初夏の函館、日によっては肌寒く、ときには暑い。空港へ向かって下りていく飛行機が上空を飛んでいき、長々と旋回していることもある。

今年は6月末から7月初旬の2週間、函館で取材することができた。リスグラシューが圧勝した宝塚記念の直後。そうなると、ウインファビラス(牝6、畠山)を担当する野木厩務員の話が聞きたかった。ウインファビラスを担当し、その全弟ウインブライト(牡5、同)も担当している。宝塚記念をリスグラシューが勝ったことで、クイーンエリザベス2世Cの勝利はそれまで以上に大きな輝きを放つことになったからだ。

「うれしかったですけど、驚いたのは一緒に見ていた先生(畠山吉宏師)がすごい喜んでいて・・・、えって思ったんですけど、みんなで抱き合ったんですよ」。

野木厩務員が函館から美浦へ帰り、8月にはウインブライトも秋を目指し、美浦トレセンで坂路調教を開始した。暑さの中、懸命の調整は続いたが、なかなか状態は上がらない。秋初戦のオールカマーはまさかの9着。続く天皇賞・秋も大外枠が響いたとはいえ、8着に敗れた。

「アーモンドアイが来なくてよかったと思っていませんか?」。香港国際競走ウイーク、金曜朝の共同会見でウインブライト陣営、会見に出席した畠山師には失礼な質問、単刀直入の質問が飛んだ。

畠山師は美浦トレセンでも競馬場でも優しい人だ。いつものように少し苦笑いを浮かべながら、謙遜しながら、「向こう(アーモンドアイ陣営)はこちらのことを何とも思っていないかもしれませんけど、こちらも向こうのことをなんとも思っていません。ただ、香港カップを勝ちたいだけです」と答えた。

調教が行われている馬場の脇では松岡騎手が地元香港メディアからインタビュー攻めを受けた。「クイーンエリザベス2世Cは順当勝ち。春と遜色のない状態になってきたし、今回も負けるわけがない」と鞍上は胸を張った。

12月8日のシャティン競馬場、香港国際競走の最終レース、香港カップはコースのすぐ横で野木厩務員、木場迫助手が見ていた。2人から少し引いた位置に畠山師がいた。絶好の手応えでウインブライトが直線先頭に立つ。「松岡」「ブライト」。日本から駆けつけたファンの絶叫が聞こえる。ゴール前、外ライズハイを競り落としたところで、内からマジックワンドが迫る。勝ったか、どうだ、勝った、勝ったぞ、ゴール前で見ていた厩務員、助手、そして、畠山師の3人が抱き合った。「やったー」「よっしゃー」。いつもは控えめな畠山師のガッツポーズと絶叫が喜びの大きさを物語った。

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