<高松宮記念>◇29日=中京◇G1◇芝1200メートル◇4歳上◇出走18頭

史上初めての無観客G1は一筋縄の決着では収まらなかった。1位入線馬の降着により、9番人気の伏兵モズスーパーフレア(牝5、音無)が繰り上がりV。積極的な逃げを打ったデビュー7年目の松若風馬騎手(24=音無)は、自厩舎の馬でG1初制覇を飾った。勝ちタイムは1分8秒7。2着はグランアレグリア、3着はダイアトニック。クリノガウディーは無念の4着降着となった。

長い直線を粘って、粘って、粘り込んだ。残り150メートル。松若騎手とモズスーパーフレアは、外からクリノガウディーが並んでくると懸命に抵抗した。すぐ後ろにはダイアトニック。外からはグランアレグリアが伸びてきた。4頭が並ぶ大接戦。ゴールの瞬間は、わずかに前に出られていた。勝利は寸前で手からこぼれ落ちたかに見えた。だが、これが結末ではなかった。長い審議の末、先着した馬の降着が決まった。

自分の競馬を貫き、G1初制覇をつかみ取った。「やることは決まっている。びゅんびゅん行く。見とってください」。逃げ馬には不利な外枠に決まっても、鞍上の決意は固かった。最大の武器はダッシュ力。好スタートからハナを取り切ると、終始後続に3、4馬身差をつけながら快速を飛ばした。「中京は直線が長いので逃げるのは難しいと思ったが、馬が応えてくれた。最後は無我夢中でした」と振り返った。

同じコンビで挑んだ昨秋のスプリンターズSは0秒1差の2着で涙をのんだ。それでも音無師は、春の大一番も勝負の手綱を弟子に託した。降着があっての勝利に「素直には喜べないがうれしい」と複雑な表情を浮かべた松若だが、師匠への感謝は忘れなかった。「モズスーパーフレアとG1を勝ちたいと思っていた。勝ててよかった。厩舎スタッフがうまく仕上げてくれた。先生にはデビュー当初からお世話になった。恩を1つは返せたかなと思います」とはにかんだ。

トレーナーも「日々努力している努力家。スプリンターズSでは悔しい思いもあったが、悔しさを糧に今日勝ててよかった。こういう日が来るのを待ってた」と、ヒーローになった弟子の姿に目を細めた。

史上初めて無観客で行われたG1。「お客さんがいないのはさみしい。改めてお客さんの大切さを感じた。普段は手拍子が聞こえるのになくて本当にさみしかった。次はたくさんのお客さんの前で勝てるように、技術を磨いていきたいです」。殊勲の鞍上に新たな目標ができた。次走は未定だが、スプリンターズSへは出走する予定。今度は大歓声の中で、快速を見せつける。【三嶋毬里衣】

◆音無師の高松宮記念制覇 06年オレハマッテルゼ以来14年ぶり2勝目。JRA・G1は昨年チャンピオンズC(クリソベリル)以来、通算13勝目。JRA重賞もクリソベリル以来で通算76勝目、14年から7年連続JRA重賞勝利。

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