<日刊スポーツ:1993年11月29日付>

 プレーバック日刊スポーツ! 過去の11月29日付紙面を振り返ります。1993年の1面(東京版)は競馬G1のジャパンカップで起こった1番人気馬の騎手の大失態でした。


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<ジャパンカップ>◇28日=東京◇G1◇芝2400メートル◇出走16頭

 1番人気コタシャーンのケント・デザーモ騎手(23=米)が信じられないミスを演じた。ゴール手前100メートル標識をゴールと誤り、いったん追うのをやめてしまった。慌てて再び追い出し2着は確保したが、優勝したレガシーワールドから1馬身1/4差に敗れた。世界一の騎手らしからぬ大失態で、華やかな競馬の世界選手権が台無しになった。

 内で粘るレガシーワールド、外から米のビッグレース、ブリーダーズカップの優勝馬コタシャーンが1馬身半差で追う。2頭の間をウイニングチケット、プラティニが伸びる。4頭の争いはラスト100メートルに持ち越された。と、その時だ。一番外のコタシャーンのデザーモ騎手が腰を浮かせて追うのをやめてしまった。その間およそ2秒。ミスに気づいたデザーモ騎手は慌てて追い出し、プラティニ、ウイニングチケットをかわして2着に入った。

 単勝1番人気(5・2倍)、1億4906万円余り(全単勝売り上げの15%)が投じられた騎手のゴール板誤認。最終レース終了後、あっさりと自らの非を認めた。「一生懸命追って、顔を上げたら太陽が目に入った。その時に左に100メートル標識が見えてそれをゴールと間違えた。もし間違えなかったら、1着になっていたかもしれない。コタシャーンのファンに大変申し訳ないことをした。謝っても謝り切れない。今はパニック状態だ」。

 3Rの新馬戦では、単勝1番人気のスギノガイセンモンに騎乗して、同じようにラスト100メートル標識をゴールと間違えて追うのをやめてしまった(3着)。そのことで裁決委員から呼ばれて注意を受けている。1日2回、同じ場所で誤認するとは米の超一流騎手らしからぬボーンヘッド(本人は3Rの誤認は否定)だ。

 JRAは最終レース終了後、制裁を発表。それによると「最後の直線コースでの騎乗ぶりについて過怠金(罰金)5万円」と、過怠金としては最高額を科した。だが、昨年2月8日の東京競馬で田面木博公騎手のゴール板誤認と見られる騎乗があり、騎乗停止30日間(実効9日)が科された。今原照之裁決委員(52)は「順位に明らかに影響があったと思われる場合に騎乗停止処分などを科すが、デザーモ騎手の場合はそこまではいっていないと判断した」と説明する。

 海外から訪れた記者団もこの決定には首をひねる。豪州のスポーツ誌、「メルボルン・エイジ」のトニー・ブルーク氏(53)は「豪州なら間違いなく騎乗停止だ」と憤慨する。またIRB(国際レーシング・ビューロー)のサイモン・クーパー氏(34=英、スポーティングライフ特派員)も「5万円なんてただみたいなものじゃないか。オーナーや調教師、ファンにどれだけの損害を与えたと思うのか。英国なら最高で3200ポンド(約52万8000円)まで制裁金があるのに」と言う。

今年は世界最高レベルの馬が集まったジャパンカップだが、デザーモ騎手のボーンヘッドが名勝負を一転して後味の悪いものに変えてしまった。このハプニングの最大の被害者は勝利の感動を薄められてしまったレガシーワールドの関係者だろう。

※表記は当時のもの

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