愛馬がダービーに出るとなれば黙っていられない。今週29日に東京競馬場で第89回日本ダービー(G1、芝2400メートル)が発走する。西山茂行オーナーはセイウンハーデス(牡、橋口)で3歳馬の頂点を決める“競馬の祭典”に参戦。ハーデスへの期待、西山家悲願のダービー制覇への思いなどを熱く語った。

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「今年は7300頭に輸入馬を加えて3歳馬は7500頭ほどといわれています。その頂点、18頭にゲートインできたということだけでうれしいです。ダービーのパドックの芝を踏むというのが、馬主の一番の目標ですから」。西山オーナーはよどみなく、穏やかな語り口で心境を語った。日本を代表するオーナーブリーダーとしての自負ものぞかせながら。66年の西山牧場開場以来、先代の父正行氏の所有馬などと合わせてセイウンハーデスで11度目のダービー挑戦が待つ。

何年たっても、忘れられない景色がある。84年5月27日。26歳の西山オーナーは初めてダービーのパドックにいた。空には飛行船。周回する馬の奥には、桁違いのファンとマスコミが詰めかけていた。「テレビで見るものだと思ってましたから。こんなに違うんだなって思ったんですよ」。父正行氏の所有馬ニシノライデンの健闘を願い、結果は皇帝シンボリルドルフから遅れること1秒の5着。独特の熱気と興奮には、意識を変える魔力があった。「数年に1回、できれば毎年ですね」。常に出走を目指すべき大きな目標になった。

「今回は私の中ではすごく楽しみです」。ダービー最終便のプリンシパルSを勝利しての参戦だ。皐月賞馬セイウンスカイ(4着)で臨んだ98年の重圧もなければ、19年5着馬ニシノデイジーのように皐月賞17着惨敗で評価が急落しているわけではない。「勝って行く。坂を上っていくような感じですよね。甘くないのは自分でよくわかっていますが、皐月賞組、その他に賞金を持っている強い連中とどこまで戦えるのか、2400メートルでどんな競馬ができるのか、それだけが楽しみで挑戦させていただきます」。

新馬戦は1400メートル。当初はマイル向きという判断でダービー出走に必要なクラシック登録(※)もしていなかった。だが、実際は距離を延ばして真価を発揮。オーナーの想像を超える成長を見せた。200万円の追加登録料を支払って迎える頂上決戦。「稼ごうと思えばラジオNIKKEI賞(福島芝1800メートル)ですよ。追加登録料もいらず、多分勝ち負けできるだろうから。それじゃあ、面白くないでしょう。幸騎手がやりにくくなるかもしれないけど、前で競馬をすると思います。先行することが、この馬の一番の能力を発揮することだと思う。一瞬の切れ勝負ではなくて、前めにつけて直線抜け出す。それで後ろから差されたらしょうがない」。まだ手にしていない世代王者の称号はぜひとも手に入れたい。

レース当日は馬主仲間でもある親友の風水家Drコパの助言を取り入れたスーツを着込み、日枝神社か父が眠る梅窓院へ拝礼してから競馬場へ向かう。「多分、人気もしないでしょうから結構気楽です。カチカチにならないで、無事に走ってきてくれればいいな、と。2400メートルをきっちり走りきってくれれば、きっといい結果がついてくれると思います」。身震いした初めてのパドックから38年。今年も一世一代の晴れ舞台を間近で見届ける。【松田直樹】

※クラシック登録 ダービーなどのクラシック競走に出走するには3段階の登録がいる。登録料は2歳10月の第1回が1万円、3歳1月の第2回が3万円、各レース2週前の第3回が36万円で計40万円。これをしていなかった馬は最終登録時に200万円が必要になる。92年に追加登録制度ができてから追加登録馬でダービーを制した馬はまだいない。

▼西山茂行(にしやま・しげゆき)1958年(昭33)4月15日、東京都生まれ。西山牧場代表。「ニシノ」「セイウン」などの冠がつく馬で知られるオーナーブリーダー。代表馬はニシノフラワー、セイウンスカイ、セイウンコウセイなど。毎年、各世代約50頭いる競走馬の馬名は社員から募って決めている。ブログ「西山牧場オーナーの(笑)気分」やツイッター(@seiun0005)では、馬主ライフなどを発信中。勝負服は黄、紫三本輪、白袖。

▼西山家悲願のダービー制覇 66年に先代の故西山正行氏が西山牧場を創業。04年に息子の茂行氏が後を継いだ。08年に北海道むかわ町の西山牧場を売却後も、オーナーブリーダーとして馬主業を継続している。最も悲願に近づいたのは98年。皐月賞馬セイウンスカイで臨み、3番人気4着に入った。同馬はその後に菊花賞を制し、2冠達成。これまで西山家関連所有馬は10頭出走し、19年ニシノデイジー5着、05年ニシノドコマデモ6着など、頂点まであと1歩のところまできている。セイウンハーデスでダービー制覇なら、創業から数えて56年での悲願達成となる。

▼オーナー別ダービー勝利数 歴代最多は4勝。金子真人氏(金子真人HD含む)が04年キングカメハメハ、05年ディープインパクト、16年マカヒキ、18年ワグネリアンで勝っている。昨年シャフリヤールで制したサンデーレーシングが4勝で並んだ(他に11年オルフェーヴル、12年ディープブリランテ、15年ドゥラメンテ)。次点は2勝で、00年以降では谷水雄三氏(02年タニノギムレット、07年ウオッカ)、前田晋二氏(13年キズナ、20年コントレイル)がいる。

◆この日のセイウンハーデス 開門直後のCウッドをゆったりと周回した。プリンシパルSから中2週での参戦となるが、翌週の土曜には坂路入りを再開するなどダメージは小さかった。22日には坂路で4ハロン56秒0-13秒0の時計を出しており、またがった山手助手も「前走の疲れもすぐ抜けて、硬さも出ずに順調」と評価していた。

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