<菊花賞>◇25日=京都◇G1◇芝3000メートル◇3歳◇出走18頭

日本競馬史にまた1頭、名馬の名が刻まれた。福永祐一騎手(43)が騎乗したコントレイル(牡3、矢作)が、05年の父ディープインパクトと同様に、デビューから7戦7勝で菊花賞を制した。史上3頭目の無敗の3冠馬誕生。単勝1・1倍の圧倒的支持に応えて、父子2代では史上初となる偉業を成し遂げた。

鞍上は3冠騎手としては最年長での達成。円熟味を増した手綱で、重圧に打ち勝った。

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漆黒の馬体が、菊咲き誇る淀のターフで根性を見せた。昭和のルドルフ、平成のディープ。新時代・令和の歴史にコントレイルが名を刻んだ。史上3頭目、無敗の3冠馬誕生。「改めて本当にすごい馬だと思う。天からの授かり物です」。勝利をかみしめ、福永騎手は笑顔で感謝を伝えた。

道中は先団の内めを追走。しかし、馬はエキサイトした。「折り合い面でリラックスさせてあげることができなかった」。斜め後方のアリストテレスから終始厳しいマークを受け、焦っていた。手応えのいい相手と併せる形で直線へ。「まずい」。長い長い、約400メートルの追い比べ。「しのいでくれ」。ファンの歓声に後押しされながら「馬を信じて、自分の気持ちはぶれないように乗った」。応えるように、コントレイルは先頭を死守。首差。「最後まで死力を尽くした。本当に立派な走りだった」。何より愛馬をたたえた。

中学時代、サッカー少年だった自身をジョッキーに導いたのは、当時、競馬ブームを巻き起こしていた武豊騎手の姿だった。「豊さんの影響が大きかった。競馬へのイメージが変わってきていたから」。天才騎手・福永洋一の息子に生まれ、ずっと名手・武豊の背中を追い、勝つための努力を惜しまなかった。

「人と同じことをしていてもだめ。まねをしても、その人より上には行けないと思うから。父もそう考えていたと思う。考えて結果を出すから、人より目立つ存在だったんだと思う」

父はかつて9年連続でリーディングジョッキーに輝いた。“天才”と呼ばれた父と同様に、独自の思考と負けん気で競馬と向き合ってきた。考えに考えを重ねた25年間。ついに巡ってきた大舞台で結果を出した。

「もし父と話せたら、どう考えていたのか聞きたい。たぶん、自分のように思って、考えていたんじゃないかなと思うから」

ダービーに続きまた1つ、福永家の悲願を達成した。父と同期の岡部幸雄元騎手と武豊騎手、これまで2人だけだった無敗3冠ジョッキーの称号を手にした。名手・福永祐一がさらなる高みへ、コントレイルとともに駆け上がった。

しかし、まだ通過点-。一直線に伸びる飛行機雲のように“旅”はこれからも続く。無敗の牝馬3冠デアリングタクトや歴戦の古馬と戦う時が来る。「ここからがまた新たなスタート。彼が日本一強い馬という称号を勝ち得るために、ともに頑張っていきたい」。福永コントレイルはこれからも多くの夢を実現する。【藤本真育】

<福永騎手の一問一答>

-レースについて

福永騎手 ゲートの中で少しうるさいそぶりを見せていた。1歩目はある程度出たけど、その後のスピードの乗りが良くなくて少し促した。その影響か、皐月賞、ダービーでできていた道中の走りができなかった。正直、うまく乗れなかった。コントレイルの底力で勝たせてもらったと思う。

-ゴールの瞬間

福永 最後は脚があがっていた状況で、非凡な瞬発力を持っていながら、ああいう形になっても抜かせない精神力を持った馬は初めて。素晴らしい馬だと思う。

-無敗の3冠を達成した

福永 大一番でこのような馬に乗れて、もちろんプレッシャーはあったけど、幸せな気持ちの方が大きかった。騎手生活を続ける中で、父子2代の無敗の3冠がかかるレースに乗れて、幸福感でいっぱいだった。

-父について

福永 福永洋一の息子としてこの世界に入った以上、父がかなえられなかった思いを自分が代わりに果たすことができれば、少しは親孝行になるのかなと思う。

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