<ジャパンC>◇28日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳上◇出走18頭

これが最後の“2人旅”。ありがとう、コントレイル。無敗の3冠馬コントレイル(牡4、矢作)が、ラストランを勝利で締めくくった。

福永祐一騎手(44)に導かれ、府中のターフを堂々と突き抜けた。昨年の菊花賞以来となる有終のG1・5勝目。今後は、すでにこの世を去った父ディープインパクトの後継種牡馬として、第2の馬生が始まる。

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万感の思いが一気にあふれ出た。福永コントレイルは馬場の真ん中を豪快に突き抜けた。歓声が遠くなった向正面で天を仰いだ後、ゴーグルを外し、こらえ切れない涙をぬぐった。

「本当に立派だった。立派に走ってくれた。感動しました。もうこんな馬には出会えないんじゃないかって思います」

デビューから苦楽をともにしてきた相棒の頑張りに涙が止まらなかった。「今日で終わりだったから。いろいろとこみ上げるものがある」。ともに過ごした2年2カ月。「夢のような時間」を改めてかみしめた。

最後にして最高のパフォーマンスだった。課題のゲートをクリア。スムーズに中団から運ぶ。手綱から感じる確かな手応え。「これなら大丈夫」。直線に向いて外に進路を確保すると、満を持して追い出した。

左ステッキを1発。エンジンに点火した。これが本当のコントレイルだ。これで最後の“2人旅”。これまでの思い出を振り返るかのように、府中のターフを堂々と駆け抜けた。

常に自分との闘いだった。「相手じゃない。コントレイルが本来の走りをできれば」。レースのたびに口癖のように話していた。しかし、天皇賞・秋は2着。「返し馬とかは、もう最高やった。負けるはずがないと思っていた」。相棒への信頼が揺るぎかねない敗戦。帰路も思いを巡らせた。

「ゲート以外は完璧やねんけどな。普段はほんまにおとなしい馬やのに。なんでやろう。明確にはならんのやけど、何かしらのメッセージを発しているのかなとか、いろいろ考えた」

課題はゲートだけ。どうすれば克服できるか、頭を悩ませた。

ずっとコンタクトをとり続けてきた。レース1週前のゲート練習をはじめ、昨年のJC週は全休日にも栗東でまたがった。ホープフルSの放牧時には、鳥取県の大山ヒルズまで出向いたこともある。「自分にとって中心の馬だから」。前走後もコンタクトを取れる時は取り、改めて相棒の理解に努めた。「ここまで深く1頭の馬にかかわれることはない」。ラストランの勝利の味は、今までとは違う格別なものだった。

無敗の3冠を含むG1・5勝。記憶にも記録にも残る名馬が、鞍上の思いに応えるように全力で走りきった。そして、父ディープインパクトから受け継いだ“翼”をたたむ時。

ありがとう、コントレイル。

令和の時代を象徴する、コロナ禍に誕生した無敗の3冠馬はターフに別れを告げた。【藤本真育】

◆コントレイル ▽父 ディープインパクト▽母 ロードクロサイト(アンブライドルズソング)▽牡4▽馬主 前田晋二▽調教師 矢作芳人(栗東)▽生産者 株式会社ノースヒルズ(北海道新冠町)▽戦績 11戦8勝▽主な勝ち鞍 19年東京スポーツ杯2歳S(G3)ホープフルS(G1)20年皐月賞(G1)ダービー(G1)神戸新聞杯(G2)菊花賞(G1)▽総収得賞金 11億9529万4000円▽馬名の由来 飛行機雲

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