<オークス>◇2006年5月21日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳牝◇出走18頭

カワカミプリンセス(栗東・西浦)が4連勝を飾り、49年ぶり4頭目の無敗オークス馬に輝いた。47歳4カ月の本田優騎手はレース史上最高齢勝利騎手となり、テイエムオーシャンで3着に敗れた01年の悔しさを晴らした。フサイチパンドラが4分の3馬身差で2着に入り、2番手を追走したアサヒライジングは3着に粘った。

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525・9メートルの長い直線は、今度こそ勝利へとつながっていた。5年ぶりの樫の舞台。カワカミプリンセスの背で、本田騎手は思い出していた。「借りを返すような、そんな気持ちだった」。馬場の真ん中を駆け抜ける愛馬は、本田の気持ちをくみ取るように、坂を駆け上がって行った。内で粘るアサヒライジングをかわした時、勝利を手中に収めた。デビューからわずか85日。約半世紀ぶりに無敗のオークス馬が誕生した。

入線後、派手なガッツポーズはなかった。本田は喜びをかみしめるように下を向いた。5年前、1番人気テイエムオーシャンに騎乗して3着。「あの時は勝つ、勝つって言って負けたから」。自ら「下手に乗った。騎手が下手だったと書いてもらっていい」と言い放ち、唇をかみしめた時の悔しさは忘れなかった。

プリンセスは1コーナーに入るまで、行きたがるそぶりを見せた。折り合いを欠いた5年前が本田の頭をよぎる。差すイメージを持って臨んでいたが、無理に下げることはしなかった。馬のリズムと気持ちを優先し、中団やや前からの追走を決めた。大逃げを打ったヤマニンファビュルとの差は10馬身以上あいていた。「前の馬? 全然気にならなかったよ」。平均ペースで、長くいい脚を使う馬。「スイートピーSで本物だと確信した。少し早めに仕掛けても止まらない」。その言葉通り、3コーナーすぎに満を持してゴーサインを出すと、ジリジリと脚を伸ばし持ち味を発揮した。

本田は東京・小岩の出身だが、栗東トレセンに配属された。騎手候補生時代の破天荒な性格が理由だったが、西浦師はかわいがり、信頼を置いてきた。「日ごろからお世話になっている西浦先生の馬で勝てたから、少しは(グッと)くるものがあった」。そんな恩返しの勝利に、師は「オークスだけは、テイエムオーシャンが取れなかった。その分まで頑張ってくれた。だから、すごくうれしいよ」と笑みを浮かべ、本田で勝てたことの喜びに浸った。

西浦師は「これがこの馬の始まり。秋には、また成長した姿をお見せしたい。オーシャンが取れなかったエリザベス女王杯もあるしね」と言う。オーシャンに追い付き、そして追い越して欲しい。本田も師も、そう願っている。【和田美保】

◆カワカミプリンセス▽父 キングヘイロー▽母 タカノセクレタリー(シアトルスルー)▽牝3▽馬主 (有)三石川上牧場▽調教師 西浦勝一(栗東)▽生産者 三石川上牧場(北海道新ひだか町)▽戦績 4戦4勝▽総収得賞金 1億6289万円

(2006年5月22日付 日刊スポーツ紙面より)※表記は当時

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