香港国際競走が行われた8日のシャティン競馬場に香港の人気者パキスタンスター(せん6)の姿はありませんでした。昨年4月のクイーンエリザベス2世C(G1、芝2000メートル)、同5月のチャンピオンズ&チャターC(G1、芝2400メートル)を連勝。最優秀ステイヤーとともにファン投票による最高人気馬にも輝きましたが、その競走人生は波瀾(はらん)万丈です。

16年7月のデビュー戦はとんでもない位置から差し切る衝撃の逆転勝ち。これがYouTubeで世界中に拡散されると、一躍アイドルとなりグッズも飛ぶように売れました。4歳時は香港ダービー2着、クイーンエリザベス2世Cも2着と順調でしたが、プレミアプレート(G3)で事件は起こります。

スタートして間もなくなぜか走ることを拒絶。大きく離れてゴールしたものの競馬場は騒然となりました。気の強いことで知られるシャマーダルを父に持っており多分に気分屋な面があります。プラスに出ると火事場のばか力となり、損ねると悪癖となって競馬を投げ出して周囲を困らせ続けました。

今春にはクルーズ厩舎からオサリバン厩舎に移籍。9月からの新シーズンでは短距離路線で目先を変える試みがされましたが、11月17日のジョッキークラブスプリント(G2、芝1200メートル)ではスタートして早々に競走を中止。初騎乗のB・シン騎手が鞍上でしたが、誰が乗っても悪癖は治りませんでした。

再三にわたる出走停止処分を受けたオーナーのK・ディン氏が下した結論は中東ドバイへの移籍でした。調教駆けすることが知られており、ダート競馬は最後の望み。香港での登録は抹消され、ドバイでも厩舎を持つ米国のワトソン厩舎への移籍が決まっています。同馬が目指す大目標はドバイWC(G1、ダート2000メートル、3月28日)。新天地で新たな戦いが始まります。【奥野庸介】(ターフライター、ニッカンスポーツ・コム/極ウマコラム「ワールドホースレーシング」)

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