日刊スポーツ

【女子駅伝】兵庫2区田中希実が19人抜き区間賞「自分のところでトップに立ちたいと」

第2中継所の烏丸鞍馬口で兵庫3区藤田莉沙(手前)にたすきをつなぐ2区の田中希実(撮影・上山淳一)

<陸上:第42回全国都道府県対抗女子駅伝(皇后杯)>◇14日◇たけびしスタジアム京都発着(9区間42.195キロ)◇47チーム

昨夏の世界選手権5000メートルで8位入賞した田中希実(24=ニューバランス)が、注目の2区(4キロ)で19人抜きを演じ、首位でタスキをつないだ。

過去出場7回中5回走った1区を外れ、初めて2区から出走。20位でタスキを受けると、大きなストライドで追い上げ、27回大会で08年北京五輪5000メートル代表の小林祐梨子が記録した区間記録(12分7秒)に肉薄する12分11秒(速報値)を記録した。

終盤下り坂となるコースに対応し、浜本憲秀監督から期待された「田中=1区じゃない」を体現した田中はレース後、「1区の子も頑張ってくれた。その力を受け、自分のところでトップに立ちたいと走りました」と振り返った。

区間新にはわずかに届かなかったが、圧倒的な走りで区間賞を受賞。

「中学以来、この大会で区間賞をとることができなかったが、気持ち的に(パリへ)大きな弾みになった」とうなずいた。

田中は昨年8月の世界選手権ブダペスト大会5000メートル予選で日本記録を更新。同9月には世界最高峰シリーズのダイヤモンドリーグで自らの記録(14分37秒98)を超える14分29秒18をマークした。

世界を舞台に飛躍を続けるが、レース前日の13日には「グローバルで活躍するアスリートになっても、地元を拠点にやっていきたいというところを象徴するようなレース」と今大会の位置づけを明かしていた。

兵庫を背負って走る-。

地元への思いを大切に、岡山のドルーリー朱瑛里(しぇり、津山高1年)や愛知の山本有真(23=積水化学)らが名を連ねた注目区間で貫禄の走りを披露した。

2区を走る兵庫・田中希実(撮影・上田博志)
全国都道府県対抗女子駅伝で快走する兵庫2区の田中(撮影・上田博志)
全国都道府県対抗女子駅伝で快走する兵庫2区の田中(撮影・上田博志)
全国都道府県対抗女子駅伝で快走する兵庫2区の田中(撮影・上田博志)
力走する2区の田中希実(撮影・上山淳一)
全国都道府県対抗女子駅伝で兵庫2区の田中(右)は3区の藤田にたすきをつなぐ(撮影・上山淳一)
表彰式を終え、笑顔で言葉を交わす田中(中央)(撮影・藤尾明華)
区間賞の表彰で兵庫の田中希実(右)は石川の五島莉乃(左)と笑顔で話す(撮影・上山淳一)
区間賞の表彰を受ける兵庫の田中。左端は石川の五島(撮影・上山淳一)
庫3区藤田莉沙(手前右)にたすきをつなぐ2区の田中希実((撮影・上山淳一)
庫3区藤田莉沙(手前)にたすきをつなぐ2区の田中希実((撮影・上山淳一)
庫3区藤田莉沙(手前)にたすきをつなぐ2区の田中希実((撮影・上山淳一)
区間賞を獲得した左から石川1区の五島、兵庫2区の田中、静岡3区の遠藤(撮影・上田博志)
2区で19人抜きをしてトップに立つ兵庫・田中(代表撮影)

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【女子駅伝】田中希実、驚異の19人抜きに福士加代子氏「リモートバイクも着いていくのやっと」

福士加代子さん(2023年1月22日撮影)

<陸上:第42回全国都道府県対抗女子駅伝(皇后杯)>◇14日◇たけびしスタジアム京都発着(9区間42・195キロ)◇47チーム

昨夏の世界選手権5000メートル8位入賞の田中希実(24=兵庫)が2区(4・0キロ)で驚異の19人抜きの力走を見せた。

20位でタスキを受けると、3キロ手前で首位へ。12分11秒(速報値)で2区区間賞と好走をみせた。

NHKのテレビ中継で解説を務めた福士加代子氏(41)は「トップ? すごいね~!」と感嘆。あっという間で先頭に立った脚力を「リモートバイクでもついていくのがやっと」とたたえた。

同じくNHKで解説を務めた、同区間の区間記録保持者の小林祐梨子氏(35)も「19人抜き、素晴らしいですね!」と絶賛した。

全国都道府県対抗女子駅伝で快走する兵庫2区の田中(撮影・上田博志)
全国都道府県対抗女子駅伝で快走する兵庫2区の田中(撮影・上田博志)
全国都道府県対抗女子駅伝で快走する兵庫2区の田中(撮影・上田博志)
力走する2区の田中希実(撮影・上山淳一)
全国都道府県対抗女子駅伝で兵庫2区の田中(右)は3区の藤田にたすきをつなぐ(撮影・上山淳一)
表彰式を終え、笑顔で言葉を交わす田中(中央)(撮影・藤尾明華)
区間賞の表彰で兵庫の田中希実(右)は石川の五島莉乃(左)と笑顔で話す(撮影・上山淳一)
区間賞の表彰を受ける兵庫の田中。左端は石川の五島(撮影・上山淳一)
庫3区藤田莉沙(手前右)にたすきをつなぐ2区の田中希実((撮影・上山淳一)
庫3区藤田莉沙(手前)にたすきをつなぐ2区の田中希実((撮影・上山淳一)
庫3区藤田莉沙(手前)にたすきをつなぐ2区の田中希実((撮影・上山淳一)
区間賞を獲得した左から石川1区の五島、兵庫2区の田中、静岡3区の遠藤(撮影・上田博志)
2区で19人抜きをしてトップに立つ兵庫・田中(代表撮影)

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【女子駅伝】岡山2区ドルーリー朱瑛里が区間5位 「憧れ」田中希実と“初対決”

岡山3区黒田六花(手前)にたすきをつなぐ2区のドルーリー朱瑛里(撮影・上山淳一)

<陸上:第42回全国都道府県対抗女子駅伝(皇后杯)>◇14日◇たけびしスタジアム京都発着(9区間42・195キロ)◇47チーム

昨年の同大会で17人抜きを演じた岡山のドルーリー朱瑛里(しぇり、津山高1年)は、2区(4キロ)を12分47秒(速報値)の区間5位と力走した。

昨年は3区(3キロ)を走り、9分2秒の区間新記録を樹立。17人のごぼう抜きは、同区歴代1位の快挙だった。

今年は高校生となり、昨年走った3区へタスキをつなぐ2区を任された。

3区を走るのは、昨夏の全国中学校体育大会女子1500メートル女王の黒田六花(京山中3年)。2度目の出場だが「新鮮な気持ちでレースに臨めるかな」と期待に胸を膨らませていた。

加えて、ドルーリーにとっては「憧れの存在」との“初対決”となった。兵庫の2区は、昨年の世界選手権女子5000メートルで8位入賞した田中希実(24=ニューバランス)が出走。レースを前に「ずっと目標にしてきた選手と初めて走るっていうことで今から楽しみ。緊張もすると思うけど、楽しんで走りたい」と目を輝かせていた16歳は、今年も力強い走りをみせた。

2区を走る岡山・ドルーリー朱瑛里(撮影・上田博志)
2区を走る岡山・ドルーリー朱瑛里(撮影・上田博志)
2区を走る岡山・ドルーリー朱瑛里(撮影・上田博志)
2区を走る岡山・ドルーリー朱瑛里(撮影・上田博志)
岡山3区黒田六花(手前)にたすきをつなぐ2区のドルーリー朱瑛里(撮影・上山淳一)
力走する岡山2区のドルーリー朱瑛里(撮影・上山淳一)
力走する岡山2区のドルーリー朱瑛里((撮影・上山淳一)
力走する岡山2区のドルーリー朱瑛里((撮影・上山淳一)
力走する岡山2区のドルーリー朱瑛里((撮影・上山淳一)
岡山3区黒田六花(手前)にたすきをつなぐ2区のドルーリー朱瑛里((撮影・上山淳一)
岡山3区黒田六花(手前)にたすきをつなぐ2区のドルーリー朱瑛里((撮影・上山淳一)
第2中継所の烏丸鞍馬口で兵庫3区藤田莉沙(手前)にたすきをつなぐ2区の田中希実(撮影・上山淳一)
全国都道府県対抗女子駅伝で快走する兵庫2区の田中(撮影・上田博志)
2区を走る兵庫・田中希実(撮影・上田博志)
全国都道府県対抗女子駅伝で快走する兵庫2区の田中(撮影・上田博志)
力走する2区の田中希実(撮影・上山淳一)
全国都道府県対抗女子駅伝で兵庫2区の田中(右)は3区の藤田にたすきをつなぐ(撮影・上山淳一)
表彰式を終え、笑顔で言葉を交わす田中(中央)(撮影・藤尾明華)
区間賞の表彰で兵庫の田中希実(右)は石川の五島莉乃(左)と笑顔で話す(撮影・上山淳一)
区間賞の表彰を受ける兵庫の田中希実。左端は石川の五島莉乃(撮影・上山淳一)
庫3区藤田莉沙(手前)にたすきをつなぐ2区の田中希実((撮影・上山淳一)
庫3区藤田莉沙(手前)にたすきをつなぐ2区の田中希実((撮影・上山淳一)
区間賞を獲得した左から石川1区の五島、兵庫2区の田中、静岡3区の遠藤(撮影・上田博志)
2区で19人抜きをしてトップに立つ兵庫・田中(代表撮影)

