<宝塚記念>◇2013年6月23日=阪神◇G1◇芝2200メートル◇3歳上◇出走11頭

人馬の絆でゴールドシップ(牡4、須貝)が頂点に立った。覚悟の先行策で4歳3強対決を制してG1・4勝目。昨年有馬記念に続くグランプリ制覇で、牡牝含めての世代NO・1を証明した。1週前から栗東に駆けつけて相棒や厩舎と結束を深めた内田博幸騎手(42)が執念を実らせた。

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信じていた。相棒を。だから腹をくくった。ゲートが開いた瞬間、内田が歯を食いしばる。丸太のような両腕にありったけの力を込め、ゴールドシップの首を押す。何度も、何度も。発馬から約200メートル、手綱をしごき続けて4番手につけた。馬場や展開も読み切った、覚悟の先行策。引っ掛かることはない。性格を知り抜いているからこそ、できた芸当だ。

内田 スタートを出る雰囲気だったので、強引でもいいと思った。折り合いはいくらでもつくんで。

4コーナーで3強の馬体が並ぶ。内ジェンティルドンナ、外フェノーメノ。さあ、決戦だ。直線入り口で白い顔が前へ出る。左ムチが飛ぶ。追えば追うだけ伸びる。左右の2強をねじ伏せる。残り150メートルで早々と先頭へ。後続の脚音が遠ざかる。3馬身半差の圧勝だ。ほおを紅潮させた内田はこみ上げる思いをせき止めるように、静かに、しかし力強く右手でガッツポーズを作った。

内田 一生懸命にやってきた調教師さん、助手さん、厩務員さんやもろもろが浮かんできた。強いゴールドシップが帰ってきたことをうれしく思う。

絆でつかんだ頂点だ。天皇賞・春で5着に敗れた後、自ら申し出た栗東での調教。先週から計5日間、追い切り日以外もパートナーの背中にまたがった。ウオーミングアップから上がり運動まで。人馬の結束を深めた。「走りたい気持ち」を尊重して、最終追い切りではあえてムチなしで仕上げた。

馬だけでなく、人とのつながりも強めた。調整メニューについてはスタッフと意見交換を重ねた。厩舎では自分が騎乗しない馬の調教もつけた。大仲部屋で談笑する姿を横目に、今浪厩務員は「もう何年もウチにいるみたい」と目を細めていた。付け焼き刃の気配りじゃない。昨年末、厩舎スタッフのもとには箱入りのワインが届けられたという。ラベルには「ゴールドシップ」の馬名。感謝を形にした。1人の力だけでは勝てない。みんなで美酒を味わいたかった。

内田 馬や人はロボットじゃない。生きてるんだとあらためて感じた。

“船”に乗る誰もが心を通わせ、世代最強を証明した。今後は現時点で白紙だが、秋も王道路線を歩む見通し。オルフェーヴルとの対戦も待たれる。前途洋々。雨上がりの空の下で、新たな夢へ向かって漕ぎ出した。【太田尚樹】

◆ゴールドシップ ▽父 ステイゴールド▽母 ポイントフラッグ(メジロマックイーン)▽牡4▽馬主 小林英一▽調教師 須貝尚介(栗東)▽生産者 出口牧場(北海道日高町)▽戦績 13戦9勝▽総収得賞金 8億4798万5000円)▽主な勝ち鞍 12年共同通信杯(G3)、皐月賞(G1)、神戸新聞杯(G2)、菊花賞(G1)、有馬記念(G1)、13年阪神大賞典(G2)▽馬名の由来 黄金の船。父名より連想

(2013年6月24日付 日刊スポーツ紙面より)※表記は当時

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