<G1プレーバック:2005年エリザベス女王杯>

 プレーバック日刊スポーツ! 過去のエリザベス女王杯を紙面で振り返ります。2005年は33秒2の爆発的な末脚で差し切ったスイープトウショウでした。

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<エリザベス女王杯>◇2005年11月13日=京都◇G1◇芝2200メートル◇3歳上牝◇出走18頭

 5頭のG1ホースがそろった最強牝馬決定戦は、単勝2番人気のスイープトウショウ(牝4、栗東・鶴留)が33秒2の爆発的な末脚で快勝した。2週前の天皇賞(秋)はスローペースに泣いた、春のグランプリホースによる鮮やかな復活劇。池添謙一騎手(26)の手綱に導かれ、逃げるオースミハルカをゴール寸前でとらえ切った。宝塚記念に続く今年2つめのG1制覇。最優秀古馬牝馬のタイトルが大きく近づいてきた。

 4コーナーを回って残り400メートル、逃げるオースミハルカとの差は、まだ50メートルあった。軽快に飛ばす白い帽子を視線の先に確認して、池添は心の中でつぶやいた。「届かない」。スタンドの鶴留明雄師(64)も敗戦を覚悟した。「かわせない。2着だ」。決定的な差。誰もが勝負あったと思ったその瞬間、スイープトウショウが底力を見せつけた。

 すぐ前で馬群をさばくアドマイヤグルーヴの動きに乗って外へと持ち出すと、自慢の末脚が点火する。残り300メートルでは「まだ届かない」と思っていた池添も、風を切って飛ばす愛馬の背中で闘志を取り戻した。必死にステッキを飛ばし、必死に追った。「ためていた分だけ爆発してくれた。最後は差せると思ったし、横を見る余裕があった」。18頭最速の末脚は33秒2。勝利を確信していたハルカの野望を、最後の1完歩で粉砕した。

 いつもなら歓喜の雄叫びを上げる池添も、淡々と勝利を味をかみしめた。ゴールの瞬間、込み上げてきた思いはただ1つ。「ホッとした。今日は馬に助けてもらいました」。引き揚げてくるときに小さなガッツポーズだけ。ファンに向けての派手なアクションは見られなかった。

 牝馬同士の競馬なら絶対に落とせない。17頭以外に様々なプレッシャーと戦っていた。「ちゃんと返し馬をしてくれるか。ちゃんとゲートに入ってくれるか」。池添はそればかりを考えていた。天皇賞では出来なかった返し馬が、スムーズにできた。ゲートにもすんなりと入った。2つの難関をクリアし、もうレースが終わったような感覚に襲われた。「まだこれからレースなのか」。再び気持ちを集中し、2200メートルを乗り切った。

 昨年の秋華賞、今年の宝塚記念に続く3つ目のG1制覇。ヘヴンリーロマンスとの最優秀古馬牝馬争いも1歩リードした。激戦を終えた名牝はつかの間の休養に入り、来年に備える。「どこかへ放牧に出して、来年また使いたい」と鶴留師。具体的な予定は決まっていないが、再び牡馬との戦いに挑むことになる。

 関係者の歓喜に沸く検量室前で、馬上の池添は遅ればせながら喜びを爆発させた。「やった〜!」。左の薬指に付けたリングに口づけし、両腕を高々と突き上げた。「本当に気疲れしました。今日はおいしい酒が飲めそうです」。無念の天皇賞から2週間。待ちに待った瞬間に、ヒーローがようやく笑った。

※記録と表記は当時のもの

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