<秋華賞>◇2002年10月13日=京都◇G1◇芝2000メートル◇3歳牝◇出走18頭

競馬界のニュースターが誕生した。単勝1・1倍、圧倒的支持を集めた武豊騎手(33)のファインモーション(栗東・伊藤雄)が、無傷の5連勝でG1制覇を達成した。2着サクラヴィクトリアに3馬身半。1発のムチも必要としない圧勝に、だれもが驚かされた。伊藤雄二師(65)は牝馬3冠制覇を達成。限りない夢を乗せ、怪物の快進撃は続く。

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直線328メートル、武豊は風を楽しんだ。「乗っていて本当に気持ちが良かった」。後続の足音はあっという間に聞こえなくなった。「行ける」。4コーナーで勝利は確信した。2度3度とハミをかけ直すだけで、もう何もすることはなかった。大きな声援を受けて栄光のゴールへ。ファインモーション、無傷の5連勝でG1制覇。日本の競馬に新しいスターが誕生した瞬間だった。

すべてが規格外だった。3~4コーナー、必死で追われるライバルを横目に、馬なりのまま上がって行った。エンジンが違った。直線、ただ1発のムチも必要なく突き抜けた。爆発力と瞬発力が違った。「気が付けば後ろが離れて行った。僕は何もしていない」。武も強さにあきれた。

ごちゃつく内を避け、終始、外々を回る安全策を取りながら2着に3馬身半をつけた。スタートからゴールまで、危なげないシーンは一つもない。スタンドから見詰める伊藤雄師も最後まで冷静だった。「こんな馬ばかりだったら、調教師も楽できる」。勝つのは当然だと思っていた。「これで20馬身半差やね」。デビュー以来2着につけた着差をすぐに計算できるほど余裕があった。

伊藤雄師はこれで牝馬3冠制覇を達成した。マックスビューティ(62年=2着)でもエアグルーヴ(96年=10着)でも越えられなかった壁を、ファインモーションがあっさりと乗り越えた。エアグルーヴが泣かされたパドックでのフラッシュにも動じなかった。「この馬の神経はず太い」(伊藤雄師)。あらためて大物ぶりに恐れ入った。

ファンもスターホースを待っていた。前売り終了時点で単勝1・0倍。最終的には1・1倍に落ち着いが、支持率はグレード制導入の84年以降で最高の72%。「さすがにちょっと人気になりすぎるかな」と武もびっくりの数字。人気面でも規格外だった。

予定通り、次走はエリザベス女王杯(G1、芝2200メートル、11月10日=京都)を目指す。「何日か様子を見て、無事なら女王杯へ行きたい。年内はこれが最後」。古馬の壁もファインなら高くない。さらに驚く強さを見せてくれるに違いない。

うわさされる来春の海外遠征に、伊藤雄師は「海外はデメリットが多い。賞金の高い日本で稼がせて下さい」と消極的。が、この日の走りにだれもが夢を抱いたはずだ。武豊は言う。「フランスでもこんな牝馬はいないよ。僕も牝馬ではこんな馬は初めて。秋華賞で勝てたことより、こんな強い馬に巡り合えたことがうれしい」。大きな夢を乗せてファインモーションの第2章が始まる。【鈴木良一】

◆ファインモーション▽父デインヒル 母ココツト(トロイ)▽牝3▽馬主 伏木田達男氏▽調教師 伊藤雄二(栗東)▽生産地 愛国▽生産者 バロンズタウン・スタッド・アンド・オルペンデール▽戦績 5戦5勝 ▽総収得賞金 1億7433万4000円▽主な勝ちクラ 02年秋華賞(G1)、ローズS(G2)

(2002年10月14日付 日刊スポーツ紙面より)

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