トラッキングシステム運用開始 4月22日から エンタメ性アップ、世界にも発信

競走馬トラッキングシステム(JRA提供)
競走馬トラッキングシステム(JRA提供)

春からレースがぐっと見やすくなる。今回の「ケイバラプソディー~楽しい競馬~」は4月22日から一部レースで運用が始まる競走馬トラッキングシステムを、東京の松田直樹記者が紹介する。出走各馬がGPSセンサーを装着することで位置取りをグラフィック化。映像面でも日本の競馬は世界水準となる。

    ◇    ◇    ◇

目から得る情報がより増える。4月22日に京都競馬場がグランドオープンを迎える。競馬場新装に合わせて導入されるのが、レース映像の下部に全頭の位置取りが表示される、競走馬トラッキングシステムだ。各馬の馬番が展開と連動して細かく動くのは、さながらゲーム画面のよう。出走馬のゼッケンに緯度、経度を収集するGPSセンサーを装着することで、細かなポジショニングを映像に反映できるようになった。

JRA総合企画部経営企画室の鶴岡史隆上席調査役は「初心者やライトファンへより親切に、優しいレース映像の提供が目的です」と話す。欧州で主流となっているLTE通信を用いた方式の導入検討を20年ごろから開始。テストを繰り返し、本格運用を迎える。

現在、テレビ中継などでも見られる先頭から3頭までの順番表示は、JRA職員の手入力によって行われている。それがわずか1~1・5秒のタイムラグをもって、レースの全体像が把握できるようになる。今春は主要競馬場での大レースが対象の見込み。サンプル映像を見せてもらったが、従来のものより格段に分かりやすい。

正確なGPSセンサーがもたらす情報は多い。全馬のラップタイムはもちろん、時速、走行距離の取得も可能になる。例えば12年阪神大賞典。場内がどよめいた3冠馬オルフェーヴルの3角逸走に似た事象が発生した際は、どれだけの距離を余分に走ったかなどが詳細に分かる。全レースの導入時期やデータの開示範囲の決定は先の話になりそうだが、革新的な試みだ。

先日のサウジCのパンサラッサ優勝など、最近の日本馬の活躍は目を見張るものがある。鶴岡上席調査役は「世界的に見ても馬の質、レースの質は高いのは事実。より海外に向けて発信していくべきでは」とも言う。海外向けに配信される動画にも、競走馬トラッキングシステムのグラフィックが組み込まれる予定。日本の競馬は視覚的な面でも世界に追いつく。見た目のエンターテインメント性の向上は、国内外で新規ファン開拓などのメリットも生む。競馬観戦は新時代を迎えようとしている。

(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー」~楽しい競馬~)

 [2023年03月14日 09時23分 紙面から]

一覧

一覧へ