<皐月賞>◇18日=中山◇G1◇芝2000メートル◇3歳◇出走16頭
3年連続で無敗の皐月賞馬が誕生した。2番人気エフフォーリア(牡、鹿戸)が好位の内から抜け出し、4戦4勝でクラシック1冠目を制した。勝ちタイムは2分0秒6。
横山武史騎手(22=鈴木伸)は11度目のJRA・G1騎乗で初勝利。19年サートゥルナーリア、20年コントレイルに続く史上19頭目の無敗制覇となった。
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有力馬でG1に臨む-。武史騎手にとって過去10回のG1と今回は違った。だが、尊敬する先輩であり、父である典弘騎手は軽く声をかけただけだった。「緊張するか?」。レース数日前のこと。武史騎手は「特にアドバイスはなかったですね」と話した。
父には実体験がある。武史と同じデビュー5年目で臨んだ90年オークス。豪快に差して、4歳牝馬特別を勝ったキョウエイタップのレースを見た父の富雄氏(故人)に「あんな後ろからでは無理だ」と言われた。富雄氏も元騎手。助言が頭に残った。その後、エリザベス女王杯でG1初制覇を成し遂げるが、オークスは早仕掛けで6着に敗れた。「アドバイスはいいことばかりじゃない」(典弘騎手)。JRA通算2846勝。父は自分の言葉の重さを知っている。
競馬を離れれば仲良し家族だ。夏は札幌に典弘、和生、武史がそろえば調整ルームで家族の時間を過ごす。時に宅配ピザを囲み、騎手仲間も交えて時間を忘れるほど談笑する。19年夏、典弘騎手は「外で飲み歩くより、みんなで馬の話をしている方が今はよっぽど楽しい」と語っていた。世間は成績で父子を語ることもある。武史騎手が「比べられるのは仕方ないことですから」と気にせず受け入れるのは、父子の堅い絆があるからだろう。
デビュー5年目の春でのG1制覇。武史騎手はタイトル奪取が父より半年ほど早いことはもちろん知っていた。「僕の方が早いんですよね? やったー」。22歳。無邪気に喜ぶ姿にトップ騎手から離れた、横山家の末っ子のかわいさを垣間見た。【松田直樹】