<キナミの帝王~日本でも香港でも(2)>

香港国際競走(8日=シャティン)の「G1番記者」は東京・木南友輔「キナミの帝王~日本でも香港でも!!」。2日目はハイレベルなスプリント界に誕生した新たな怪物候補エセロ(せん3)に迫る。圧倒的に負担重量の軽い53キロの南半球産3歳馬。リーディング7度、香港史上最高獲得賞金調教師のジョン・ムーア師(69)を直撃すると、自信満々の答えが返ってきた。

香港国際競走(HKIR)出走馬のゼッケンは、緑=ヴァーズ、黄色=スプリント、マイル=紺、赤=カップで色分けされる。火曜朝、前日に続き、幼い表情ながら大きな馬体、黄色の1番ゼッケンがカメラに近寄ってきた。アルファベットの「A」で始まるエセロ(AETHERO)。「でっけー」。前走体重は1246ポンド(約565キロ)。16年9月20日生まれなので、日本で例えるなら3歳馬が安田記念、宝塚記念に挑むイメージだ。

他陣営からは「あの馬は強い」、「おそらく勝つだろう」と早くも白旗が上がる。前哨戦ジョッキークラブスプリントはスッとハナを奪い、直線は独走。勝ちタイムはレコードに0秒08差という衝撃の内容だった。ムーア師は「次世代の怪物じゃないかな。素晴らしかった。ラップも優秀だし、本当に強いよ」と笑いが止まらない。51キロの前走は騎乗できなかったが、53キロの今回は主戦のパートン騎手とコンビ復活。懸命に減量中の鞍上は「あの走りをリピートする(繰り返す)だけさ。普段のスピードからけた違い。気分よく走れれば勝てる」と絶対的な信頼を寄せる。

デビューから6戦5勝。唯一の敗戦は今シーズン初戦の3着のみ。グングン成長を続ける南半球産馬はオーストラリアのイングリス社イースターセールでムーア師の息子ジョージが見つけてきたという。57万5000豪ドル(約4370万円)は全体57番目の価格。母の全兄がG1・5勝のレーシングトゥウインという血統にもかかわらず比較的安価だった。その理由を師は「前脚が曲がっているんだ」と明かす。しかし続けて「曲がっていても走るには全然問題ない。エイブルフレンド(14/15年の年度代表馬)に近いものを彼からは感じるんだ。将来的にはマイルを走らせることも考えている」。

漂う「エセロ絶対ムード」を振り払う馬は? ダノンスマッシュの安田助手は「こっちに来るまではうるさかったのに来てからは本当にいい雰囲気」と好気配をうかがわせる。「映像で見ると、エセロは強い。でも、G1ですし、みんながプレッシャーをかければわからない」。龍王(ロードカナロア)のジャージーを着た仕上げ人が語るように唯一の日本馬ダノンスマッシュにも主役の資格はある。そして、3連覇がかかるミスタースタニングも健在。今年のスプリントは必見だ。(つづく)

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