馬と競馬を愛したエリザベス女王は、たくさんの競走馬と繁殖牝馬を所有しました。

日本のニュースショーなどでは面白おかしく「競馬で11億円も稼いだ」と報じていましたが、在位期間を超える73年におよぶ馬主生活で馬に費やされた金額は、少なくともこれの数倍になるはずです。

女王はこの時期、血統アドバイザーのJ・ウォーレン氏と翌年の配合計画を練ることを楽しみにしていたと言います。

その繁殖牝馬の多くはドバイのモハメド殿下や、パキスタンのアガ・カーン殿下など世界の大馬主から贈られたものや、繁殖牝馬の交換によって得たもので、馬を通じて世界の名家、王族との交流が行われていました。

女王は07年に米ケンタッキー州で行われたケンタッキーダービーに臨席されましたが、その際に宿泊されたのは以前から馬を通じた交流があり、当時はエーピーインディなどを繋養(けいよう)していたレーンズエンドファームの場主W・ファリッシュ氏のゲストハウスでした。

ファリッシュ氏は、その後、ブッシュ大統領によって01年に駐英米国大使に任命され、英国駐在中はしばしばバッキンガム宮殿に招かれたと言います。

女王とファリッシュ氏の交流は直近まで続き、亡くなる2日前には女王自ら電話をかけ、米国で“新怪物”と騒がれているフライトライン(レーンズエンドが調教、育成)について情報交換したと伝えられています。

アスコット競馬場など王室が所有する競馬場や、ニューマーケットのナショナルスタッドなどはチャールズ新国王が引き継ぐことになっています。ところがエリザベス女王が個人所有し、今年のロイヤルアスコット開催にも出走したリーチフォーザムーンなどのバリバリの現役馬、繁殖牝馬などの馬資産はロイヤルファミリーの中でも馬好きで、隠れた競馬ファンでもあったカミラ王妃によって継承される可能性が高く、王室と競馬をつなぐ大切な役割を果たしていくものとみられています。【ターフライター・奥野庸介】(ニッカンスポーツ・コム/極ウマコラム「ワールドホースレーシング」)

  1. お得な新入会プラン登場! 競馬情報サイト【極ウマ・プレミアム】
  2. 競馬予想に【ニッカンAI予想アプリ】