プロ野球選手会で事務局長を務めている。2004年の球界再編騒動でけん引役となった前事務局長の松原徹氏が、15年9月にがんのため急逝した。この後を受けて重職を担っている。 笑顔で現役時代からを振り返る森さん  森さん(以下、敬称略) 大きな問題は松原事務局長の時代に解決していますから、選手会の新たな方向性を考えていく必要...

バー経営と豪華な還暦野球 元日本ハム保坂英二氏2

 元日本ハムの保坂英二さん(64)は、31歳で球界を去った。いかに生活するか考えていた時、アドバイスを送ってくれた人がいた。 保坂さんの店には野球やゴルフを練習できるスペースが設けられている  保坂さん(以下、敬称略) 証券会社に勤める方でした。野球界とはまったく関係がないのですが、ずっとお世話になっていました。その方に言われたんです。「まず、人に頭を下...

前田敦子も指導したミニラ 元日本ハム保坂英二氏1

 元日本ハムの保坂英二さん(64)が営むバー「ラ・メール」は、茗荷谷駅から徒歩10分ほどのところにある。 「ラ・メール」のカウンターに立つ保坂さん  カウンター後方に多数の酒が並び、大画面のテレビで野球観戦もカラオケもできる。このような店は多々あるだろう。だが、店内に打撃練習やゴルフ練習ができるネットが設備されている…こんな店は少ないのではないだろうか。...

広告マンで野球界に貢献目指す 元楽天寺田龍平氏2

 元楽天投手の寺田龍平氏(28)が、入団当時を振り返った。北海道で随一の進学校、札幌南からの高校生ドラフト1巡目とあり、話題になっていた。 現役時代や引退後について語る寺田龍平さん  寺田さん(以下、敬称略) 地元テレビ局に出演したのが、ちょうどセンター試験の頃でした。いきなり問題を解かされました。しかも数学ですよ。ボクは文系だったので、数学なんて勉強し...

超進学校からドラフト1巡目 元楽天寺田龍平氏1

 元楽天投手の寺田龍平さん(28)は、博報堂DYデジタルに勤めている。名刺に書かれた部署は「パフォーマンス業務推進ディビジョン 戦略ユニット第二グループ アカウントプラナー」とある。  寺田さん(以下、敬称略) 簡単に言うと、クライアントがデジタル広告を出す際の戦略立案や実行・分析をしています。どうやって企業をブランディングし、ユーザーを引き込んでいくか。...

夢は高校野球の監督です!元ヤクルト増渕竜義氏2

 増渕竜義さん(30)の運命を変える試合になってしまった。 2012年10月7日、広島戦に登板したヤクルト増渕  ヤクルトに在籍していた2012年10月7日。本拠地の神宮球場での広島24回戦。0-0のまま迎えた9回表、増渕さんはマウンドに上がった。  先頭の赤松外野手に中前打を許した。続く倉捕手の送りバントが、投手前に転がってきた。増渕さんは打球を処理し...

自由なエンジョイ野球塾 元ヤクルト増渕竜義氏1

 増渕竜義さん(30)が、バッターボックスに入った。埼玉・上尾市の「上尾ベースボールアカデミー」で、小学生を指導している時だった。  子どもたちが打撃練習をする中、バットを持ってマシンに向かった。技術指導が始まるのかと思ったら、少しばかり違った。  増渕さんは「まずはラミレス」と言って、DeNAラミレス監督のフォームをマネした。そっくりだったので私は吹き出し...

郷土料理の修業と野球指導 元ヤクルト加藤誉昭氏2

 ヤクルトを戦力外になった加藤誉昭さん(たかあき=55)は、平和島競艇場に通い始めた。定職は探さなかった。  加藤さん(以下、敬称略) 中山大三郎さんって作曲家を知っていますか? 同じ都城出身で、プロ入りしてから応援していただいていました。食事に誘ってもらい、叱咤(しった)激励してくれた。中山さんのご縁で、選手時代に「競艇界の百恵ちゃん」を見に行ったことが...

競艇通いからきばいやんせ 元ヤクルト加藤誉昭氏1

 元ヤクルト外野手の加藤誉昭さん(たかあき=54)は、港区南青山の「霧島地鶏きばいやんせ」で働いている。  店名は、鹿児島弁で「頑張ろってください」という意味になる。NHK大河ドラマの「西郷どん」でも出てくる言葉である。  加藤さん(以下、敬称略) 将来的に郷土料理の店を出したいと考えており、修業を兼ねて働いています。立場はアルバイトですね。炭を使って、地...

教師経験が野球につながる 元日本ハム松浦宏明氏2

 「ゼロ戦のマツ」こと、元日本ハム投手の松浦宏明さん(51)は、第2の人生をゼロから考えた。球界を離れて1年間、じっくりと「やりたいこと」を検討した。 上海スーパーガールズの指導者として、昨年香港で行われた国際大会に参加した松浦氏(左)  松浦さん(以下、敬称略) 職業の本などを見ていて医療関係に目が止まりました。私も現役時代に肘、肩を痛めたとき、治療し...

「ゼロ戦のマツ」が算数を 元日本ハム松浦宏明氏1

 松浦宏明さん(51)とは、東京・中野にある「東京コミュニティスクール」で会った。松浦さんは昨年9月から、ここで教員を務めている。 東京コミュニティスクールで生徒と触れ合う松浦氏(中央)  日本ハムで活躍し、1988年(昭63)には15勝を挙げて最多勝も獲得した。チームメートの西崎幸広投手、西武渡辺久信投手とタイトルを分け合った。  投手としては珍しい背...

