JRAは6日、JRAの調教師や調教助手らが新型コロナウイルス対策の国の持続化給付金を不正受給した疑惑がある問題についての調査結果報告を中山競馬場、阪神競馬場で行った。

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持続化給付金を受給した厩舎関係者は165人(返還済み49人)。吉田正義常務理事は「今回の問題につきましては、持続化給付金の趣旨、目的を逸脱した申請。あってはならないこと。実態把握が完了したので、今後関係した方々への対応、再発防止策をやっていきたい」とコメント。昨年11月5日に栗東の、同21日に美浦の調教師会が調教師を通じて厩舎スタッフへ注意喚起を行ったが、その後も受給申請をした厩舎関係者7人については、「大変残念」と話した。

記者会見では昨秋以降の経緯が説明され、質疑応答も行われた。一問一答は以下の通り。

-栗東トレセンの複数調教師が警察の事情聴取を受けているとの声がある。事実か

吉田常務理事 捜査に関係することなので、申し上げられない。ただ、警察から協力要請があったらしっかり対応したい。

-処分はかなり先になると思われるが、悪質か酌量の余地があるか、判断はどうなるか

吉田常務理事 1回目の調査は調査書提出、2回目の調査は申請、受給した人に対する聞き取り調査を行っている。返還手続き中の方が114人。その方たちがしっかり返すのか、というのがひとつある。(昨年11月の)注意喚起がひとつの境目だと思う。注意喚起があったにも関わらず、申請したという人についてはさらに事情を伺って考えていきたい。

-昨年10月9日にJRAは事態を把握。JRAは報道が出る2月17日まで具体的にどのような行動をとったか

吉田常務理事 まず顧問弁護士、顧問税理士に(申請サポートの)ペーパーを持ち込んで、どういう対応をした方がいいのかという相談をした。それに基づいて、10月23日に(収入源の影響は)極めて限定的であるという考えを調教師会と騎手クラブに提示。JRAはその間、情報収集に努めていた。調教師会から調教師へ、調教師から厩舎従業員への注意喚起で、どの程度効果があったかを注視していた。

-報告書の時系列を見ると、2月17日の報道がなければ、調査は開始しなかったとも受け取られかねない

吉田常務理事 その辺のご指摘は反省しないといけないなということは、正直ある。農水大臣からも衆議院予算委員会の中で「しっかりと調査するように」とのご指示をいただいており、まさかのタイミングだった。

-競馬開催を止めて調査をすべきとの声はあったか

吉田常務理事 この件が公正確保に関わる問題かということで、開催を止めてまで調査を行うことではないと考えている。

-大阪の男性税理士が申請をサポートをしたとされている。他に関わっている人間はいるか

越智直弘総合企画部経営企画室長 聞き取り調査の結果では165件のうち、130件については税理士に相談したと報告を受けている。15の法人、または個人の税理士の名前が調査で判明している。

-大阪の男性税理士へ聞き取り調査を行う予定は

吉田常務理事 JRAとしても事情を伺うとか、そういうことをやろうという段階ではある。いつできるかというのは、これから。

-大阪の男性税理士から預かった申請サポートに関する書類を、トレセン内で厩舎関係者に配ったスポニチの記者がいる

吉田常務理事 メディアの方ですので、JRAが直接何かをするというのはなかなか難しいかと。スポニチさんのおわびの新聞記事、HPを拝見していますが、その後スポニチさんとどうだ、というのには至っていない。今後どうするか、調査も終わったばかりなので、そういったことも踏まえていろいろと考えたい。

-中小企業庁も何らかの調査を行うのか

吉田常務理事 中小企業庁から農水省に対して、JRAからの報告内容を共有してほしいという依頼があったと聞いている。農水省からも中小企業庁の調査には協力するように、と言われている。

-調教師、騎手に関してはJRAが免許を交付。調教助手などは各調教師が雇用。どのような形で白黒つけていくのか

吉田常務理事 厩舎従業員については労組の就業規則がある。まずは就業規則に基づいて、というのがあるかと。調教師と騎手はそれぞれ調教師会、騎手クラブの会則があり、調教師も騎手もその会員。その会則の中でどういう判断をするのかが一義的にあるのではないか。JRAは競馬施行規程での処分ということにならざるを得ない。(競馬施行規程は)競馬の公正確保上の運用が一番大きなポイント。それぞれの団体での就業規則、会則に基づくものをよく見ながら個別に調査をしないと。今の時点で処分できるかは言えない。

-聞き取り調査の中で受給者の申請理由はどのようなものがあったか

吉田常務理事 進上金が減った。副業収入があるので、申請した。あるいは家族で会社を持っているという方がいるので、法人名義で申請したということが中心。副業収入で申請、受給したといってもやはり、今回の中央競馬に対する信頼を社会的に影響を出してしまったということで、副業で申請をした方でも、2人を残して返還済みだったり、返還予定です。

-ここまで申請が拡大したのは

吉田常務理事 去年5、6月が日本全国の風潮をさかのぼって考えてみると、持続化給付金を申請してくださいという制度の話があった流れで税理士の誘いがあって、言葉は悪いですが、軽い気持ちで申請して広がったのかな、と。

-申請者の実名は公表するか

吉田常務理事 個人情報、プライバシーに関わることですので、現時点で実名公表は考えておりません。

-騎手クラブ、調教師会等で処分が出たら、名前が出る可能性はあるか

吉田常務理事 (各団体のことなので)私からは何とも言えない。

-返還済み、返還予定の人の手続き時期は

越智経営企画室長 165件の受給のうち、2件は返還の意思が今のところないと。163件が返還済みか、返還手続き中。その163件でJRAが注意喚起する以前にすでに返還していたのが1件、注意喚起を受けてから2月(17日)の報道が出るまでに86件。一連の報道が出た以降の返還予定者は76件となっている。

-一連の報道で報じられている大阪の男性税理士が関わった件数は

越智経営企画室長 聞き取った範囲の中では税理士を通して申請した130件のうち、104件。

-返還をすれば、不問なのか。個々のケースでは処分を検討するのか

吉田常務理事 (返還予定の114人が)仮にいつになっても返還としないとなれば、個別事情をさらに調査していろいろ考えたい。何回も申しますが、前提となるのは就業規則であり、調教師会、騎手クラブの会則。これを前置主義的に考えたい。

-返還手続きをしない2人のうちの1人ついて。競馬以外の副業収入は適正だったのか

吉田常務理事 飲食業だと聞いています。

-今回の件は競馬施行規程上の公正確保に関わる問題と考えるか

吉田常務理事 すごく難しいですね。個別事情を1人1人精査した上でないと、今の時点では(判断が)難しい。

-馬主、調教師は一度免許を得ると競馬の社会的評判に打撃を与えた場合に処分を下されることは難しい。制度上の補完についてはどう考えるか

吉田常務理事 競馬施行規程は、公正8確保の観点からの制裁という仕組みになる。厩舎従業員の方々が私権に基づいて申請をしていることで、公正確保が言い難いところでJRAがどこまで関与できるかは難しいところ。公正確保が揺るがしかねないということであれば、施行規程においてまた考える。

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