<ホッカイドウ競馬 冬のお仕事:騎手編>

ホッカイドウ競馬は全国でも珍しい約5カ月の休催期間がある。秋のシーズン終了から翌年4月中旬の新年度開幕まで、関係者はオフも大忙しだ。連載「ホッカイドウ競馬 冬のお仕事」では、厩舎スタッフの奮闘ぶりを3回にわたって紹介する。

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シーズンオフに入ると、ホッカイドウ競馬所属騎手の大半は、門別競馬場で若駒たちの調教にあたっている。昨季初めてリーディング首位を獲得した8年目の石川倭騎手(24)は「この時期は寒さとの戦いでもある。落馬のリスクも高いので1年で最も気を使いますね」と話す。

競馬場がある日高地方は氷点下10度以下も珍しくなく、太平洋からの寒風で体感温度はさらに厳しい。その中で朝6時から1日10頭もの若駒にまたがり「走る」ことの基礎から教え込む。「馬は意図せず止まる時が最も危ない。騎手に成り立てのころは何度も落とされて手の甲や膝などを骨折しました」。ケガ予防で週5日ジムに通い、体を鍛えている。

冬季の調教に地理的なハンデを抱えていた競馬場は、12年に屋内調教用坂路コース(※)が完成し、大きく進化した。現役最年長の井上俊彦騎手(54)はいう。「昔は制限されたトレーニング用の馬場で大渋滞していた。1頭悪さをすると連鎖的に暴れてね。今はずいぶんと良くなったが、それでも馬は臆病な動物。なかなか思い通りにはいかないものだよ」。

毎年リーディング上位争いをするベテラン服部茂史騎手(43)は「この時期は馬の気持ちを育てることが大事」と説く。集団で行う調教では、毎日全馬に乗ることは不可能。他の騎乗員の手をわずらわせていた馬をチェックし、率先してまたがっているという。「年に何頭か野獣のような馬がいる。(レース)本番で困るのでそうした馬ほど自分が乗る。走ることを嫌いにならないように個々のペースに合わせ、急がせず、前向きになるように進めている」とプロ意識の高さをうかがわせた。【奥村晶治】

◆屋内調教用坂路コース 12年に競馬場北側に6億9535万2000円かけて作られた。全長900メートル、高低差21メートル、走路幅7メートル、最大勾配5・5%。ハロンタイム測定表示(3F)や視目モニターが設置されている。競馬場内馬場左側では2歳馬中心の新たな調教用コース(ウッドチップ、1周約380メートル、幅員7メートル)の工事が進んでおり、今春の運用開始を予定している。

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