<飛行機雲に乗って~福永3冠騎手(5)>

連載「飛行機雲に乗って 福永3冠騎手」のラスト第5回は、2本立てで締める。コントレイル(牡3、矢作)を担当する金羅隆調教助手(36)は、愛馬とその主戦・福永祐一騎手(43)を信じ、菊舞台へと送り出す。また、競馬学校時代の同期である高橋亮調教師(42)と、当時教官だった緒方一徳氏が、名手となった福永騎手の原点秘話を明かした。【取材・構成=藤本真育、辻敦子】

コントレイル×福永騎手を一番近くで見てきた金羅助手は、福永ジョッキーのすごさを肌で感じていた。

金羅助手 牝馬でよくG1を勝っているイメージがありますし、馬に対する当たりが柔らかいジョッキーだなと思っています。以前、佐藤(正)厩舎にいた時に福永騎手で新馬戦(ヴェリーバンブー)を勝ったんですが、スピードのある馬で、ハナに行けば楽に勝てるかなと思っていたところ、今後のためを思って2番手から競馬をして勝ってくれました。

“1勝より一生”。先につながるように競馬を教えながら、勝つ。プロの仕事を感じた瞬間だった。

そんなジョッキーと挑む菊花賞。経験のない距離、コースだが不安はない。

金羅助手 京都は初めてで、距離もやってみないとわからないですけど、ジョッキーにお任せです。ずっと乗ってくれていますし、経験値もありますから。また、菊花賞のコースはジョッキーの腕が問われると思うので、その点でも絶大に信頼しています。コントレイルもばねがすごいですし、運動神経がいいと思います。本当に特別な馬ですし、心配はしていません。

無敗の3冠がかかる大一番。「楽しみは10%くらいで、あとは不安です。気付いたら菊花賞が終わっていてほしい」。プレッシャーは大きいが、長丁場でより生きる卓越した技術を持つ福永騎手、人知を超えた圧倒的な身体能力を備えるコントレイル、人馬を信じて送り出す。(おわり)

<競馬学校同期の高橋亮調教師、当時教官の緒方一徳公正室長>

競馬学校時代、福永騎手は1学年下の年代と同期だった。けがでテストを受けられなかったためだった。同期の高橋亮師は「まさか一緒になるとは思っていなかったです。1つ年上でしたが、僕らに対して最初からフラットに接しようとしてくれました。まだ10代の頃。今から考えても、当時から(振る舞いなどが)すごく賢いなあと思います」と振り返る。当時の競馬学校教官、緒方一徳公正室長も「先輩風を吹かせることは一切ありませんでした。それもあって、この代はうまくいったと思います」と明かす。

乗馬を始めたのも、他の人より少し遅めだった。そんな中、身体能力の高さを感じさせる出来事があった。大学に出向いて全員で脚力を測定をした時に「異常なくらいの数字で、正直、びっくりしました。下半身が強かったですね」と緒方氏。1人だけ特別なことをしたわけではない。毎日、同期とは同じメニュー。幼少期からサッカーをしていた影響もあるが、持って生まれた身体能力の高さでもあった。常に自然体な人柄、そして脚力の強さが、福永騎手がトップジョッキーになる原点だった。(おわり)

  1. お得な新入会プラン登場! 競馬情報サイト【極ウマ・プレミアム】
  2. 競馬予想に【ニッカンAI予想アプリ】