JRAは10日、JRAの騎手、調教師及び調教助手などの厩舎関係者が、新型コロナウイルス対策の国の持続化給付金を不適切に受給していたことについて、2度目の調査結果報告説明会を中山競馬場、阪神競馬場で行った。

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3月6日に行われた説明会では、受給者は騎手13人を含む165人としていたが、虚偽申告者が1名いたことを受けた再調査の結果、受給者は合計で4人増の169人(うち3人は副業収入減などによる申請)と発表された。166人に関しては返還手続きが進んでおり、すでに全体の6割近い96人が返還を済ませた。調査結果を踏まえて調教師会、騎手クラブ、JRAはそれぞれ戒告や厳重注意などの処分を下した。

中山競馬場での説明会では質疑応答も行われた。一問一答は以下の通り。

-経済産業省のHPには「持続化給付金の不正受給は犯罪です」と記されている。前回の説明会では「認識が甘かった」としたが、それで済むのか

吉田正義JRA常務理事(以下、吉田常務理事) まず不正受給かどうかは、JRAが判断すべきことではないのではないかと思っています。それから、「甘いのではないか」に対しては、昨年、事案のうわさが出てきたときにJRAがキャッチできる体制であるとか、注意喚起後、こちらのフォローがちゃんとできたのかどうかといったところで、対応に甘さがあったと感じています。

-全体的に処分が甘いという印象。受給していない調教師からは「一緒に見られるのが嫌だ」という声もある。実名を出すべきでは

手塚貴久日本調教師会関東本部長(以下、手塚師) 受給していない調教師からそういう声があったことは重々承知しております。そのことを含めて役員会で話をしました。受給した者の事情聴取をするにあたって、明らかに不正かどうかは我々の中ではうまく解明できないことが多すぎて、不正ということではなく、不適切な受給という判断になりました。その旨を考えると、個人のプライバシーを含めて、不正であることが明らかでない以上、実名を出すのは適正ではないと調教師会で判断しました。

-1回目の説明会と比べて仲介した税理士法人の数が減り、大阪の男性税理士が扱った案件が増えている。数字が変動した理由は

越智直弘JRA総合企画部経営企画室長(以下、越智経営企画室長) 税理士法人の数が前回の15から減っていますが、3次調査時に詳しく聞き取りを行った結果、相談したが申請サポートまで至っていないなどの内容もありました。あとは、同じ税理士法人を指しているが、呼称が違っていて同一法人を別のものと認識していたりしていました。精査した結果、関与のあったものの数は12に修正しています。また、当該税理士法人の104件については、今回の調査の結果、新たに受給していたことがわかったのが4名いましたが、そのうちの2名についてが、当該税理士法人絡みでした。また詳細な聞き取りの結果わかったものもあり、108件ということになりました。

-大阪の税理士法人に対しての処分がされていない理由は

吉田常務理事 税理士法人の代表者は馬主法人の代表者でもあるので、競馬施行規程による対応ができないかどうか、私どもも行政処分を科す側であるので、慎重に検討しました。精査しましたが、例えば競馬施行規程による馬主登録の取り消しとか、戒告等には該当しない、というのが結論です。現行の競馬関連法規で対処することは極めて難しいところで、処分等には至らないということでした。

-前例がないから、処分できないのは理解できる。想定されていない事態が起きた際に処分を科すなどの議論はなされなかったのか

吉田常務理事 競馬法を頂点とする法体系の中で馬主登録の抹消という処分については、厳格に抹消事由が競馬法施行規則、私どもの規約、それらをまとめた施行規程が決まっています。私どもが行う制令に基づく処分は行政処分になりますので、なかなかこういった法令に基づかないでJRAが馬主登録の取り消しなどを宣言することは、極めて行政処分の中では難しいというか、できないと思っています。

-JRAが騎手13人に対して行った処分で、厳重注意が競走担当理事によって行われるものと、東西トレセン場長によって行われるものの2種類ある。その差は

吉田常務理事 競走担当理事による厳重注意の騎手1名は、いわゆる(昨年11月の)注意喚起後に申請をした方です。他の騎手12名はそうではないので、そういった意味で差が出ています。

-持続化給付金を受給した調教師は19人で、処分はそれより3人多い22人。3人は注意喚起が不十分だったことが処分理由だが、具体的にどういうことか

手塚師 昨年11月の時点で、関東と関西でやり方は違いますが、文書あるいは総会で各厩舎従業員にもれなく伝えるように注意喚起をしました。当該調教師は通達不十分だったと、自分からの申告です。

-先日、ボートレースで同様の事案が出た際は、競走会の会長自らが説明した。これだけの騒動となっても、JRAの理事長が説明会の場に出てこないのはなぜか

吉田常務理事 記者説明会で詳しい中身の説明をどこまできっちりできるかということで、恐縮ながら私が話をさせていただいております。理事長はコメントを出させていただいております。まだ返還手続き中であったりとか、今後の再発防止策は具体的にどうやっているのかというのもあります。どこかの節目できっちり理事長からお話をみなさんにさせていただきたいと思います。

-今回の事案によって落ちた競馬のイメージ、ファンからの信頼はどのように回復していくのか

吉田常務 お客様はじめ、一般の方々に競馬に対する信頼感を極めて毀損(きそん)してしまったのはおっしゃるとおり。深く反省しているところであります。まずは今回の件をきっちり、片を付けていくといいますか、返還すべきものは返還していただく。それから、再発防止策。ホットラインなどは早速運用させていただいております。まずは今回の一件を、しっかりけじめをつけていくことが一番ではないかと。その上で何か社会貢献的なことを、社会一般の方にご理解をいただけるような形でできればという風に思っております。

