<天皇賞・秋>◇29日=東京◇G1◇芝2000メートル◇3歳上◇出走18頭

 1番人気キタサンブラック(牡5、清水久)が天皇賞・春秋連覇でG1・6勝目を挙げた。不良馬場のなか、出遅れをリカバーし、直線は内から抜け出して勝利。武豊騎手(48)の冷静かつ大胆な騎乗が光った。鞍上は春秋合わせて天皇賞14勝目。劇的な勝利に、北島三郎オーナー(81)も喜びを爆発させた。2着はサトノクラウン。3着には13番人気のレインボーラインが入った。

 これが日本最強馬だ。横一線に泥しぶきが広がるなか、最内からキタサンブラックが伸びてきた。残り400メートル以上を残して先頭へ。外からサトノクラウンが迫ると闘志を再点火させ、最後は内に切り替えたライバルを首差振り切った。「(2着馬の)足音は聞こえていたけど、押し切れると思った」(武豊騎手)。ゴール直後、右手を熱く、激しく振り下ろした名手のガッツポーズが、雨中の激闘を物語っていた。

 天才が、悲鳴を歓声に変えた。まさかの出遅れ。最後方に近い位置からレースを始めた。「前扉に突進してしまって。体を後ろに下げたところで、ゲートが開いた」。同様の経験がなかったブラックにとって、予期せぬ展開にも思えた。ただ、日本最強騎手は違う。

 「今までもゲートで元気なところはあった馬。必ず前でとは思っていなかったし、それならそれでと」

 作戦は大胆だった。馬群の内からスイスイと位置を上げ、3コーナーの手前では好位の一角まで挽回。4コーナーも内にこだわった。降りしきる雨で、荒れに荒れた不良馬場。各騎手が内を避けたのとは対照的だった。「道中もそれほど(道悪を)苦にしなかったので」。初めての作戦を遂行しながら、手応えを確かめる冷静さもあった。

 30年もの間、期待に応えてきた第一人者ならではの1勝だ。かねて言う。「いちばんの喜びは1番人気で勝つこと。期待に応えることだから。競馬で緊張した記憶はあまりない」。G1・3連勝が期待された前走・宝塚記念は9着。それでも今回、ファンはブラックを1番人気に推した。「結果を出さないと、と思っていた。今日はキタサンブラックらしい走りができた。大きな1勝」。14回目の天皇盾が重みを増した。

 ブラックにとっては、最強の座を奪い返したG1・6勝目だ。すでに今年限りでの引退を発表済み。ただ、惜しむのはまだ早い。ジャパンC、そして有馬記念。まだ2回も、キタサンブラックが見られる。「この馬にとってもラストシーズン。手綱を任されている責任を感じている」と鞍上の思いも同じ。今回の勝利で、歴代最多となるJRA・G1・8勝の夢にも望みをつないだ。「そうなるよう、全力を尽くします」。祭りは続く。【柏山自夢】

 ◆勝ち時計の2分8秒3は、2000メートルになった84年以降で最も遅い。不良馬場での実施は91年(1着プレクラスニー)以来、26年ぶり。雨で不良馬場での実施は69年(1着メジロタイヨウ)以来、48年ぶり。

 ◆単勝1番人気の優勝 15年ラブリーデイ、16年モーリスに続く3年連続の勝利。88年~99年まで1番人気馬が12連敗したこともある天皇賞・秋だが、今年を含めて過去10年では5勝、2着2回、3着2回。

<ブラック&武豊アラカルト>

 ◆G1・6勝目 天皇賞・春に続く今年3勝目のJRA・G1制覇。通算では6勝目となり、グレード制導入の84年以降では9頭目の快挙。歴代最多タイまであと1勝。

 ◆歴代2位 JRA競走での獲得賞金は14億9796万1000円となり、ディープインパクト(14億5455万1000円)を抜いて歴代2位となった。こちらも残り2戦での記録更新が見えてきた。

 ◆盾3勝 16、17年の春に続くV。テイエムオペラオー(00年春秋、01年春)以来、史上2頭目。

 ◆史上5頭目 同一年の天皇賞春秋連覇は88年タマモクロス、99年スペシャルウィーク、00年テイエムオペラオー、07年メイショウサムソンに次ぐ、5頭目。

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