先週日曜の高松宮記念。ナランフレグ&丸田騎手のG1制覇は感動的で、競馬場内はもちろん、SNS上でも祝福の嵐だった。
一方で、14着に敗れたダイアトニックにも注目が集まった。返し馬で暴れたダイアトニック。その要因は観客が出した大声ではないかという推察のもと、「ダイアトニックに叫んだ人は論外」、「ファンの粗暴な行為に憤りを感じる」などと批判の的となった。
しかし、映像をスローモーションで見ると、ダイアトニックがよれた後に声が聞こえているようにも見えた。
そこで、真相を確認すべく岩田康騎手に電話をすると意外な事実が明らかになった。「ワーッって言ったのは俺やねん」。映像で聞こえた声は、観客ではなく岩田康騎手本人が発していたものだった。
では、いったいなぜ声をあげたのか。「カメラマンやねん。前に出てきたカメラマンに反応してダイアトニックがよれて、それに驚いた俺が出した声」と説明した。それにしても、落馬寸前の状態から立て直し、何事もなかったかのように走り去ったのはさすがの一言だ。
本件に戻ると、故意に大声を出したファンはいなかったということになる。ただ、馬は繊細な生き物。取材者も観客も注意を払う必要があることに変わりはない。
悲しかったのは、今回の件で“犯人捜し”を求める声が散見され、争いの火種になっていたこと。春G1で競馬はますます盛り上がる時期。私自身も気をつけなければならないが、思い込みで誰かを非難するのはやめて、心から競馬を楽しんでもらいたいと思う。【三嶋毬里衣】