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【女子駅伝】石川1区の五島莉乃が独走区間賞に「石川に元気を届ける走り」ファン感動

一斉にスタートする石川の五島莉乃(中央)ら1区の選手たち(撮影・藤尾明華)

<陸上:第42回全国都道府県対抗女子駅伝(皇后杯)>◇14日◇たけびしスタジアム京都発着(9区間42・195キロ)◇47チーム

昨夏の世界選手権1万メートル代表の五島莉乃(26=石川)が1区(6・0キロ)で区間賞を獲得した。18分49秒(速報値)で2位に35秒差をつけた。

たけびしスタジアムから一般道へ出ると、一気に先頭へ出た。最初の1キロを3分11秒で入り、中間点でも従来の区間記録を上回るペースで通過。その後もぐんぐん後続を突き放した。

五島は石川・金沢出身。故郷は今月1日に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた。そんな中、1区からチームを勢いづける力走を披露。X(旧ツイッター)では五島の走りが話題を集め、「石川県の力になってほしい!」「いつも以上に気持ちが入ってそう」「カッコいい! 石川に元気を届ける走り」などの投稿が相次いだ。

一斉にスタートする石川の五島莉乃(中央)ら1区の選手たち(撮影・藤尾明華)
区間賞の表彰で兵庫の田中希実(右)は石川の五島莉乃(左)と笑顔で話す(撮影・上山淳一)
区間賞を獲得した左から石川1区の五島、兵庫2区の田中、静岡3区の遠藤(撮影・上田博志)
区間賞の表彰を受ける兵庫の田中希実。左端は石川の五島莉乃(撮影・上山淳一)

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田中希実は初の2区にエントリー 浜本監督は「田中=1区じゃない」全国都道府県対抗女子駅伝

大会を前に、記念撮影する兵庫県チームの田中希実(後列左から2人目)ら(撮影・上山淳一)

全国都道府県対抗女子駅伝(14日、たけびしスタジアム京都発着)前日の13日、京都市内で監督会議と開会式が行われた。

昨年の世界選手権女子5000メートルで8位入賞した兵庫の田中希実(ニューバランス)は、2区(4キロ)でエントリーした。

8度目の出場にして、初めての2区。これまでは1区を任されることが多かったが、浜本憲秀監督は「今年はオリンピックイヤーでもあるので、視点をそらしてあげながら。なかなか駅伝を走る機会はないので、彼女にとってもチャレンジができる」と采配の意図を説明。

田中本人と話し合い「『田中=1区じゃない』っていう話をしてきた。最後上って終わるよりは、下りながら気持ちよくタスキゲームをするのも面白いよね」と掛け合い、下ってフィニッシュする2区を選択。力強い走りで、序盤上位で進める展開を期待した。

開会式に参加した田中は、今大会について「グローバルで活躍するアスリートになっても、地元を拠点にやっていきたい。そういうというところを象徴するようなレースというイメージがある」とし、兵庫を背負って走り抜くことを誓った。

大会を前に、記念撮影する兵庫県チームの田中希実(中央)ら(撮影・上山淳一)
大会を前に、記念撮影する兵庫県チームの田中希実(後列左から4人目)ら(撮影・上山淳一)
開会式に臨む兵庫県チームの田中希実(中央)(撮影・上山淳一)
開会式に臨む選手たち(撮影・上山淳一)

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ドルーリー朱瑛里、田中希実と初対決「楽しみ」2区にエントリー 全国都道府県対抗女子駅伝

開会式に臨む選手たち(撮影・上山淳一)

全国都道府県対抗女子駅伝(14日、たけびしスタジアム京都発着)前日の13日、京都市内で監督会議と開会式が行われた。

昨年、驚異の17人抜きで注目を集めた、岡山のドルーリー朱瑛里(しぇり、津山高1年)は2区(4キロ)にエントリー。

高校生になり、実業団選手も走る区間でのレースとなる。

兵庫代表の田中希実(ニューバランス)も同じ2区を出走予定で「ずっと目標にしてきた選手と初めて走るって言うことで今から楽しみ。緊張もすると思うけど、楽しんで走りたい」とにっこり。

昨年の3区(3キロ)から距離は長くなるが「高校生になって、長い距離やスピードもまた一段とついた」と胸を張り、憧れの選手との対決を待ちわびた。

今年は、実業団選手からは、世界選手権出場経験のある谷本観月ら。若手では、昨夏の全国中学校体育大会女子1500メートル女王の黒田六花(京山中3年)が参戦する。

そんな今年のチームについて、ドルーリーは「1人1人の意識が高くてレベルが高いチーム。いい雰囲気でまとまっている」とし「1つでも順位を上げて貢献できるように頑張りたい」と誓った。

開会式に臨む兵庫県チームの田中希実(中央)(撮影・上山淳一)
開会式で能登半島地震の被災者に対して黙とうする選手ら(撮影・上山淳一)
開会式に臨む選手たち(撮影・上山淳一)
大会を前に、記念撮影する兵庫県チームの田中希実(後列左から2人目)ら(撮影・上山淳一)
大会を前に、記念撮影する兵庫県チームの田中希実(後列左から4人目)ら(撮影・上山淳一)
大会を前に、記念撮影する兵庫県チームの田中希実(中央)ら(撮影・上山淳一)
開会式で前回優勝の大阪府代表チームにレプリカトロフィーを渡す日本陸上競技連盟副会長の有森裕子氏(撮影・上山淳一)

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【陸上】青学大・黒田朝日、順大・吉岡大翔、城西大・斎藤将也らが世界大学クロカン日本代表選出

黒田朝日(2024年1月11日撮影)

日本学生陸上競技連合は12日、2月18日開催の世界大学クロスカントリー選手権大会(オマーン)の日本代表選手を発表した。

男子は今年の箱根駅伝2区区間賞の青学大・黒田朝日(2年)や5000メートルの日本人高校記録保持者の順大・吉岡大翔(1年)ら4人が代表入り。女子は昨年11月の1万メートル記録挑戦競技会を制した立教大・小川陽香(1年)らが選出された。

◆男子代表

吉岡大翔(順大1年)

斎藤将也(城西大2年)

佐藤榛紀(東京国際大3年)

黒田朝日(青学大2年)

◆女子代表

宮原なな佳(福岡大2年)

小川陽香(立教大1年)

永長里緒(大阪学院大3年)

村松灯(立命館大3年)

吉岡大翔(2024年1月2日撮影)
斎藤将也(2024年1月2日撮影)

【陸上】広中璃梨佳、川内優輝ら香川丸亀国際ハーフエントリー 篠原倖太朗や吉居駿恭ら箱根勢も

広中璃梨佳(2023年12月撮影)

香川丸亀国際ハーフマラソン(2月4日開催)大会組織委員会は12日、エントリー選手を発表した。

男子の招待選手では、ハーフマラソン日本記録保持者の小椋祐介(ヤクルト)や昨年10月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)男子4位の川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)らが名を連ねた。

女子の招待選手では、21年東京五輪マラソン代表の鈴木亜由子や同1万メートル7位入賞の広中璃梨佳(ともにJP日本郵政グループ)らがエントリーした。

一般選手では、男子で昨年12月の福岡国際マラソン4位の細谷恭平(黒崎播磨)や設楽啓太(西鉄)らが登録された。

学生長距離からは、昨年の同大会で日本学生記録を打ち立てた駒大・篠原倖太朗(3年)や今年の箱根駅伝で2区区間賞の青学大・黒田朝日(2年)が招待選手としてエントリー。ハーフマラソン日本人学生歴代2位の中央学院大・吉田礼志(3年)や箱根駅伝7区区間賞の中大・吉居駿恭(2年)らも名を連ねた。5000メートルの日本人高校記録保持者の順大・吉岡大翔(1年)は初のハーフマラソンとなる。

