ナッソーSを制し、日本調教馬19年ぶりの英国G1制覇という快挙を成し遂げた日本馬ディアドラ(牝5、橋田)にはグッドウッド攻略の血が流れていた。

ナッソーSの舞台はロンドンから南に向かったグッドウッド競馬場。風光明媚(めいび)で緑色の木々が生い茂り、この時期には「グロリアス・グッドウッド」と呼ばれる華やかな5日間の開催が行われる。

ナッソーSは欧州年度代表馬に輝いたウィジャボードを筆頭にラシアンリズム、アレキサンダーゴールドラン、ピーピングフォーン、ミッデイ、ザフューグ、マインディングなど過去には数多くの名牝たちが制してきたG1。日本調教馬ディアドラの勝利は現地メディアでも大きく報じられた。

陣営の調整が実ったこと、鞍上マーフィーの好騎乗があったこと、そして、ディアドラの快勝劇を語る上で欠かせないのが同馬の血統背景だ。

前走のプリンスオブウェールズSは父ハービンジャーがキングジョージ6世&クイーンエリザベスSで歴史的な圧勝劇を演じたアスコット競馬場が舞台だった。3歳4月の遅いデビューでダービーには間に合わず、古馬になって本格化したハービンジャー。同馬がデビュー3戦目に重賞初制覇を果たした競馬場とレースこそ、グロリアスグッドウッド開催初日のG3ゴードンS(09年7月)だった。

ディアドラの好走につながる、もうひとつの血統背景が3代母ソニックレディの存在だ。83年生まれのヌレイエフ産駒。英愛仏でG1を3勝しているが、そのうちの1つが、「グロリアス・グッドウッド」開催で最も大事なマイルのG1、サセックスS(86年)だった(他のG1制覇は同年愛1000ギニー、ムーランドロンシャン賞)。

レース後、ディアドラ陣営は「ディアドラはハービンジャーの娘で、それがここへやってきた理由の1つです」とコメントしている。ハービンジャーを父に持つだけでなく、3代母(曽祖母)がグッドウッドを代表するG1を制した名牝だったディアドラ。その血統背景と今回の結果を見ると、ナッソーS参戦はまさに英断というほかない。

前走後にはニューマーケットでの調整だけでなく、グッドウッド競馬場で「レースコース・ギャロップ」と呼ばれる実際のコースを使用した追い切りも行っている。数々の名馬を育て上げてきた橋田厩舎。現地の馬場に対応するために最善を尽くしてきたことがレコードタイムでの勝利、60キロという負担重量の克服、鮮やかなイン強襲にもつながっているはずだ。

前走、そして、今回とディアドラ陣営からは現地関係者の協力態勢に何度も感謝の言葉が述べられている。長期の遠征に踏み切った森田藤治オーナーの決断、橋田厩舎の厩舎力、海外の優秀な血統を導入し続けたノーザンファーム・・・、多くのホースマンたちの努力が実り、19年ぶりの日本馬による英国G1制覇、日本馬による伝統あるグッドウッド競馬場のG1初制覇が成し遂げられた。

  1. お得な新入会プラン登場! 競馬情報サイト【極ウマ・プレミアム】
  2. 競馬予想に【ニッカンAI予想アプリ】