3冠馬ナリタブライアンなど多くのG1馬を管理した大久保正陽元調教師が21日、誤嚥(ごえん)性肺炎のため亡くなった。87歳だった。

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昔の栗東トレセン調教スタンドの2階、コースに向かって左から2ブロック目の前列が大久保正陽調教師の席だった。長身の背筋をピンと伸ばして座り、大きな双眼鏡を手に管理馬の調教を見守っていた。取材のタイミングは、その双眼鏡を置いた時。「そんな質問には答えられません」。それでもよく怒られた。厳しい先生だった。

ナリタブライアンにも厳しかった。3冠を狙った94年秋。夏負けが尾を引き、状態が上がらないのに、菊花賞トライアル・京都新聞杯を使った。「菊花賞を勝つなら、その前に1回は使わないといけない」。信念だった。スターマンの2着に敗れたが、使ったことで調子を上げたブライアンは本番で3冠を達成した。

同馬のラストランは芝1200メートルの高松宮杯(現高松宮記念)。前走の天皇賞・春から2000メートルの距離短縮に「それはもう、非難ごうごうだった」と振り返る。「なんでそんなレースに使うんだと。でも、私はそれまでも距離が長い、短いなんて考えたこともない。決めつけない。人間は勝手に、血統面でステイヤーだとか、短距離馬だとか言うんだけどね」。結果は4着でも、信念に基づいた起用だった。

ブライアンは引退後、わずか2世代の産駒しか残せずこの世を去った。のちに、早すぎましたねと取材した時には「情けなかった」と返ってきた。厳しい先生だなと改めて思った。

06年2月25日、大久保正陽厩舎にとって最後の勝利を挙げたのは、2世代しかいないブライアン産駒の1頭、ブライアンズレターだった。「あの勝利はうれしかったな。名前がいいね、本当にね・・・」。厳しさは深い愛情がゆえ。昭和、平成の大調教師だった。【中央競馬担当=伊嶋健一郎】

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