※同日午後6時以降に大会主催者から相沢晃(旭化成)、大六野秀畝(旭化成)の出場がキャンセルとなったと発表されたため、見出しと記事内容を訂正いたしました。

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【箱根駅伝】青学大・原監督「生中継…青学軍団でインパクトを」 太田蒼生ら別大マラソン挑戦へ

箱根駅伝優勝報告会でトロフィーを掲げる志貴主将(左)とガッツポーズの原晋監督(撮影・藤塚大輔)

今月の第100回箱根駅伝を制した青山学院大(青学大)の原晋監督(56)が、2月4日の別府大分毎日マラソン(別大マラソン)に出場予定の太田蒼生(3年)、倉本玄太(4年)、白石光星(3年)へ「全国生中継ですから、青学軍団が走っていくことで多くの方にインパクトを与えたい。箱根駅伝だけでなく、『箱根から世界へ』という意味で、マラソンランナー育成にもつながる」と期待を寄せた。

全10区間による箱根駅伝は1区間あたりの距離が20キロを超えるため、青学大では30キロを走り切るための練習計画を立てているという。指揮官は「30キロのトレーニングを箱根駅伝までして、残りの1カ月ちょっとで(残りの)12・195キロをどう作っていくか」と思案。箱根駅伝への練習で培った脚力が土台にあるため、本番まで42・195キロを走るメニューは組まないと明かした。

1年前にはその手法が結果にも表れた。当時4年生だった横田俊吾(現JR東日本)は、同マラソンで2時間7分47秒の日本学生新記録を樹立。「横田も40キロを1発も走らずに2時間7分台で走った。夏合宿以降はマラソンをやることも念頭に置いて組み立てている。私たちとしては(例年)第1週の日曜の別大(マラソン)で箱根が終わりと捉えている」と指導方針に言及した。

箱根駅伝3区(21・4キロ)で日本人初の60分切りとなる59分47秒をマークした太田については、3月の東京マラソンを初挑戦の舞台とする可能性もあったが「今のところは考えていない。ペース設定が速すぎる」とし、まずは大分での出走を目指す意向を明言。「最近はタイムを狙う選手が多いが、陸上競技の原点は順位争い。大会で優勝することが本来の喜びです」と語り、選手たちへは順位を重視するように促す方針であることも打ち明けた。

箱根駅伝優勝報告会で笑顔をみせる原晋監督(撮影・藤塚大輔)
箱根駅伝優勝報告会に出席した志貴主将(撮影・藤塚大輔)
箱根駅伝優勝報告会に出席した青学大のメンバー(撮影・藤塚大輔)
箱根駅伝優勝報告会に出席した田中(撮影・藤塚大輔)
箱根駅伝優勝報告会に出席した黒田(撮影・藤塚大輔)
箱根駅伝優勝報告会に出席した佐藤(撮影・藤塚大輔)

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【箱根駅伝】青学大・原監督「来年以降は10時間30分台へ」 約500人優勝報告会で新目標宣言

箱根駅伝優勝報告会で笑顔をみせる原晋監督(撮影・藤塚大輔)

今月の第100回箱根駅伝で2年ぶり7度目の総合優勝を飾った青山学院大(青学大)が、来年以降の目標に大会記録の大幅更新を掲げた。

大会新となる10時間41分25秒で制した圧勝劇から1週間が過ぎた11日、東京・渋谷区の同大青山キャンパスで優勝報告会を開催。気温10度を下回る寒空のもと、約500人の観衆が詰めかける中、原晋監督(56)は「来年以降は10時間30分台の高速レースへ持ち込んでいきたい」と見据えた。

青学大は今季の出雲駅伝5位、全日本大学駅伝2位ながらも、得意の箱根で勝負強さを発揮。往路では2区から順に黒田朝日(2年)、太田蒼生(3年)、佐藤一世(4年)が3区間連続で区間賞を獲得し、5区終了時点で2位の駒大に2分38秒差をつけた。復路でも初出走5人がぐんぐん差を広げ、“駒大1強”の前評判を覆した。

「負けてたまるか大作戦」を発令し、直近10年で7度目のVへ導いた指揮官は「原監督、持ってると思いませんか?」と笑顔。2012年の第88回大会で東洋大が10時間51分36秒で制したことに触れた上で「それから12年後の今日、約10分、10人で割ると1人1分、距離にすると約400メートルの進化をした。それだけ長距離のレベルを上げることができた」と胸を張った。ただ、「これで満足はしていない」と切り出し、前人未到の10時間30分台を目指すと明言した。

新たな目標を打ち出すことができるのは、現チームの4年生が築いてきた土台があるからこそ。原監督は「さまざまな逆境からはい上がってきた4年間だったと思う」とねぎらった。

最上級生として、4区で激走をみせた佐藤は「この4年で勝ちも負けも経験し、いろいろなことがあった4年間でしたが、青学で良かったと心から思います」と回顧。16人のチームエントリーを外れながら、最後まで献身的にサポートした志貴勇斗主将(4年)も「これからも青山学院大学は先頭に立ち、1位でゴールするチームだと思う。これからも応援のほどよろしくお願いします」と力強く訴えた。

来季は今大会の出走者7人が残る。フレッシュグリーンの誇りを胸に、新チームも強さを追い求めていく。

箱根駅伝優勝報告会でトロフィーを掲げる志貴主将(左)とガッツポーズの原晋監督(撮影・藤塚大輔)
箱根駅伝優勝報告会に出席した青学大のメンバー(撮影・藤塚大輔)
箱根駅伝優勝報告会に出席した志貴主将(撮影・藤塚大輔)
箱根駅伝優勝報告会に出席した田中(撮影・藤塚大輔)
箱根駅伝優勝報告会に出席した黒田(撮影・藤塚大輔)
箱根駅伝優勝報告会に出席した佐藤(撮影・藤塚大輔)

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【陸上】別大毎日マラソン 青学大優勝の立役者3区太田蒼生エントリー

青学大・太田蒼生(24年1月2日撮影)

別府大分毎日マラソン(2月4日)の主催者は10日、2時間7分台の記録を持つ下田裕太(GMOインターネットグループ)ら国内外の招待選手9人を発表した。

今年の箱根駅伝で2年ぶり7度目の総合優勝を果たした青学大からは3区区間賞の太田蒼生や、9区区間賞の倉本玄太が一般参加でエントリーした。日本陸連ロードランニングコミッションリーダーの瀬古利彦氏はオンライン会見に出席し、箱根駅伝で2位から首位に押し上げた太田に日本学生記録更新を期待。「その勢いでミラクル学生新記録を出してほしい」と話した。

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能登半島地震被災を理由にしたエントリー変更無制限に 都道府県対抗女子駅伝

スタートする1区のランナー(2023年1月15日撮影)

14日に京都市で行われる第42回全国都道府県対抗女子駅伝の大会事務局は9日、能登半島地震を受け、被災を理由としたエントリー変更に人数制限を設けないと発表した。石川県以外や帰省先などで被害を受けた選手も含む。通常は事故、病気などの理由がある場合に限り2人まで。

大会はたけびしスタジアム京都発着、42・195キロのコースで9人がたすきをつなぐ。石川県は中高生7人を含む13選手をエントリーした。

大会当日はたけびしスタジアム京都やその周辺で義援金の募金活動を実施する予定。(共同)

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ドルーリー朱瑛里、2年連続で都道府県対抗女子駅伝エントリー 久保建英いとこ凜も 14日号砲

ドルーリー朱瑛里(2023年8月27日撮影)

全国都道府県対抗女子駅伝(14日、たけびしスタジアム京都発着)のオンライン記者会見が9日、行われた。

昨年3区で17人抜きを演じ、昨夏の高校総体女子1500メートル3位に輝いたドルーリー朱瑛里(しぇり、津山高1年)は、昨年に続いて岡山からエントリー。チームには、昨夏の全国中学校体育大会女子1500メートル女王の黒田六花(京山中3年)も名を連ねる。今年は憧れられる立場となり、期待の中学生らとともにゴールを目指す。

同い年で高校総体女子800メートルを制した久保凜(東大阪大敬愛)は、地元・和歌山から大阪に移って出場を予定。サッカー日本代表MF久保建英のいとことしても注目される高校生が、前回優勝のチームに加入し上位を狙う。

