「泣いちゃいましたね。いろいろと思うところがあって・・・」。火曜朝、五十嵐雄祐騎手(37)はいつものポーカーフェースでそう振り返った。

日曜の東京ハイジャンプ。逃げるホッコーメヴィウスに外から上がってきた絶対王者オジュウチョウサンが襲いかかる・・・、競馬ファンのボルテージが最高潮に上がった直線、そのインを突いて伸びてきたのがラヴアンドポップ(牡8、岩戸)と五十嵐騎手だった。

「(最終コーナーで動かなかったのは)ホッコーメヴィウスの内を突くことを考えて乗ってました。ラヴアンドポップはすごい馬ですね。1年4カ月ぶりで勝つんですから」。パートナーをたたえた鞍上自身はアポロマーベリックとのコンビで制した中山グランドJ以来7年ぶりの重賞制覇。引き上げてきた東京競馬場の検量室前、馬上で涙が止まらなかった。

コロナ禍でなければ、ウイナーズサークルで大きな歓声を浴びていたに違いない。火曜朝の美浦トレセン、すれ違う厩舎関係者から何度も祝福の言葉をかけられていた五十嵐騎手は「中山もまったく問題ないと思います」と前を向いた。目指すは13年(アポロマーベリック)以来となる8年ぶりの中山大障害(J・G1、芝4100メートル、12月25日)制覇だ。

今週末は新潟で3鞍に騎乗予定。土曜1R(未勝利、芝2850メートル)のクリップスプリンガは稽古で感触をつかんでいる。「追い切りでは最後に伸びきれないところがありますが、力はあって、上位にきている馬なので」と期待する。土曜4Rの障害オープン(芝3250メートル)は同じく岩戸厩舎のキャプテンペリー。「前回(東京ジャンプS)は飛越が合わなくて競馬にならなかった。オープンは勝っている馬ですし、スムーズに運べれば」と巻き返しを狙う。

日曜4R(未勝利、芝2850メートル)は初障害のハンター。「3歳馬なのでまだこれからですけど、飛越のセンスを感じているので」と先々を見据えている。管理する藤原辰師は04年の中山グランドJ、中山大障害を制した名馬ブランディスを育て上げた人であり、07年東京オータムジャンプのベストグランチャは五十嵐騎手の重賞初制覇となった馬。五十嵐騎手は師に誘われ、ジャンプの本場英国へ障害競走(チェルトナム・フェスティバル)を見に行ったこともある。

「先生(藤原辰師)にはフリーになってすぐに乗せていただいて、G1で2着になったこと(07年中山グランドJリワードプレザン。1着はカラジ)もありましたし、いつも気にかけてもらっています。『どこの厩舎の馬に乗っていてもお前のレースは必ず見ているからな』って言ってくださる。先生の求めるレベルに自分は達していないけど、そうなるように、と思って乗っています」。

JRA賞に4度(09、10、15、18年)輝いた名手は家族の支え、周囲のホースマンの支えを受けながら、一鞍一鞍に熱い気持ちでまたがっている。

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