手塚師 世間の皆様から大変厳しい意見をうかがっていることは重々承知をして、真摯(しんし)に受け止めないといけないと考えています。JRAと調教師会はともにあることをしっかり認識した上で、再発防止に取り組みながら、新型コロナウイルス感染症対策への積極的な奉仕活動参加、また社会貢献できるようなことがあれば、調教師会として検討し、率先して参加したいと考えています。

-残り70人が返還手続き中。全員が手続きを完了するのはいつごろか

吉田常務理事 個々の事情があるものですから、いつ終わるのか予測ができない状況ではあります。JRAとしては最後の1人まできっちりフォローします。

-騎手クラブから誰も出席者がいない

吉田常務理事 まず会長の武(豊)さんはリハビリ中ということもあるので、ご容赦いただきたい。騎手の方はレースもあるので、今日は欠席とさせていただきました。そういった声があったことは私の方からお伝えします。

-今回は最大限厳しい処分だったと考えているか

手塚師 考え得る最大限厳しい処分だったと考えています。

-今後、改善すべき点は

手塚師 今回、不適格受給ということで、調教師に関しては私も調査に立ち合いましたが、(受給した調教師は)ほとんどが大阪の男性税理士からの勧誘でした。ですが、最終的に判断したのは本人たちです。不適格、不適切な受給だったことは間違いなく、全員が返還完了、あるいは返還手続きをしています。そのために戒告と厳重注意に差が出たのは資料に書いてある通りで、個人で申請したか、あるいは関連企業で申請したかで若干違いがあります。関連企業での申請、受給については、調教師会の懲罰規定は個人に対する懲戒であって、関係する会社あるいは組織についてはありませんでしたので、口頭注意以外できませんでした。

-日本調教師会は一般社団法人。一般社団法人として改善すべき点は

手塚師 各調教師が公的支援を受ける際は、事前に調教師会へ申告してもらうことをある程度義務付けたいと考えています。顧問弁護士にも相談し、理事会でも通過しているので、今後やっていきたいです。こういった事態が発覚した際に速やかに対応できるのではないか、と考えています。

-今回、4人の受給が新たに判明。そのうち3名が虚偽回答をしていた

吉田常務理事 3名に聞き取りをしたところ、ひとつは自分の将来に関わることになってしまうのではないかという不安感が強くて言い出せなかった、と。(調教師が)注意喚起や、事情聴取を他人がいるところで行っていた方もいるようです。周りに人がいるから、なかなか言えなかったという事例もありました。

-今回の数字はJRAによる任意の調査。今後、実態把握のために中小企業庁とのデータ照合は行うのか

吉田常務理事 中小企業庁とはいろいろ話をしておりますが、中身についてはこの場でお話しするのは控えたいと思います。

-今回の事案に関与していたスポーツニッポン新聞社の記者に関しての調査は行ったのか

吉田常務理事 その記者の方、所属する新聞社の方から事案に関わるご説明をいただきました。また、深い謝罪の言葉もいただいております。その記者の方ですが、記者クラブの記章、それからトレセン通行証を返却されたということで、この方がトレセンに立ち入ったりとか、競馬に関与することは今後はないのかなと思っております。

-受給した調教師の中に20年に新規開業した者も含まれているか。いた場合は前年が技術調教師だったり、収入の形態、立場も違う。その点で不適切か、不正かを詳細に調査する必要が出てくるのでは

手塚師 新規開業者は数名いました。調教師の中でも言い分はそれぞれありましたが、調教師会としては、やはりそれは不適切な受給だという判断を示させていただきましたので、処分を下しました。それ相応の処分を、ということです。

-処分内容について。競馬施行規程には騎乗停止、50万円以下の過怠金など、厳しい罰則もある。今回の事案はこれには値しないという判断か

吉田常務理事 競馬施行規程の「競馬の公正確保を担うものとして、ふさわしくない非行があった(日本中央競馬会競馬施行規程第147条第20号)」という条文に該当して今回、戒告という処分をしています。この条文の過去の適用例は交通事故で略式起訴された人だったり、極めて重大な暴行事件を犯した人だったとかこういった事例ですね。今回の事例と過去の事例を対比させますと、戒告相当が適当となりました。

-戒告、注意、厳重注意は具体的にどんなことをするのか

吉田常務理事 競馬施行規程に基づくJRAの戒告は文書の手交です。当然、履歴に残ります。それから厳重注意。競走担当理事による厳重注意、(東西トレセン)場長による厳重注意ですが、どちらも文書によるものです。特に競走担当理事の厳重注意は文書の手交という形で対応しています。場長による厳重注意は、文書を配達証明付きで送付しています。

手塚師 調教師会の戒告は調教師会会長が当該者に口頭で戒告を発するということです。これは経歴に残ります。厳重注意は懲戒規則にはありませんが、調教師会会長が直接当該調教師に厳重に注意することです。記録として残るか残らないかというところが、かなりと違います。東西本部長による厳重注意というのも今回出しましたが、東西本部長が当該調教師に対して指導義務違反ということで厳重に注意をします。これについても記録には残りません。

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