社会人にも注目の面々がそろう。

昨夏の世界選手権女子5000メートル8位入賞の田中希実(24=ニューバランス)や、同選手権女子1万メートル7位の広中璃梨佳(23=JP日本郵政G)。

また、昨年1月のヒューストンマラソン(米国)で日本女子歴代2位の2時間19分24秒を記録した新谷仁美(積水化学)、MGCで1位となりパリ五輪内定を決めた鈴木優花(第一生命G)らマラソン選手もエントリーしている。

久保凜(2023年8月24日撮影)

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中畑清氏、箱根駅伝V青学大に「“意地”が異次元”でしたね」母校駒沢大に「小さいあっぱれを」

総合優勝を果たし、胴上げされる青学大・原監督(代表撮影)

中畑清氏と上原浩治氏が7日、TBS系テレビ「サンデーモーニング」にご意見番として出演し、今年の箱根駅伝で2年ぶり7度目の総合優勝を飾った青山学院大(青学大)について語った。

母校が駒沢大の中畑氏は「誰しもが(優勝を)疑わなかった。青学の監督の本心だと駒沢だなと思っていたと思いますよ。それぐらい強かった」と話すと、司会の関口宏が「青学が意地になったね。絶対に負けられないと」と話すと、中畑氏は「“意地”が“異次元”でしたね。あまりうまくないか」とだじゃれを交えてコメントした。

中畑氏は「声も出ないくらい完敗です。(青学大の)2、3、4区の選手、異次元でしたね。3本柱なんですよ。1区、2区、3区で大差をつけて、一方的な勝利をと考えていたと思う駒沢は。それを早いうちに覆した。あの流れを作り上げた(青学大の)原監督の采配で選手が応えた、その流れは考えられなかった」と青学大にあっぱれをあげた。上原氏が「駒沢大学にも、あっぱれをあげて欲しいです」と話すと中畑氏は「ありがとうございます」と満面の笑みでお礼を述べ、「私からも小さいあっぱれをあげてください」と話した。最後に関口が申し訳なさそうに「話題にならないのですが、私の母校(立教大)も14位。シード権とれなかったんですよ」と話した。

青学大は3区後半で太田蒼生(3年)の激走で首位に立つと、1度も先頭を譲らずに独走。4区佐藤一世と9区倉本玄太が区間賞、7区山内健登が区間3位と奮闘し、2季連続3冠を狙った駒大の区間記録を9区間で上回り箱根を制した。

中畑清氏(2023年5月19日撮影)

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【箱根駅伝】来年101回大会連合チーム編成は「継続審議中」節目の100回大会は編成されず

関東学生連合

関東学生陸上連盟(関東学連)は5日、来年1月2、3日の第101回箱根駅伝の参加資格に関するリリース文を発表し、関東学生連合チームの編成可否は「継続審議中」とした。

同チームは「関東学連選抜チーム」の名称で03年の第79回大会から編成されるようになった。14年の第90回大会では廃止となったが、編成を望む学生たちが粘り強く議論したこともあり、翌年の第91回大会から復活し、箱根路を彩ってきた。

04年の第80回大会では、鐘ヶ江幸治(筑波大)が山登りの5区で区間賞を獲得し、大会MVPにあたる金栗四三杯を受賞。川内優輝も学習院大時代に出走し、卒業後にマラソンで活躍している。創価大や東京国際大なども連合チームを足掛かりの1つとし、本大会出場へとつなげた経緯がある。

今年の第100回大会では連合チームが編成されず、一部のファンや大学関係者から結成を望む声もあがっている。

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【箱根駅伝】全国化は第100回大会限り 来年以降は関東学連加盟校のみに出場資格付与

総合優勝を決めゴールする青学大10区宇田川(2024年1月3日撮影)

関東学生陸上連盟(関東学連)は5日、来年1月2、3日開催の第101回箱根駅伝の参加資格について「関東学生陸上競技連盟加盟校所属の男子登録選手」とし、全国化は第100回大会限りとなった。

同連盟は公式ホームページ上でリリース文を掲載し「第101回大会以降の参加資格を本連盟登録選手とした理由」について、「前提」「出場枠との関係」「発展の在り方」の3項目で説明した。

1つ目に前提として、関東学連の位置づけを「関東における学生陸上競技界を統括し、代表する学生自治団体」と定義。日本の陸上競技の普及や発展を目的としていると触れた上で「本連盟では加盟校に所属する学生競技者の強化を第一に考え、それによって我が国の陸上競技の普及発展に寄与していく」とした。

2つ目に出場枠との関係について言及。節目の100回大会となった今年の箱根駅伝は23校、例年は連合チームを含む21校が出場したが、「交通規制時間等の問題からコース沿道の関係各所にご了解をいただく必要があります。安全な車両運行の観点から、現状以上の出場校数の増加は困難な状況にあります」と説明。その上で「関東の学生競技者にできる限り出場枠を提供したい」と意向を添えた。

3つ目に今後の発展の在り方についても見解を示した。「発展の在り方のひとつの方法として参加資格を全国に広げることも考えられますが、それだけが発展の在り方ではありません。関東の大会として、さらに魅力あるものにしていくことが、相応しい発展の在り方だと考えます」。長距離種目の有力選手が関東地方の大学に集中している現状を踏まえつつ「関東の各大学と本連盟の先輩方の、努力と創意工夫の積み重ねによって、今のような存在になったものです。それを継承しながら、さらに発展させていくことが、本連盟の責務と考えています」とし、学連の加盟校を基盤として大会を発展させていく意向を強調した。

第100回の節目となった今大会は、参加資格を従来の関東学連加盟校から全国の地方大学へ拡大。昨年10月の予選会には、立命館大や大阪経済大、皇学館大や札幌学院大などが出場した。地方勢の最高は27位の京都産業大だった。

また、今大会は編成されなかった関東学生連合チームについては「継続審議中です」とした。

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【箱根駅伝】青学大、圧勝ご褒美はハワイ旅行 原監督自腹で4年生に“卒業旅行”プレゼント

2年ぶりで1位に返り咲き1番と指を立てポーズをする青学大・原監督(代表撮影)

青山学院大(青学大)の4年生にビッグプレゼントが待っていた!

2年ぶり7度目の総合優勝を飾った箱根駅伝から一夜明けた4日、同大のVメンバーは日本テレビ系の情報番組にはしご出演。原晋監督(56)から、3月にハワイへの“卒業旅行”が贈られることが明かされた。

2連覇した16年以降、原監督のポケットマネーで卒業旅行が贈られるのが恒例。今回は選手たちから「国内で」との声もあがったが、大会新記録Vを遂げたことへの感謝を込め、指揮官直々に4年ぶりのハワイ旅行が復活となった。

この大盤振る舞いにマネジャーらを含めた4年生17人も歓喜。赤坂匠主務も「楽しみです」と声を弾ませた。

今大会は豪華プレゼントに見合う圧勝だった。3区後半で太田蒼生(3年)の激走で首位に立つと、1度も先頭を譲らずに独走。4年生は4区佐藤一世と9区倉本玄太が区間賞、7区山内健登が区間3位と奮闘し、2季連続3冠を狙った駒大の区間記録を9区間で上回った。

来季は今大会の出走者7人が残る。下級生たちもご褒美をゲットすべく? 来年の箱根路へと突き進んでいく。

総合優勝を決め、チームメートと喜び合う青学大の志貴主将(中央)(代表撮影)
日本テレビビルの時計台前で笑顔をみせる青学大の箱根駅伝優勝メンバーたち(赤坂匠主務提供)

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【陸上】東京五輪1500m代表の卜部蘭が結婚発表「人生という長いレースを共に駆け抜け」

卜部蘭

21年東京オリンピック(五輪)陸上女子1500メートル日本代表の卜部蘭(28=積水化学)が4日、自身のSNSで結婚を発表した。

X(旧ツイッター)とインスタグラムを更新し「大学時代からお付き合いさせていただいてきた方と入籍いたしました。これからもお互いのペースを大切に、人生という長いレースを共に駆け抜けていけたらと思います」などとつづった。

卜部は東京学芸大出身の中距離ランナー。19年の日本選手権で800メートルと1500メートルで2冠を達成すると、21年に五輪代表に選出された。各種目の自己ベストは800メートルが2分2秒74、1500メートルが4分7秒90となっている。

卜部蘭のX(旧ツイッター)から

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箱根駅伝の視聴率は復路28・3%、往路26・1% 青学大が100回大会飾る新記録で7度目V

総合優勝を決めゴールする青学大10区宇田川(撮影・滝沢徹郎)

