オークスで史上最長15分の発走遅延 放馬除外マニュアル通りだが・・・より円滑にルール見直し必要

5月22日、オークスの発走前に保護されたサウンドビバーチェ
5月22日、オークスの発走前に保護されたサウンドビバーチェ

「ケイバラプソディー ~楽しい競馬~」は、84年のグレード制導入後、史上最長15分の発走時刻遅延となった先日のオークスを取り上げる。ちょっと時間がかかりすぎでは? 地方競馬も大好きで、他場での速やかな対応例が記憶にあった舟元祐二記者が疑問をぶつけた。

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5月22日の午後3時40分。第83回オークス。レース後の取材のため、あらかじめ検量室横のテレビの前にいた。スタートを今か今かと待っているとアナウンスが流れた。サウンドビバーチェの放馬だった。テレビ画面にその姿が写し出された。3、4コーナーを逆走し、向正面付近まで行く同馬。スタッフがロープを張り、制止をかけようとするも止まらず。放馬からおよそ3分後。馬が疲れたのか、脚取りが遅くなり保護された。「除外だろうな」。検量室前の記者たちはそろってつぶやいた。僕自身も当然だと思った。

地方競馬に前例があったからだ。09年盛岡クラスターC。馬場入りの際、ゼンノスカイブルーが放馬した。放馬から約4分。まだ保護されていない状況で「かなりの距離を走ったため競走能力に影響があるとみられ除外」とアナウンス。放馬から6分後に同馬は保護された。あくまで1例だが柔軟な対応だったと思う。

今回同じような判断はできなかったのか。JRA裁決委員に取材したところ「JRAでは馬体検査を実施せずに競走除外にすることはない」との返答だった。放馬した場合は「捕捉後速やかにJRA獣医師による馬体検査を実施して、その時点で異常が認められれば競走除外もある。しかし問題がなければ発走地点まで移動させ再度馬体検査を行い、最終的な判断をする」という規則がある。サウンドビバーチェは3角付近で捕捉時点の馬体検査(心拍数、外傷の有無、歩様など)で異常が認められなかった。そのため、ゲート裏まで移動後に再度馬体検査が行われて、その際に顔面右側に腫れや出血が認められ競走除外になった。結果的に時間は要したが、マニュアル通りの対応ではあった。

発走は15分遅れ。除外が決まるまで他17頭は待たされることとなった。当日は晴天で気温25・5度の夏日。前日には降雨がありむしむしした状況だった。暑さに弱い競走馬に何かしらの影響があるのは想像に難くない。JRAは可能な限り速やかに、円滑なレース実施に努めるという方針を示している。サウンドビバーチェは他馬に顔を蹴られたことで放馬した。放馬が起こってからの対応の早さも大事だが、他馬に蹴られずに済むように、輪乗りの際に間隔を空けるなど改善点はある。酷暑の中で待たされた馬にも体調悪化の恐れがあるかもしれない。再発防止策、運用ルールの見直しが必要ではないのか。競走馬、ファンのために、ぜひJRAには取り組んでもらいたい。

【舟元祐二】(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー ~楽しい競馬~」)

 [2022年06月07日 09時25分 紙面から]

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