<福永時代 前人未到ダービー3連覇へ(3)>

痛恨の半馬身差だった-。連載「福永時代 前人未到ダービー3連覇へ」の第3回は、福永祐一騎手(45)がエピファネイアで2着に惜敗した13年ダービーについて、同馬を管理した角居勝彦元調教師(58)が振り返る。当時すでに第一線の地位を確立していた名手が、無力感を味わい、肉体改造まで決意したショッキングな敗戦だった。

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のちに福永騎手は「無力感を感じた」と振り返っている。悔恨のダービーは13年だ。序盤から行きたがるエピファネイアの手綱を引き、道中はほとんど後傾姿勢。3コーナーではつまずいて落馬寸前になり、最後は半馬身差でキズナと武豊騎手に差されて敗れ去った。

管理していた角居氏は、騎手のせいにしなかった。今も「つまずいたのも競馬の中のアクシデント。『事故にならなくてよかったな』と思う」と振り返る。それでも鞍上は責任を痛感した。敗因を自身に求め、出した答えの1つが肉体改造だった。「あれだけパワーのある馬は、そういない。今までの体のつくり方では対応できないので、そこを変えた」と説明。希代の逸材を制御できるよう鍛え直した。同年秋には神戸新聞杯と菊花賞を連勝。2400メートルどころか3000メートルも我慢させて結果を出した。

角居氏 彼は失敗を糧にステップアップしてきた。今も年々進化していて、衰えは感じないし、みるみるフレッシュになっている。馬のパワーは昔より格段に上がっているのに、それを無理な姿勢にならず難なくコントロールして、思い通りのポジションにいる。

名伯楽は引退間際に、日本を代表するホースマンと、こんな会話をかわしたのを覚えている。「年をとってうまくなる騎手もいるんだな」。言葉の主は社台ファームの吉田照哉代表。もちろん、福永騎手への称賛だ。今なお伸び盛りの45歳。“福永時代”は、これからこそが全盛期なのかもしれない。【太田尚樹】

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