<ホッカイドウ競馬 冬のお仕事:調教師編>

ホッカイドウ競馬は全国でも珍しい約5カ月の休催期間がある。秋のシーズン終了から翌年4月中旬の新年度開幕まで、関係者はオフも大忙しだ。連載「ホッカイドウ競馬 冬のお仕事」では、厩舎スタッフの奮闘ぶりを3回にわたって紹介する。

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事業主でもある調教師の仕事は多岐にわたる。雪が降った日の角川秀樹師(60)の朝は、除雪作業から始まる。車も往来する主要な馬道は管理事務所によって整備されるが、狭い厩舎エリアまでは入れない。「溶けて凍ってしまうと凸凹になって、馬も人も危ないからね」。小型のタイヤシャベルに乗り込んだ角川師は、バケットを自分の手足のように操り、厩舎周辺に積もった雪をミリ単位でならした。

この時期の若駒は靴のスパイクのような役目を果たす、蹄鉄(ていてつ)を4肢とも装着するケースは少ない。「ほとんど『はだし』の状態。少しでもクッションの効いた状態にしないとひづめや関節を痛める」という。丁寧な除雪は人というより馬のためだが「昔は乗り慣らしで何度も落とされ(自身の骨で)折れていないのは首くらい」と笑ってみせた。

冬仕事は、実は夏から始まる。新年度デビューを目指す2歳馬は早ければ、夏から始まる主要な1歳馬のセリで見いだされる。その若馬たちが競馬場に移動するのは11月上旬から。田中淳司師(47)は「冬毛が伸びていて『あれっ、こんな馬だったかな』と思う時がある。逆に良くなっていて、思っていた以上に動く馬もいる。この時期の若馬は、良くも悪くも大きく変化するので奥が深いです」という。

まだ馬名が決まっていない若馬は、血統証で確認した父、母名をスタッフ共有のホワイトボードに書き写し、血統からの推測と個々の成長度合いや性格などに合わせた調教メニューを熟考。田中師も自らまたがって陣頭指揮を執る。昨春は落馬によるケガで入退院を繰り返したが、2歳牝馬の統一重賞エーデルワイス賞馬(コーラルツッキー)を送り出した。

ホッカイドウ競馬は昨年度、25年ぶりに発売総額300億円超のV字回復を見せた。躍進の背景には、厳冬期でも馬を支えるホースマンの情熱と底力がある。【奥村晶治】(おわり)

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