栗東では7人の調教師が今週末で引退する。

<角居師>

現役最多の国内外G1・38勝(地方含む)を挙げた角居師が、自らの手で厩舎の「看板」を下ろした。弟・康宏さんがユニコーンをあしらってデザインしたもので「ずいぶん古びたなあと。最初はピカピカだったんですけど」と振り返った。

調教師として迎える最後の週末を前に、これまで苦楽を共にした厩舎スタッフと記念撮影もした。「ずっと馬の別ればかりをイメージしてきたので。従業員がバラバラになるのかと思うと感慨深い感じです」。

今後は故郷の石川県で家業の天理教を継ぐが、競走馬のセカンドキャリア支援にも力を注ぐつもりだ。「少しでも馬が長生きできる場を作れればと思います」。ラスト週の出走は、日曜阪神9Rワイドソロモンの1頭。「いい状態。とりあえず無事に。いい競馬をしてくれればうれしいかな」と柔和な笑顔で話した。

<松田師>

タニノギムレットとキングカメハメハでダービー2勝を挙げ、クロフネでは芝&ダートGI制覇も達成した松田師は、引き継ぎ作業に追われている様子で「めちゃくちゃ忙しいよ」と苦笑い。厩舎スタッフの中から角居師、友道師、高野師らが育ち、NHKマイルCからダービーへの転戦は“マツクニローテ”と呼ばれるなど一時代を築いた。調教師人生最後の今週は、計13頭がスタンバイしている。

<石坂正師>

JRA・G1・14勝を挙げた石坂正師は退厩作業を進めながら、静かに半生を振り返った。「ようやくラストウイーク、という感じですね」。牝馬3冠にジャパンCで連覇を果たしたジェンティルドンナ、統一G1・9勝のヴァーミリアンなど歴史に残る名馬を育てた。「ぜいたくな話ですけど、そういう走る馬がいたので、それならではのしんどさがあった。でも充実していました」。最終週は土曜阪神9Rシャイニーゲールでラストラン。「3200メートルで新しい面が出れば。無事に走ってきてほしいですね」と最後まで愛馬を思いやった。

<西浦師>

西浦師は騎手時代にカツラギエースで84年ジャパンCを制覇。調教師ではテイエムオーシャン、カワカミプリンセス、ホッコータルマエなど芝、ダートともに名馬を手がけた。「馬を通して人と出会えた。いい思い出ばかり」と笑顔で振り返る。21日の小倉大賞典はテリトーリアルで優勝。阪急杯にブラックムーンを送り出す。「これ以上ないぐらいの仕上がり」。JRA重賞は23勝(G1・6勝)。2週連続重賞制覇なら厩舎初。有終の美を飾るか。

<田所師>

田所師は調教師として活躍するかたわら、人権問題に取り組み、昨年、法務大臣表彰を受けた。「小中学校で人権学習、道徳の授業みたいな話をしています」。常に馬に思いやりを持って接する、それが高じて栗東市の人権擁護委員を長く務めているという。思いやりを持って育てた馬たちを、最後まで入魂の仕上げで送り出す。「全部の馬に期待しています。無事に終えて、次に引き継ぎたい」。エリモハリアーでは函館記念3連覇(05~07年)。JRA重賞は11勝。人馬に愛情を注ぎ続けたキャリアに幕を下ろす。

<湯窪師>

騎手として141勝、調教師としてJRA270勝。半世紀を競馬にささげた湯窪師は「長いようで短い、短いようで長い50年でした」と話した。03年フローラSで重賞初制覇(シンコールビー)、カフジテイクは17年根岸Sを制した。JRA重賞は5勝。エムエスワールドは12年に障害重賞を2勝した。「みんな思い出に残っています。エムエスワールドはよく稼いでくれた。ここまで無事にこられて良かった。1つでも多く勝って終わりたいですね」と話した。

<西橋師>

99年桜花賞をプリモディーネで制した西橋師。京都競馬場の厩(うまや)で生まれ、騎手、調教師と競馬ひと筋の“70年”だった。「本当、アルバイトひとつもしたことがない。中学校を卒業して、すぐ騎手候補生になったので」と師。競馬にささげた人生、ラストウイークに出走馬はいないが「やれやれ、という心境です。G1を勝った馬も、走らなかった馬もいる。すべての馬が思い出です。苦しみも楽しみもあった。これからは馬券を買う? 才能ないですよ」と、笑顔で締めくくった。

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