もつ鍋と地鶏が自慢「時乃屋」 元巨人中村善之さん

 元巨人投手の中村善之さん(43)が、額に飾った達筆の文字を見せてくれた。  「時乃屋」と書かれている。「ときのや」と読む。  店の名前である。横浜市都筑区北山田に「九州うまかもん 時乃屋」をオープンし、3月18日で1周年を迎えた。  達筆な文字は、前巨人監督の原辰徳氏が書いてくれた。 店内に掲げた数々のサインの前に立つ中村さん。中央の額に入った2つが、...

コツコツが勝つコツ 元ヤクルト宇佐美康広さん2

 ヤクルトを退団した宇佐美康広さん(42)に、テレビ出演の話が舞い込んできた。引退直後に入社した広告代理店を辞め、定職に就かず飲み歩いていた2002年だった。  フジテレビ系列の人気番組「クイズ ミリオネア」だった。 店内に並べられたグラブの前に立つ宇佐美さん  最初の早押し並べかえクイズで波に乗った。  (問題)次のデュエット曲を発売された古い順から...

道具説く「おっちゃん」元ヤクルト宇佐美康広さん1

 元ヤクルトの宇佐美康広さん(42)は、グラブを売るばかりが仕事だと思っていない。2016年12月14日、埼玉県戸田市にある「ロクハチ野球工房」をオープンさせた。元プロ野球選手の野球用品店とあり、グラブ選びの相談は多い。 ロクハチ野球工房の前に立つ元ヤクルトの宇佐美康広さん  宇佐美さん(以下、敬称略) お客さんが買うのを止めることもありますよ。「まだ、...

サイト運営に取材、映画出演も 元横浜中根仁さん

 近鉄、横浜(現DeNA)で活躍した中根仁さん(51)は、この冬に公開された映画「レフトフライ」に出演した。  秋原北胤監督が東大野球部出身で、東京6大学リーグで戦った仲間に声がかかった。同学年で法大出身の中根さん、桐蔭学園-慶大で投手として活躍した志村亮さん。そして年下になるが早大出身で日本ハムやDeNA投手だった江尻慎太郎さんも、スクリーンに姿を見せる。...

清原氏らのトレーナーから転身 元西武山尾伸一さん

 西武の外野手だった山尾伸一さん(49)は、いつも思う。「自分は新庄剛志になれたんじゃないか」と。  ただし、条件は付く。  もし、高校時代に今の自分のようなトレーナーに出会っていれば…である。 高校生を指導する山尾氏  山尾さん(以下、敬称略) 体の使い方を教わって、トレーニングしていたらね。新庄君のように体をうまく使える選手になれたかもしれない。体の...

あまちゃん育成 元巨人の玉川大・樋澤良信監督

 小田急線「玉川学園前」で降りると、駅前にはキャンパスが広がっている。  玉川大学。私には、薬師丸ひろ子の出身校として記憶に刻まれている。硬式野球部は全国的に決して有名ではない。だが、2014年から樋澤良信監督(67)が指揮を執り、成長株として注目されている。  樋澤監督は元巨人選手で引退後はスコアラーや寮長を歴任した。岩手県久慈市の出身で、兄の正明さんは同...

格闘家も経験した古木克明さん、人生の波に乗る

 古木克明さん(37)の優しい声が響き渡った。  「ほらっ、危ないでしょう。ふざけないで、ちゃんとやりなさい」  小学生に野球を教えている神奈川・藤沢市のキッズスクール「PAL-BAL CLASSIC」での一コマだった。  叱られた子供は一瞬だけうつむいたが、古木さんに肩を抱かれて、すぐ笑顔に戻った。「古木さん」「古木さん」と言って、まとわりついていた。 ...

宇治茶をメジャーに 元大洋、ロッテの堀井恒雄さん

 世界緑茶コンテストというものがある。2017年に金賞を獲得した茶の中に「花鳥風月・又兵衛」がある。出品者は株式会社又兵衛。宇治茶の専門店で、14年から横浜市保土ケ谷区天王町に店を構えている。  代表取締役は堀井恒雄さん(59)。大洋、ロッテで投手として活躍し、コーチや球団フロントとして長くプロ野球界に携わった。ベイスターズが日本一に輝いた1998年は投手コ...

キャバクラ黒服の経験も糧に 元巨人の小野仁さん

 小野仁さん(41)は駆け足でロビーに現れた。まだ、待ち合わせ時間より5分ほど前だった。「お待たせしてすみません」。明るい声でそう言うと、社内を案内してくれた。  小野さんは昨年10月から、白寿生科学研究所に勤めている。ヘルスケア機器や健康食品の開発や製造販売を手掛ける会社だが、アスリートの支援やセカンドキャリアにも熱心に取り組んでいる。  彼は総務部人材開...

会計士あきらめることは妻が許さず/奥村武博氏2

 野球界を飛び出した奥村武博さん(38)は、飲食業の世界に飛び込んだ。現役時代から漠然と描いていた引退後だった。知人がバーの開店準備をしている間、修業がてら別の店を手伝った。同時に調理師の資格を取ろうと学校に通い始めた。  奥村さん(以下、敬称略) 学校に通ったのは、私の気質なんですかね。やるなら、きちっと勉強しようと考えました。将来、自分で店を出すときも...

元阪神投手から公認会計士に/奥村武博氏1

 どんな名選手にも引退の時はやってきます。指導者の道を歩む者もいれば、解説者などの道を進む者もいます。スタッフとして別の形で競技に携わる者もいます。そして、まるで別の世界へ飛び込んでいく人々もいます。輝かしい選手生活ばかりが人生の成功ではありません。引退後に各界で輝いている元アスリートの今を追いかけます。 元阪神投手で公認会計士になった奥村さん  奥村武...