<“福永番”藤本真育記者の取材ノート(3)>

ダービー3勝、JRA通算2613勝の名手・福永祐一騎手(45)が8日、2023年度のJRA新規調教師試験に合格した。これにより、来年2月末で騎手を引退することになる。“福永番”として取材にあたってきた日刊スポーツ・藤本真育(まいく)記者が取材ノート(3)を振り返る。

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かつてサッカー少年だった福永騎手は、自分のことを「ボランチ」タイプだと言ったことがある。

「ゴールを決めるのが騎手やからね。ジョッキーはフォワードみたいなものだけど、俺はそういうタイプじゃない。それよりも戦略を練って、それが思い通りに運んで勝てたら満足やねん」

競馬の前は入念に馬場をチェック。レース前日には新聞を広げ、競馬記者の予想のごとく相手になる馬を絞る。とにかく競馬に向かう前のプロセスを大切にしていた。

「何が楽しいと思うかは人それぞれだけど、俺は展開や馬場、相手関係なんかを考えている時が楽しい。すごく時間をかけて考察するっていうのが性にあってるんよね。他の人が気付いていない理屈を一番初めに知りたいと思うから」

自分がここなら勝てると思ったポジションを取り、プラン通りに勝利する。その達成感がジョッキーとしてのやりがいだった。それを体現したのがワグネリアンで勝った18年ダービーであり、ジオグリフで勝った今年の皐月賞。あのガッツポーズは達成感から出たものだった。

信長の野望というゲームがある。ゲーム好きだという福永騎手のプレイングを聞いた時に“らしさ”を感じた。

「3分の1くらい領土を支配したら敵無しになる。そうなったらクリアせずに、また初めからやるねん。弱いところからどうやったら成果が出るかを考えるのが好きなんよ。他の人がつかんでいないコツをいかにつかむか。そういう作業をずっとやってる感じ(笑い)。競馬も一緒やで」

デビュー前の未完成の馬をこれまで、そしてこれから経験するノウハウを駆使して育て上げる。最高の仕上げをほどこし、ジョッキーをアシストする。“ボランチ”調教師・福永祐一はそうやって、トップトレーナー道を歩み始めるのだろう。【藤本真育】

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