<世界へ挑む 侍ホースマン(1)>

凱旋門賞(G1、芝2400メートル、10月2日=パリロンシャン)に出走する日本馬4頭の調教師、騎手を取り上げる連載、「世界へ挑む 侍ホースマン」が今日27日からスタートする。第1回は、世界ランキング6位タイのG1・3勝馬タイトルホルダー(牡4、栗田)を管理する栗田徹調教師(44)。自身初の海外遠征で世界の頂点に挑む。

夢物語。栗田師にとっての凱旋門賞挑戦はこの3文字で形容できるかもしれない。「夢のまた夢だと思っていた。今でもちょっとそう思いますよ。海外といえば、ダビスタの中でブリーダーズCに挑戦するとかだったから」。

10年12月に調教師試験に合格し、翌11年3月には開業を迎えた。技術調教師としての準備期間は短く、振り返れば助手時代に海外研修に出たこともなかった。外国との接点はセリで米国などに行った際に、調教を見学した程度。スポーツの名門校、市船橋で馬術(現在は廃部)に出合った青年が世界に打って出る-。そんな自分を想像する間もなく、突っ走ってきた。

21年10月24日。トリコロールの国を意識した瞬間が初めてやってきた。タイトルホルダーの菊花賞5馬身差V。緩急を巧みに操り、春2冠の無念を晴らした。「祝勝会の時に、長距離適性もあるし行けたらいいねというのをオーナーと話していた」。当時はまだG1・1勝馬。海外遠征となると、個人馬主には大きな経済的負担を強いることになる。「あのディープインパクトでも負けたのが凱旋門賞」。雲上のレースを夢見た片りんは、古馬になって渡仏に値するだけの馬だという確信に変わった。

天皇賞・春の7馬身差V、そして宝塚記念のレコード勝利をへて、正式に参戦が決定した。「現実になるとは正直、思っていなかった」。偽らざる本音だ。軽々とイメージを超えてくる姿が頼もしかった。

緊張、不安も包み隠さず、口に出す。「まだ日本馬が勝っていないのでね。いろんな方に話を伺ったけど、でも、ネガティブにならないようにしたい。ノリさん(横山典騎手=14年ゴールドシップに騎乗14着)には、『やりすぎないくらいでちょうどいいんじゃないか』と言ってもらったり。日本のように時計が目安ではないし、より馬をしっかり見極めてあげないと」と、愛馬に寄り添った仕上げを施すつもりだ。

「挑戦する以上はそういう(勝つ)つもりでいるけど、他に馬がいるので安易には言えない。でも、この馬のパフォーマンスをすれば良い結果はついてくる」

信じて、送り出す。未到の頂へ、万全の準備をもって。【松田直樹】

◆栗田徹(くりた・とおる)1978年(昭53)3月16日、千葉県生まれ。日本獣医畜産大(現日本獣医生命科学大)卒業後、ノーザンファームに就職。03年4月にトレセン入り。萩原厩舎、義父の栗田博憲厩舎をへて、10年12月に調教師試験合格。翌11年3月に開業。26日現在、JRA通算2833戦226勝(うちG1・3勝を含む重賞7勝)。

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