勢いは増すばかりだ。億万長者の購買希望者でさえ、ひとたび会場を出ればため息とともに「高い」とこぼす。

今年のセレクトセールも平均落札価格、落札総額は過去最高を更新した。それ以上に注目したいのが上場馬の落札率だ。18年に89・4%だった数字は今年、91・4%に上昇。16年以降、4年連続の記録更新となった。

セリの上場馬名簿に載ることですら狭き門。選ばれし1歳馬、当歳馬が2日間に渡って合計400頭超も登壇する。精鋭の中でもノーザンファーム生産馬のブランド力は突出していた。18年に続き、今年も売却率は100%を記録。同牧場の吉田勝己代表は「馬の質がそろっているということですね」と胸を張る。どの種牡馬の産駒でも、こぞってセリ参加者が手を挙げていた。

人気集中は輝かしい未来が“見える”からだ。同牧場生産馬は18年宝塚記念(ミッキーロケット)から19年オークス(ラヴズオンリーユー)まで、芝マイル以上のG1で18連勝を飾った。ダービー馬ロジャーバローズは日高の飛野牧場出身だが、育成はノーザンファーム空港。繁殖牝馬、調教施設に高額を投資し、活躍馬は次代に血を還元する。生産、育成の好循環がブランド力を確固たるものにした。「ノーザンファームの独り勝ちだね」とは近藤利一オーナー。“ノーザン絡み”の馬は日本競馬の絶対的中心を担う。

1強状態はセリにとって悪いことばかりではない。同生産馬が高額化することで、目的の子馬購入がかなわなかった馬主が他牧場の生産馬へ流れる。そもそも、セレクトセールは全上場馬が高品質。社台ファームの吉田照哉代表は「いつもなら3000万あたりで落ちる馬が4、5000万になっていた」と振り返る。他牧場生産馬は受け皿の立場となったが、ノーザン人気の余波で落札率、購買価格が引き上げられた印象を受けた。結果的に多くの牧場が潤い、ゆくゆくは生産界の底上げにもつながっていくはずだ。【松田直樹】

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