<天皇賞・秋>◇1997年10月26日=東京◇G1◇芝2000メートル◇出走16頭

エアグルーヴ(牝5、栗東・伊藤雄)が1980年(昭55)のプリテイキャスト以来、17年ぶりの牝馬Vを達成した。直線ラストの200メートルは、史上初の秋の天皇賞連覇を狙う1番人気のバブルガムフェロー(牡5、藤沢)とのすさまじいたたき合いとなったが、バブルの猛追をクビ差退けた。武豊騎手(28)は天皇賞6勝目(春4勝、秋2勝)、G1レース24勝となり、バブルの手綱を取った岡部幸雄騎手(48)に並んだ。両馬とも、11月23日東京のジャパンC(G1、芝2400メートル)にコマを進める。

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残り400メートル。長く険しい坂の上りで、武豊の手綱がようやく動いた。前を行くバブルガムフェローとの差は2馬身。「さあ、ここからだ」。武豊のゴーサインで、エアグルーヴの重心がグッと沈み、四肢の回転が上がる。馬場の真ん中を通って、エアグルーヴの快進撃が始まった。

一完歩、一完歩、みるみるうちにその差が詰まる。「どこでかわすか。バブルを見ながら、タイミングを計っていた」。最も勢いがついたところで、一気に抜き去る。レース前から武が考えていた作戦通りだ。坂を上り切ったところでバブルをとらえた。

そこからゴールまでの200メートルは、2頭の壮絶な一騎打ちとなった。武豊と岡部幸雄。日本を代表するトップジョッキーが、力と力をぶつけ合った。16万人の大観衆が息をのんだ。エアグルーヴがクビ差、バブルを抑えてゴールにとび込んだ。「最後までよく我慢した」。秋の天皇賞が2000メートルになって初めて、牝馬が優勝した瞬間だった。

完ぺきな騎乗だった。絶好のスタートから中団につけると、道中は馬群の後ろに入れて折り合いに専念した。返し馬で大きくいれ込んだ姿は、どこにも感じられなかった。

レース後、武は観衆のユタカ・コールに大きく左手を上げてこたえた。「最強牝馬であることを、今日、はっきりと証明した」。自信にあふれるガッツポーズだった。「完勝ですね。力でねじ伏せた。本当に強かった」と満面に笑みを浮かべた。4歳時、ダービーに出したいと熱望した逸材。17年ぶりに牝馬が天皇賞Vを達成したことで、武の目が正しかったことを証明した。

レース前から「この馬は天皇賞に挑戦するのではない。出走するんです」と語っていた伊藤雄師も「坂の上がりで勝利を確信した。すごい能力を持っている」と褒めたたえた。天皇賞初制覇の伊藤雄師は、笑いが止まらなかった。

男馬を蹴散らし古馬の頂点に立ったエアグルーヴは、いよいよ世界に挑戦する。11月23日東京のジャパンカップ(G1、芝2400メートル)がその舞台だ。「馬自身が本当に充実している。楽しみです」と、天才、武豊は目を輝かせる。昨年、同じ牝馬のファビラスラフイン(シングスピールの鼻差2着)は無念の涙を流した。その敵を、最強馬エアグルーヴが撃つ。【鈴木良一】

◆エアグルーヴ▽父 トニービン▽母 ダイナカール(ノーザンテースト)▽牝・5歳▽馬主 (株)ラッキーフィールド▽調教師 伊藤雄二(栗東)▽生産者 社台ファーム(北海道早来町)▽戦績 10戦7勝▽総収得賞金 4億5282万円▽主な勝ちクラ 96年オークス(G1)チューリップ賞(G3)97年マーメイドS(G3)札幌記念(G2)

(1997年10月27日付 日刊スポーツ紙面より)

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