何年たっても、刺激的な日々が忘れられない。菊沢隆徳師(51)は21年前の00年夏、世界的競馬グループのクールモアの本拠地、バリードイルにいた。騎手として滞在し、アイルランドのネース競馬場で騎乗馬のフレームライトと競馬にも臨んだ(00年8月7日)。同馬を管理していたのは今年のジャパンCにジャパン(牡5)、ブルーム(牡5)を送り込むエイダン・オブライエン師(52)。菊沢師は「今でもいい経験だったなーって思うよね。ジョッキーをやっていて宝物のような」と目を細めた。

滞在期間は1カ月と少し。日本人で初めて同師の管理馬に競馬で騎乗するなど、短い間でも代え難い経験の連続だった。調教に乗るのは1日4頭ほど。当時はジャイアンツコーズウェイ(00年にG1・5連勝)が英愛の大レースを勝ちまくっていた時期。「坂路もそこまで急ではないし、1頭の調教にまたがっている時間も日本ほど長くはなかったんじゃないかな。でも、あっちは環境がすごいからね。すごい馬が多いし、頭数もすごいいる。追い切りも実戦を想定して5、6、7、8頭って坂を下って上がっていくんだから。あれは日本ではできない」。歴史あるバリードイルで多くの名馬を見て、背中を学んだ。

将来の大種牡馬の背中だって知っている。1頭の馬名を口にしたとき、菊沢師は一気に相好を崩した。ガリレオ。2歳10月にデビューを迎え、英愛ダービー、“キングジョージ”を圧勝。今年7月に多くの後継馬を残して天に旅立った大種牡馬だ。数カ月後にデビューを迎える名馬の印象も、もちろん鮮明に残っている。

「デビュー前のガリレオの調教にも乗ったことがあるんだよ。抜群。高級感があったよね。その頃からエイダンは『来年ダービーを勝つ馬』だと言っていて、その後に勝って、本当だわーって思った。その頃はジャイアンツコーズウェイ(00年にG1・5連勝)が現役バリバリで。ガリレオにとっては2歳の夏だったんだけど、本当にいいタイミングでした」

当時は調教師と騎手。立場は違えど、年齢は近かった。今思えば、懐かしくもあり、勉強にもなった。「確か同い年・・・、学年が一緒なんだよね。常に忙しい人だったなあ。車の運転もすごくて。バリードイルから競馬場に行くときなんて、すんごい飛ばすんだよ。怖かったなあ」。ふとした出来事も温かい思い出だ。

A・オブライエン厩舎は今年、5回目のジャパンC管理馬出走となる。A・オブライエン師の来日予定はないが、レースを見れば昔の記憶もわき上がってくることだろう。「真面目だし、愛情がある。人の名前も必ず覚えるような人だったよ。調教が終わってからは息子達をポニーに乗せて馬乗りの練習をさせたり、それでみんなジョッキーになっちゃんだから。本当にすごいよね。そうでないと、20年以上も続けてクールモアの専属トレーナーは務められないってことだね」。菊沢師も世界の名トレーナーから刺激を受けたホースマン。日愛仏のG1馬がそろったジャパンCは28日15時40分にゲートが開く。

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