日本テレビ系で3日に放送され、青学大が2年ぶり7度目の総合優勝を飾った第100回箱根駅伝(復路)の世帯平均視聴率が28・3%を記録したことが4日、分かった。個人視聴率は17・5%。

2022年にマークした10時間43分42秒の大会記録を塗り替える10時間41分25秒。全国に門戸を広げた100回目の記念大会に花を添えた。

2位の駒澤大(駒大)は10時間48分0秒で、6分35秒の大差をつけた。

2日に同局が放送した往路の世帯平均視聴率は26・1%だった。往路優勝も青学大だった。同日の個人視聴率は15・7%だった。

昨年1月2日の往路は27・5%、同3日の復路は29・6%だった。

総合優勝を決めゴールする青学大10区宇田川(撮影・滝沢徹郎)
ゴール手前で投げキッスをする青学大10区宇田川(撮影・滝沢徹郎)
箱根駅伝 復路 総合優勝し記念写真に納まる青学大の選手たち。前列左から1区荒巻、2区黒田、3区太田、4区佐藤、5区若林、後列左から6区野村、7区山内、原監督、8区塩出、9区倉本、10区宇田川(撮影・垰建太)
総合優勝を決めNO・1ポーズする青学大・原監督=2024年1月3日

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【箱根駅伝】駒大2位 連続3冠へ大本命が…藤田敦史監督「後手に回って動揺」「箱根は別物」

ゴールしタオルで顔を覆う駒大10区庭瀬(手前)を見守る選手たち(撮影・滝沢徹郎)

<第100回箱根駅伝>◇24年1月3日◇復路◇箱根-東京(5区間107・5キロ)

史上初となる2季連続の大学駅伝3冠を狙った駒大は2位に終わった。往路2位の駒大は首位青学大と2分38秒差で復路を迎えた。逆転優勝を目指したが、スタートの6区から差を詰められず、ゴール時には6分35秒差まで広げられた。史上5校目の3冠達成の昨季に続き、今季も10月の出雲、11月の全日本と完勝。絶対王者として迎えた今大会は青学大の想定以上の強さの前に敗れた。4月にヘッドコーチから昇格し、今大会が箱根初采配だった藤田敦史監督は出直しを誓った。

   ◇   ◇   ◇   

青学大の背中は遠ざかるばかりだった。優勝候補筆頭で今大会に臨んだ駒大はトップの青学大に2分38秒差から復路で逆転に懸けたが、5区間全てで差を広げられた。藤田監督は「箱根はやはり別物と感じた。今季ずっと先頭を走ってきたので、後手に回って動揺が走った」と敗因を分析した。

6区の帰山が区間12位とブレーキ。挽回を狙った7区の安原は「焦りもあって(前半)突っ込んでしまった」。余分な力も入り、スピードに乗れなかった。「4年生として前を追って流れを変えていかないといけない立場だったが、離されてしまった」と反省した。

往路の3区で歯車が狂い始めた。“3本柱”の一角で、U-20(20歳未満)の1万メートルの日本記録を持つ3区の佐藤が首位から転落。昨年箱根から連続首位記録が「23区間」でストップ。安原は「どこかに不安みたいなのを感じたんじゃないか」と振り返る。首位通過してきた出雲、全日本の計14区間のうち7区間で区間賞。他校の背中を見てこなかった絶対王者の戸惑いは隠せなかった。

大会前の調整も課題を残した。出雲、全日本の優勝メンバーだった伊藤蒼唯は起用されなかった。「インフルエンザにかかって、その後は故障もあった」と藤田監督。「箱根駅伝は他の駅伝と別物」とシーズン最後の大舞台に照準を合わせる難しさを実感した。

「史上最強を越える」。田沢廉らを擁し、3冠を達成した昨季のチームをライバル視してきた。打倒駒大で挑んできた青学大とは対照的な姿勢だった。往路では大会新を出すなど、タイム自体は決して悪くないが、青学大はさらに上をいった。藤田監督は「想定よりはるかに超えた数字だった」とライバルの実力を認めるしかなかった。

もっとも今回の出場メンバーの半分は来年も残る。実力者もそろい、戦力が豊富であることに変わりはない。3区で競り負けた2年生の佐藤は「今回走った2年生やそれ以外の下級生を自分が引っ張っていきたいと思います」と前を向いた。藤田監督も「この1年は苦労すると思う」と、再建への覚悟を口にした。この悔しさは忘れない。【村山玄】

■鈴木主将「悔しい」

2区2位だった鈴木主将は「とにかく悔しいです。3冠しようとやってきた。後悔はないが、事実として負けてしまった」と肩を落とした。卒業後は実業団で競技を続ける予定で「次のステージで生かせるように」と糧にする。最後に後輩たちへ「この悔しさを絶対忘れないようにして、来年また勝てるように頑張ってほしい」とエールを送った。

2位に終わり報道陣に対応する駒大・藤田監督(撮影・たえ見朱実)
2位でゴールする駒大10区庭瀬(撮影・滝沢徹郎)
優勝を逃し悔しげに引き揚げる駒大10区庭瀬(中央)ら
運営管理車から選手を鼓舞する駒大・藤田監督(代表撮影)
箱根駅伝 復路 2着でゴールする駒大10区庭瀬(撮影・垰建太)
ゴールした駒大10区庭瀬(中央)を笑顔で出迎える鈴木(右)(撮影・垰建太)
箱根駅伝優勝回数
箱根駅伝歴代優勝校

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【箱根駅伝】青学大1年計画で雪辱シナリオ、エントリー外の主将が築いた一体感で2年ぶりV

箱根駅伝 復路 総合優勝し記念写真に納まる青学大の選手たち。前列左から1区荒巻、2区黒田、3区太田、4区佐藤、5区若林、後列左から6区野村、7区山内、原監督、8区塩出、9区倉本、10区宇田川(撮影・垰建太)

<第100回箱根駅伝>◇3日◇復路◇箱根-東京(5区間109・6キロ)

青学大が、全国に門戸が広げられた100回目の記念大会で、2年ぶり7度目の総合優勝を飾った。

大会新の10時間41分25秒をマークし、22年に同大が記録した大会記録を2分17秒更新。往路3区で首位に立つと、計5選手が区間賞を獲得する独走劇で、史上初の2季連続大学駅伝3冠を狙った2位駒大に6分35秒差をつけた。今季は出雲5位、全日本2位にとどまっていた中、16人のエントリーを外れた志貫勇斗主将(4年)がけん引。チームをまとめ上げ、新たな黄金時代到来を予感させる圧勝の箱根路に導いた。

   ◇   ◇   ◇

駒大をはるか後方に置き去りにしていた9区。志貴は横浜駅前の給水地点を走っていた。4年目で初の箱根出走となった倉本へボトルを手渡した。一瞬だった。「短かったな」。ガッツポーズで応える同学年の背中は、あっという間に遠ざかった。2年前の前回優勝時は1区区間5位と好走も、この大会はサポート役。再び走ることはかなわなかったが、胸は喜びでいっぱいだった。「全員で頑張ってこれた」。駒大に大差をつけ、独走でゴールテープを切った大手町。すがすがしい思いで役目を遂げ、仲間の手で宙を舞った。

前回大会で連覇を逃し、3冠を達成した駒大に主役の座を奪われると、世間の目は自然と新チームへ向く。現4年生で昨季の箱根を走ったのは佐藤のみ。「谷間の世代」と言われたこともあった。大学3大駅伝未出走の倉本は「悔しさから始まった1年」と振り返る。3位となった2日後の1月5日。山区間候補者による箱根登り坂での20キロ走から、雪辱への道のりが始まった。

ただ、春のトラックシーズンが始まっても、存在感を示せない。立候補で主将に就任した志貴は、5月の関東インカレ2部ハーフマラソンで23位となり、「ふがいない。自分は主力として戦わないといけないのに」と肩を落とした。好調の駒大と対比され「今年も青学は厳しい」との声も耳にした。

変化のきっかけは夏合宿だった。主将は部員たちと膝をつき合わせることから始めた。「100%を出し切るには、1つ1つの細かいことをやっていかないと」。チーム全体だけでなく、学年間でも話し合った。4時間に及んだ時もあったが「全ては箱根のため」と腹をくくった。

その思いが、すぐに結果に表れるほど甘くはない。出雲、全日本では、前評判通りに駒大に圧勝を許した。それでも4年生は諦めなかった。箱根未出走の山内や倉本らが何とかメンバー争いへ食らいついた。志貴は11月末の時点でエントリーから外れたことを悟ったが「最後まで走り切ろう」と12月下旬まで学内競技会へ出場を続けた。

