<ジャパンC>◇29日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳上◇出走15頭

笑顔で、お別れ-。1番人気アーモンドアイ(牝5、国枝)が勝ち、自らの史上最多記録を更新する芝のG1・9勝目(うち海外1勝)を挙げて有終の美を飾った。

クリストフ・ルメール騎手(41)と道中5番手を進み、直線は馬場の真ん中を伸びた。勝ち時計は2分23秒0。総獲得賞金19億1526万3900円となり歴代最高。今後は繁殖入りし、種牡馬エピファネイア(牡10)と交配することが有力。初産駒は早ければ24年夏以降にデビューを迎える。

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周囲の音が消えていた。アーモンドアイとルメール騎手。1頭と1人。最後の直線。ラストラン。ルメール騎手は「脚音は聞こえなかった。集中していた。手前を替えるかどうか、息が入るかどうか。手応えを観察していました」と言った。後方から無敗の牡牝3冠馬のコントレイル、デアリングタクトも伸びてくる。相手より、自分たち。苦楽をともにした人馬は、お互いの呼吸だけを感じ取っていた。

残り100メートル手前。何度も先頭で駆け抜けたゴール板だけが見える。「最後がすばらしい走り。すばらしい脚でした。パーフェクトホースです」。逃げるキセキをかわすと、感謝の気持ちがこみ上げてきた。

コロナ禍でファンとの交流が著しく減った。勝利後の即席サイン会、競馬場でのイベントもゼロになった。唯一、ファンの声援を感じられる手段はSNSのみ。平易な日本語で、時には英語で届くメッセージが励みになった。「ツイッター、インスタグラムでみんながコメントをしてくれた。馬とジョッキーを応援してくれる。ファンのサポートを感じることができた」。入場制限がかかるこの日の有料入場人員は約11倍の抽選を突破した3942人。スタンドに、画面越しに、いつも応援してくれるファンに。強さを知らしめるように人さし指を突き立てた。

「ありがとう」。自身2度目のJRA・G1実施機会4連勝のルメール騎手は最愛のパートナーに言葉をかけた。史上初の芝G1・8勝目を挙げた前走の天皇賞・秋で赤く腫らした両目は、深いしわを伴った三日月形になっていた。ラストランは、笑顔でお別れだ。「今日はさよならパーティーでした。絶対に日本で一番強い馬。彼女に感謝したい」。前走に引き続き、バーバラ夫人お手製の9冠マスクを装着して会見に登場。何度も何度も「感謝」の言葉を繰り返した。

ルメール騎手 3歳のジャパンCがピーク。でも、今日はあらためて彼女の強さを見せた。今日がやっぱりピークだったのかもしれない。

最後にして最強。できることは全てやりきった。「競馬のストーリーは終わりました。でもアーモンドアイのストーリーは終わっていません。いい子どもをつくったら、乗れるから。悲しくないです。安心しました。アーモンドアイを応援してくれて本当にありがとう」。史上最多を更新するG1・9勝、獲得賞金も歴代最多。夢の続きは次世代に託す。【松田直樹】

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