名手がむちを置いた。3月から調教師に転身する蛯名正義騎手(51)が2月28日、中山での騎乗をもって引退した。

5Rと10Rで2勝を挙げ、34年間の騎手生活を終えた。12R終了後にウイナーズサークルで行われた引退式ではジョッキー仲間に胴上げされ、笑顔で騎手生活を終えた。

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現役最後の騎乗を終え、蛯名騎手は中山記念4着のゴーフォザサミットの馬上から馬場に、スタンドに一礼した。87年3月1日の初騎乗、同4月12日の初勝利、そして最後のレースも中山。万感の思いが胸いっぱいに広がっていた。

蛯名騎手 素晴らしい仕事だよ。その分、大変だけど。ジョッキーに憧れて、その憧れた仕事をやらせてもらえたので、頑張り続けてきた。好きなことをやらせてもらえたことは親にも感謝しないといけない。ジョッキーもこれからの人たちは頑張ってほしい。

闘将の魂が馬に乗り移った。中山5R。左ムチ連打にシルバースピリットがスピードに乗る。3角では口を割った相棒が直線外から伸びてきた。「とにかく、1つ勝たせてもらったことがありがたい」。腕が鈍っての騎手生活最終日ではない。10Rでも9番人気スマートアルタイルで勝利。思わず周囲に聞かれた。「まだ乗れる?」。「いや、(騎手は)卒業です。明日から(調教師として)入学です」。JRA通算2万1183戦で歴代4位の2541勝。重賞129勝、うちG1・26勝。もう、未練はない。

家族の支えがあっての「蛯名正義」だった。騎手仲間、そして家族に話が及ぶとまぶたが震え、声が詰まった。「どんなときも支えていただいて・・・、頑張ってこられた騎手人生だったと思います。本当に長い間ありがとうございました」。最後は笑顔で記念撮影。大勢に抱えられ、5回宙を舞った。「ファンの方々に愛される馬を育てていける、そんな調教師になれたら」。お別れは新たな始まり。調教師として、第2の人生がスタートする。【松田直樹】

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