そして迎えた最後の箱根。4年生の奮闘が光った。佐藤と倉本は区間賞、山内は区間3位と力走。チームは史上最速タイムをたたき出し、駒大1強を崩した。

青学大は給水のサポート役を出走者が選ぶ。出走した4年生3人は、全員が同学年の仲間を選んだ。託された志貴は「これが横のつながりかな」と喜びをかみしめながら、給水ポイントを走った。「チームがトップを走っていることが本当に誇らしかった」。主将を軸に築かれたこの一体感こそが、下馬評をひっくり返す土台だった。【藤塚大輔】

◆青学大陸上競技部 1918年(大7)創部。箱根初出場は43年で、最下位の11位。76年を最後に出場できない期間が続いたが、04年に原晋監督が就任し、09年に33年ぶりに箱根復帰。15年の初制覇から4連覇を達成。20、22年も優勝。主なOBは「3代目山の神」こと神野大地。活動拠点は神奈川・相模原市。

ゴールした青学大10区宇田川(中央)を抱き締める志貴主将。右は見守る原監督(撮影・滝沢徹郎)
ゴール手前で投げキッスをする青学大10区宇田川(撮影・滝沢徹郎)
7区、富士山を背に力走する青学大・山内(撮影・河野匠)
7区、力走する青学大・山内(撮影・河野匠)
9区、力走する青学大・倉本(撮影・河野匠)
総合優勝を果たし、胴上げされる青学大・原監督(代表撮影)
戸塚中継所をトップでタスキをつないだ青学大8区塩出に笑顔で声をかける原監督(撮影・宮地輝)

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【箱根駅伝】青学大・原監督「原メソッドの基本軸があるからこそ」初出走7選手の起用ズバリ的中

優勝のゴールテープを切った青学大10区宇田川(左から2人目)を笑顔で出迎える原監督(同4人目)ら選手たち(撮影・垰建太)

<第100回箱根駅伝>◇3日◇復路◇箱根-東京(5区間109・6キロ)

青学大を7度目の総合Vへ導いた原晋監督(56)は監督歴20年のノウハウを生かし、駒大1強の下馬評を覆した。今大会の出走10選手のうち、前回大会も走ったのは太田と佐藤のみで、2大会連続出場が2人のみはシード10校の中で最少。逆に初出走は7選手で、復路は全員が初の箱根路だった。経験値不足も懸念されたが、指揮官の起用はズバリと的中した。

      ◇     ◇     ◇

大会新記録Vを遂げた原監督は、豪快に笑い飛ばした。「皆さん、青学が勝つなんて誰も思っていなかったでしょ。誰か思っていました? 俺も思っていないんだから」。駒大1強の前評判で迎えながら、9区間で駒大の区間順位を上回った。04年の就任以降、ゼロから常勝軍団を築き上げた指揮官の手腕が光った。

「こちらが120%の力を発揮し、かつ相手が自滅しなければ無理」という見立てで迎えた今大会。オーダーには7人の初出走者を並べ、4年生3人の中でも7区山内と9区倉本は初舞台だった。これは「実績は関係なく選考する」と明言し、箱根で最も好調な選手を起用するように努めてきた証拠。区間賞を獲得した倉本は「4年間でしっかり練習を積めば、絶対に走れると思っていた」と諦めることはなかったとうなずいた。指揮官は「体系化させた原メソッドの基本軸があるからこそ」と誇った。

12月にはアクシデントにも見舞われた。チーム内でインフルエンザに10人弱の選手が罹患(りかん)。例年は選考会などで追い込むタイミングを、箱根で力を発揮するため、あえて休養にあてた。「トレーニングを柔軟にできるようになった。それが大会新記録につながった」。それまでの疲労が抜け、メンタル面でもリフレッシュができた。

過去の実績にとらわれず、臨機応変な対応をみせた監督は、言葉でも選手たちの重圧を振り払った。12月28日の全体ミーティング。「本音8割、2割はほっとさせる」という意味を込めて、学生たちに「準優勝でいいよ」と伝えた。その言葉に逆に選手たちが発奮。選手たちのみでミーティングを開き、あらためて目標を明確化した。「学生たちは『優勝だ』となっているので、力を抜かせようと。『準優勝でいい。その先に優勝がある』と。現実を見ず、学生の気持ちに乗っかって『優勝だ、優勝だ』と輪をかけるように言っても、うそになる」。絶妙な声かけでチームの“120%の力”を引き出した。

「私以上に学生たちが優勝したい思いが強かったレース。学院創立150周年、監督就任20年、箱根駅伝100年、この3つのタイミングで優勝させていただいたことをうれしく思う」

巧みなタクトで導き、再び黄金時代の幕が開けた。【藤塚大輔】

○…2つの吉兆データが的中!? 原監督は毎年箱根のテーマを「○○大作戦」と掲げている。この1文字目の母音に注目すると、初優勝した15年以降はすべて「a」のつく年に制覇していた。今回のテーマは「負(Ma)けてたまるか大作戦」で“不敗伝説”は継続。また、今季は出雲5位、全日本2位で、20年の箱根も同様の順位推移から制していた。王者は運も味方につけていた。

戸塚中継所をトップでタスキをつないだ青学大8区塩出に笑顔で声をかける原監督(撮影・宮地輝)
総合優勝を決めNO・1ポーズする青学大・原監督=2024年1月3日
1位でゴールする10区宇田川(手前)を迎える青学大・原監督(中央)と選手たち(撮影・菅敏)
1位でゴールする10区宇田川(手前)を迎える青学大・原監督(中央)ら選手たち(撮影・菅敏)
優勝のゴールテープを切った青学大10区宇田川(手前)を笑顔で出迎える原監督(左から4人目)ら選手たち(撮影・垰建太)
優勝のゴールテープを切った青学大10区宇田川(左から2人目)を笑顔で出迎える原監督(同4人目)ら選手たち(撮影・垰建太)
箱根駅伝 復路 総合優勝し記念写真に納まる青学大の選手たち。前列左から1区荒巻、2区黒田、3区太田、4区佐藤、5区若林、後列左から6区野村、7区山内、原監督、8区塩出、9区倉本、10区宇田川(撮影・垰建太)
箱根駅伝 復路 総合優勝し記念写真に納まる青学大の選手たち。前列左から1区荒巻、2区黒田、3区太田、4区佐藤、5区若林、後列左から6区野村、7区山内、原監督、8区塩出、9区倉本、10区宇田川(撮影・垰建太)
箱根駅伝 復路 ゴール地点で肩を組み青学大10区宇田川待つ原監督(左から3人目)ら選手たち(撮影・垰建太)
総合優勝を遂げNO・1ポーズで引き揚げる青学大・原監督(撮影・滝沢徹郎)
総合優勝を遂げNO・1ポーズで引き揚げる青学大・原監督(撮影・滝沢徹郎)
箱根駅伝 復路 ゴール地点で笑顔を見せる原監督(左から2人目)ら青学大の選手たち(撮影・垰建太)
ゴールした青学大10区宇田川(中央)を抱き締める志貴主将。右は見守る原監督(撮影・滝沢徹郎)
青学大・原監督(左)がゴールに到着し選手とタッチを交わして喜ぶ(代表撮影)
横一列になり出迎える青学大・原監督(中央)と選手たち(代表撮影)

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【箱根駅伝】大東大が最終10区で逆転、9年ぶりシード権つかむ「いつかは3冠を」真名子監督

シード権を獲得しうれし泣きする大東大10区佐々木(中央)ら(撮影・滝沢徹郎)

<第100回箱根駅伝>◇3日◇復路◇箱根-東京(5区間109・6キロ)

往路を制した青学大が危なげなく逃げ切り、大会新記録で2年ぶり7度目の総合優勝を果たした。駒大は復路での逆転ならず史上初となる2季連続の3冠を逃した。

   ◇   ◇   ◇   

往路8位の大東大が、最終10区で逆転し、9年ぶりのシード権をつかんだ。10位東海大と4秒差の11位でタスキを受けた10区の佐々木真人(3年)がジワジワと追い上げ、蒲田付近で逆転。最後は東海大に1分10秒差をつけてゴールを駆け抜けた。

復路は今回、史上最多タイ16校(往路8位以下)が一斉繰り上げスタートとなったため、シード権(10位以内)争いは、走っている順位と正式順位の相違がより複雑化。逆転した瞬間も、佐々木は東海大のはるか後方を走っていた。「タスキを受けた時点で4秒差と聞いた。設定タイムを守ることだけを意識した。まずは前にいた神大に追いつくことを考えた。正直、かなり緊張した」。高校駅伝で仙台育英を率いて全国優勝している真名子監督は「この大会がゴールではない。スタートだと思うので、いつかは3冠を取りたい」と見据えた。今日4日から、練習を再開する。【首藤正徳】

箱根駅伝 復路 10位でゴールした大東大10区佐々木(中央)を歓喜の涙を流し出迎える選手たち(撮影・垰建太)
大東大10区佐々木(左)は、チームメートに迎えられ、総合10位でゴールをする(撮影・菅敏)
総合10位で来年のシード権を獲得した大東大・10区佐々木は涙を流しながら引き揚げる(撮影・たえ見朱実)

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【動くデータ】箱根駅伝の歴代優勝校一覧!

