<オークス>◇1996年5月26日=東京◇G1◇芝2400メートル◇4歳牝◇出走18頭

実力NO・1のエアグルーヴ(牝4、栗東・伊藤雄)が好位差しの横綱相撲で女王の座に就いた。武豊騎手(27)は昨年のオークスをダンスパートナーで勝って以来のG1制覇で、オークスは2年連続3度目の制覇。勢いに乗り、今週はクラシック戦唯一未制覇のダービーに、有力馬のダンスインザダークでチャレンジする。そして秋にはエアグルーヴでの凱旋門賞挑戦と、一気に夢が広がった。1馬身半差2着に桜花賞馬のファイトガリバーが入った。

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「怖いのはアクシデントだけでした」。エアグルーヴを勝利に導いた殊勲の武騎手が開口一番、ホッとしたような表情で話した。その最も恐れていたハプニングが、直線に向いてラストスパートをかけた時に起きた。場内の16万人の観衆の悲鳴が、どよめきがこだまする。危機一髪だったのは400メートル地点。ノースサンデーが外に急斜行した。そのあおりを受けて、外めを走っていたエアグルーヴの進路がカットされた。武は素早く、馬体を右へ2メートルほど寄せて難を逃れた。あとは栄光のゴールまで一直線。外から桜花賞馬ファイトガリバーが猛追してきたが、これを1馬身半退け、桜花賞を発熱で自重したうっ憤を晴らした。

ゴールした瞬間、右手のステッキを高々と上げて喜びを素直にアピール。レース後は、ただ一頭だけが許される芝コースでのウイニングラン。左手を2度3度大きく上げて場内の声援にこたえた。

表彰式を終えて引き揚げてきた武は「4角までうまくレースが運べたし、馬の力を信じていましたから。自分からハミを取って行ったし、本当に強い馬ですね」と強い愛馬を絶賛した。昨年のダンスパートナーに続く2年連続のオークス制覇(通算3勝目)。そして、G1レースでの連敗も13でピリオドを打った。武は「ちょうど1年ぶりのG1勝ちですね。僕はそれほど意識していなかったけど、皆さんにはいろいろと書かれましたからね。ダービー前にストップできて良かった」と、ユタカスマイルを見せた。「騎手になった時からの夢」と言うダービーは、ダンスインザダークとのコンビで挑む。「あの馬も発熱で皐月賞に出れませんでしたからね。来週もこうなれば(勝てば)いいですね」と意欲を見せる。

伊藤雄二師(59)は「スタートする瞬間にゲートをもぐろうとしたのにはヒヤッとさせられた。最後の直線では(接触しなかったので)ダメージがなかったし、うまく勝ってくれました」と話した。

桜花賞直前に発熱でリタイアし、3カ月ぶりの実戦になったが、伊藤雄師は「英2000ギニーを勝った馬(マークオブエスティーム)が10カ月ぶりでしたからね。狙っていたレースに仕上げるのが調教師の役目ですよ」と、自信を持っての出走だった。さらに、「これからアッということも考えている」と凱旋門賞挑戦へ意欲を語った。エアグルーヴの秋夢はデッカク海外制覇だ。世界を見つめるのは武も同じ。「エアグルーヴはまだまだ強くなる馬ですよ。ひと夏を越してもっと体に実が入ってくれれば、世界でも楽しめそうです」と力強く言い切った。【多田薫】

◆エアグルーヴ ▽父 トニービン▽母 ダイナカール(ノーザンテースト)▽牝4歳▽馬主 吉原毎文氏▽調教師 栗東・伊藤雄二師▽生産者 社台ファーム(北海道早来町)▽戦績 6戦4勝▽総収得賞金 2億720万4000円▽主な勝ちクラ 96年チューリップ賞(G3)

(1996年5月27日付 日刊スポーツ紙面より)※表記は当時

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