【イラスト】最近10年の箱根駅伝優勝校

青山学院大(青学大)が2年ぶり7度目の総合優勝を飾った。2022年にマークした10時間43分42秒の大会記録を塗り替える10時間41分25秒。全国に門戸を広げた100回目の記念大会に花を添えた。

箱根駅伝の歴代優勝校を動画でチェック!

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【箱根駅伝】青学大・原晋監督「青学が勝つなんて、俺も思っていなかった」/一問一答

総合優勝を果たし、胴上げされる青学大・原監督(代表撮影)

<第100回箱根駅伝>◇3日◇復路◇箱根-東京(5区間109・6キロ)

青山学院大(青学大)が2年ぶり7度目の総合優勝を飾った。3区で逆転して往路優勝すると、復路では1度もトップを譲らず、100回目の節目を圧勝劇で制した。

ミックスゾーンでの原晋監督(56)の一問一答は以下の通り。

-過去の優勝と比べて今回の優勝は

今年は勝てるつもりじゃなかったので、初優勝したときと同じような感じなのかな。当たっちゃったって感じなのかな。去年ぐらいから、もう勝てないぞという感じになってきた。次に勝てたときには涙が出るぞと思った。ちょっと今年は勝つつもりじゃなかったというか、勝てるつもりではなかったので涙も出なくて。勝つときって、こんなもんだって感じなんですよ。皆さん、青学が勝つなんて誰も思っていなかったでしょ。俺も思っていなかったんだから(笑い)。

-12月下旬、選手たちに「準優勝でいい」と伝えた意図は

まずは現実問題として難しいというのがあった。こっちが120%の力を発揮して、かつ相手が自滅でもするようなことにならなければ難しい。相手がインフルエンザとかにかかればまた話は別だけれど、耳にした情報では主力はほぼ大丈夫そうだと。一方で我々のほうはインフルエンザに集団感染。ハンディを背負った状態。現実的に考えて勝てますか、という話になってくる。それが最大の理由。あとは、それでも学生たちは「優勝だ、優勝だ」ってやってるから、ちょっと力を抜かせようと。リラックスさせようと。「もう準優勝でいい。その先に優勝ってあるからね」と。そんなふうに持っていった。あそこで現実を見ず、学生の気持ちに乗っかって「優勝だ、優勝だ」と輪をかけるように言っても、これはうそになりますから。

-その言葉をかけたあと、練習中などに学生たちの様子に変化は

まあ、4年生は常に頑張ってくれていました。(12月)26日に1万メートルの学内記録会があり、(エントリーメンバーの)16名から外れた選手たちが走る。さらに4日後には3000メートルのタイムトライアル。そこで志貴(主将)は、1万メートルではビリから2番目ぐらいだったのが、4日後にはほぼ自己ベストぐらいまで頑張った。腐ることはなかった。そういう頑張りが結果として、「この人たちは本気で頑張ってる」とチームに波及していく。

-原メソッドとはどういうものか

ものごとには、基本の基があるからこそ。野球の投手で言えば、直球があるからこそ、変化球も生きる。チームとしての軸があるからこそ、イレギュラーなことにも対応できる。戻るべき場所をきちんとつくっておくことが大事。指導者としての軸を20年かけて作ったからこそ、今回のインフルエンザ集団感染にも対応できた。

-具体的には

本来なら、12月の初旬に強化をやらなければならなかった。練習できなかった時期を取り戻そうとして、12月中旬以降、無理にその穴を埋める練習を指導者はしがち。でも今回はそういうことをあえてしなかった。結果としてリフレッシュした状態で、特に往路の2区3区あたりは走ることができたかなと思う。でもそれは、1年間トータルのメソッドがあるから。そのうち何%をできているかという基本軸の中で対応していくということになる。指導者はやらせがちなんです。どうしても不安なので。

戸塚中継所をトップでタスキをつないだ青学大8区塩出に笑顔で声をかける原監督(撮影・宮地輝)

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【箱根駅伝】来年以降の全国化を期待する声も 100回の節目は未来を考えるいい機会に

優勝のゴールテープを切った青学大10区宇田川(左から2人目)を笑顔で出迎える原監督(同4人目)ら選手たち(撮影・垰建太)

<第100回箱根駅伝>◇24年1月3日◇復路◇箱根-東京(5区間109・6キロ)

100回目の箱根駅伝は近年の高速化を象徴する結果になった。

青学大の優勝記録は従来を2分17秒も更新する10時間41分25秒。さらに注目は9位帝京大までが10時間台で走ったこと。94年に優勝した山梨学院大が初めて11時間の壁を破ったが、そのタイムでは今はシード圏内も心もとない。

当時の山梨学院大の監督で、関東学連の上田誠仁駅伝対策委員長が振り返る。「高速化が進んでいる。それは盾と矛の関係で、強い盾があるから強い矛ができる。お互い今のままではダメだと刺激を受けて追求する。それを100回の歴史で繰り返してきた」。

86年に日本テレビが完全生中継を開始して、全国区の人気イベントに。高速化が加速した。89年にケニア人留学生ランナーが初登場。2区を走った山梨学院大オツオリが7人抜きと快走したことで、他校も競って“切り札”獲得に乗り出し、今大会まで40人の留学生が出走した。

17年には反発力のある厚底シューズが登場。区間記録が一気に塗り変わった。現在の記録はすべて19年以降に樹立されたもの。「今回の3区で青学大の太田くんが日本人で初めて60分を切ったが、ちょっと前では考えられない」(上田委員長)。一方で疲労骨折などの選手の故障は増えている。

記念大会の今回は予選会で全国の大学に門戸を開いた一方、復路ではトップ青学大とのタイム差10分以上という線引きで、16校が一斉繰り上げスタートになった。また本大会で関東学生連合の出場を取りやめて批判も起きた。来年以降の全国化を期待する声もあるが、上田委員長は「関東学連からは何も発信していない」。伝統を守りつつ、いかに時代に即して変化していくか。100回の節目は、未来の箱根駅伝を考えるいい機会でもある。【首藤正徳】

10区、沿道から大歓声を受けてゴールに向かう青学大・宇田川(撮影・河野匠)
ゴール手前で投げキッスをする青学大10区宇田川(撮影・滝沢徹郎)
箱根駅伝 復路 総合優勝し記念写真に納まる青学大の選手たち。前列左から1区荒巻、2区黒田、3区太田、4区佐藤、5区若林、後列左から6区野村、7区山内、原監督、8区塩出、9区倉本、10区宇田川(撮影・垰建太)
総合優勝を決め、記念撮影に臨む青学大の選手たち(代表撮影)
総合優勝を決め、読売新聞東京本社の村岡社長(左)から優勝旗を受け取る青学大の佐藤(代表撮影)
総合優勝を決めゴールする青学大10区宇田川(撮影・滝沢徹郎)
10区、力走する青学大・宇田川(撮影・河野匠)
10区、後方を走る運営管理車の青学大・原監督から声をかけられ、両手を挙げて応える宇田川(撮影・河野匠)
9区、脇腹を気にする青学大・倉本(撮影・河野匠)
8区、たすきを掲げて戸塚中継所に向かう青学大・塩出(撮影・河野匠)
8区、青学大・塩出(左)は前日に2区を走った同期の黒田から給水を受け取る(撮影・河野匠)
平塚中継所で青学大7区山内(右)は8区塩出にたすきをつなぐ(撮影・河野匠)
鶴見中継所で青学大9区倉本(右)からたすきを受け走り出す10区宇田川(撮影・横山健太)
鶴見中継所でタスキを渡し倒れ込む青学大9区倉本(撮影・横山健太)
青学大8区塩出(左)は戸塚中継所をトップで9区倉本にタスキをつなぐ(撮影・宮地輝)
平塚中継所手前を力走する青学大7区山内(撮影・河田真司)
平塚中継所、青学大7区山内(奥)は1位で8区塩出にたすきを渡す(撮影・河田真司)
小田原中継所に到着した青学大6区野村(撮影・鈴木みどり)
第100回東京箱根間往復大学駅伝競走 往路 平塚中継所手前を力走する青学大3区太田蒼生(撮影・河田真司)
4区、ガッツポーズで小田原中継所に向かう青学大・佐藤(撮影・河野匠)
青学大4区佐藤(左)は小田原中継所で5区若林にたすきを渡す(撮影・鈴木みどり)
往路優勝した青学大3区太田(撮影・宮地輝)
往路優勝した青学大2区黒田(撮影・宮地輝)
平塚中継所で仲間に傘をさしてもらい、笑顔でガッツポーズする3区区間賞の青学大・太田(中央)(撮影・河田真司)
区間賞を獲得した青学大2区黒田は笑顔でポーズ(撮影・山崎安昭)
戸塚中継所で青学大2区黒田(左)は3区太田にたすきを渡す(撮影・山崎安昭)
往路優勝し記者の質問に答える青学大・原監督(中央)(撮影・垰建太)
往路優勝しプレゼンターの女性と記念写真に納まる青学大の、左から原晋監督、1区荒巻、2区黒田、2人おいて、3区太田、4区佐藤、5区若林(撮影・垰建太)
戸塚中継所に2位で駆け込む青学大2区黒田(撮影・山崎安昭)

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【箱根駅伝】中大・吉居駿恭7区で歴代3位の区間賞 体調不良の兄・大和の分まで力水もらい快走

7区区間賞を獲得した吉居駿

<第100回東京箱根間往復駅伝競走大会>◇3日◇神奈川・箱根町芦ノ湖畔~東京・大手町(109・6キロ)◇5区間◇出場23チーム

中大・吉居兄弟がそろった最後の箱根駅伝は13位に終わった。吉居大和(4年=仙台育英)は2区を走るも1時間8分4秒で区間15位と奮わず。大会直前の体調不良が響いた。だが弟の駿恭(2年=仙台育英)は7区(21・3キロ)で歴代3位となる1時間2分27秒で区間賞を獲得。奮わなかった兄の分まで、弟が快走した。

昨年4区を走り、1時間1分49秒で区間5位と上々の箱根デビューを飾った駿恭。昨年の兄の2区区間賞には「本当に感動しました。自分もああいう走りを目指したい」と語っていた。しっかりと力をつけ臨んだ今年は自身が区間賞。目指していた走りに近づいた。

15キロ地点で見ていた大和は、「一番きついところでも良い表情をしていて、体もしっかり動いていた。走ってくる姿が見えたときはすごいうれしかったです」。15・3キロ地点の給水ポイントで力水を駿恭に手渡し。兄から弟へ「区間賞ペースだからいけるぞ」「きつくなったら駿恭が一番強いから」「きつさもしっかりと楽しんでいけ」と伝えると駿恭は左手を上げて応え、再びペースを上げた。

来年からは駿恭がエースだ。大和は「ここからはもう駿恭がエース。駿恭らしく引っ張ってくれたらうれしいなと思います」と期待を寄せた。駿恭は「しっかりオリンピックに出て、みんなに勢いをつけたい」とエースの自覚は十分。シード権、そして優勝へ、新たなエースが突き進む。【濱本神威】

平塚中継所手前を力走する中大7区吉居駿(手前)
小田原中継所を出発する中大7区吉居(撮影・鈴木みどり)
小田原中継所で7区吉居(右)にたすきを渡す中大6区浦田(撮影・鈴木みどり)

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【箱根駅伝】法大・稲毛崇斗「彰太に『ありがとう』と伝えたい」亡き友に来年のシード権ささげる

戸塚中継所でタスキを受け、駆け出す法大9区稲毛

<第100回東京箱根間往復駅伝競走大会>◇3日◇神奈川・箱根町芦ノ湖畔~東京・大手町(109・6キロ)◇5区間◇出場23チーム

亡き友を思い、箱根路を駆け抜けた。法大の選手たちは、昨年8月13日に亡くなった高橋彰太さん(享年19、宮城・東北高出身)への思いを込め、左腰付近に喪章をつけてレースに臨んだ。9区を走った高校の先輩でもある稲毛崇斗(4年=東北)は区間6位の好走。「自分の力が出せた。彰太に『ありがとう』と伝えたい」と感謝した。チームは総合6位。天国の彰太さんへ来年のシード権をささげた。

彰太さんはチームのムードメーカーだった。稲毛は「本当におもしろいやつでした。僕も一応先輩なんですけど、同期のように接していましたし、彰太の方も接してくれていた。本当に仲が良かったと思います」。高校の頃から先輩後輩の垣根を越えて仲が良かった。大学3年時には彰太さんと同部屋になった。彰太さんはよく歌っていたという。「けっこう歌っていて、にぎやかなやつでした。彰太のことを嫌いなやつはいないんじゃないかっていうくらい、いいやつだった」。

彰太さんは高校3年時の宮城県高校総体男子1500メートルで3分52秒53(当時の自己ベスト)をマークし優勝。稲毛も「強かったですね」と笑顔で語るように、将来有望な選手だった。法大に進学し、坪田智夫監督も「意志の強さがあった。チームのエース級、主力になり得るなと思っていた」と大きな期待を寄せていたが、急逝。8月の夏合宿中に彰太さんの父から、彰太さんが亡くなったという連絡を受けた。稲毛は「本当にショックで、練習どころじゃなかった」。それほどに急な知らせだった。

だが1週間ほどして、「『彰太のために目標を達成したい』という思いが、チームとしても個人としても段々強くなった」。「彰太のために」という思いのもと、チームが一致団結。今大会では、昨年から順位を一つ上げ、3年連続のシード権をつかんだ。

この結果を彰太さんに伝えにいく。稲毛は「『箱根、良い結果だったよ。ちゃんと走れたよ』と伝えたい」。ともに走った箱根路を、彰太さんと振り返る。【濱本神威】

法大8区清水(右)は戸塚中継所を6位で9区稲毛にタスキをつなぐ(撮影・宮地輝)

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【箱根駅伝】父はケツメイシ大蔵、国学院大の吉田蔵之介「楽しみました」エール受けて奮走

戸塚中継所でタスキを受け取り、駆け出す国学院大9区吉田(撮影・宮地輝)

<第100回箱根駅伝>◇3日◇復路◇箱根-東京(5区間109・6キロ)

総合5位に入った国学院大は、人気音楽グループ「ケツメイシ」のリーダー大蔵を父に持つ吉田蔵之介(1年)が、箱根デビューした。9区(23・1キロ)を走り、1時間10分1秒の区間7位でアンカーにタスキをつないだ。

この日、沿道から見守ってくれた父には、レース前に「夢の舞台を楽しんで来い」と背中を押されたという。声援を受けながら疾走し、「楽しみました」と白い歯を見せた。

6年連続のシード権獲得に貢献も「ラスト3キロのところで全然粘れなくて、法大の方に離されてしまった。実力不足を感じた」と反省を忘れない。

埼玉栄高時代には全国高校駅伝に出場し、アンカーを務めて4位に入った経験を持つ。父の曲「覚悟はいいか」でモチベーションを高める1年生。初の箱根路を成長の種にする。

ケツメイシ 左からRYO、RYOJI、大蔵、DJ KOHNO(2018年10月撮影)
鶴見中継所で10区高山(右)にたすきを渡す国学院大9区吉田(撮影・横山健太)
国学院大8区鎌田(右)は戸塚中継所を5位で9区吉田にタスキをつなぐ(撮影・宮地輝)
戸塚中継所でタスキを受け取り、駆け出す国学院大9区吉田(撮影・宮地輝)

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【箱根駅伝】上田誠仁駅伝対策委員長「痛しかゆし」最多タイ16校一斉繰り上げスタートで混乱に

スタート準備の進む芦ノ湖の6区スタート地点=7時00分

復路は往路1位の青学大がスタートした10分後に、史上最多タイの16校が一斉繰り上げスタートとなった。

このためシード権(10位以内)争いで、走っている順位と正式順位が相違する混乱が起きた。青学大が5時間18分13秒の往路新記録をマークした影響も大きいが、一部の監督からは10分後のスタートに疑問の声も出ていた。山梨学院大の元監督で関東学連の上田誠仁・駅伝対策委員長は「たとえスタートを15分後にしても道路規制の関係で(中継点で繰り上げスタートする)20分は変えられない。スタートで救っても、次の繰り上げが早くなるということになる。安全の担保もある。そこは痛しかゆし」とコメントした。

スタート準備の進む芦ノ湖の6区スタート地点
芦ノ湖と富士山を背にスタートする青学大6区野村(撮影・河野匠)
上田誠仁氏(2021年12月撮影)

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