【記者の提言】藤沢和雄記念の創設を・・・レースにその名を残すべきではないか

レース名に「藤沢和雄」の名前を残せないものか-。通算1570勝、重賞126勝。JRAを代表する名伯楽の偉業「通算1000勝」や「通算1500勝」をたたえる石碑が美浦トレセンにはあるのだが・・・。偉大な馬や騎手、調教師、生産者、ホースマンの功績をわかりやすく、確実に後世へ伝えていくにはレースにその名を冠するのが間違いなく最高の方法だと思う。

先月、ラヴズオンリーユーの引退式当日に香港(シャティン競馬場)で同馬の名を冠した「ラヴズオンリーユーハンデキャップ」が行われたニュースは大きな反響を呼んだ。インターネット上は主催者(香港ジョッキークラブ)の柔軟な発想と行動力をたたえるコメントであふれ、競馬ファンがこうした取り組みを歓迎していることを感じさせた。香港はG1レースが行われる日のアンダーカードに過去の名馬の名前をつけることが多い。JRAでも過去にさまざまなメモリアル競走が行われてきた。最近ではキズナが勝った13年ダービー当日にシンザン、タケホープ、シンボリルドルフ、ワカタカなど過去のダービー馬の名前がレース名に冠されたことがあり、好評を博した。ただ、これらはいずれも単発であり、継続的なレース名ではなかった。きちんとレース名に、恒久的に名馬や名ホースマンたちの名前を残せないだろうか。

JRA史上2位の勝利数。馬房数の制限がある現在の仕組みでは、圧倒的な数字を挙げたのが藤沢和師だ。「これだけの記録を競馬界に残した藤沢和先生の名前がレース名にならないかな。絶対にみんなの励みになると思うんだよ」。日頃の取材の最中に幾度となく、師を慕う競馬関係者たちが、そうやって切望する声を聞いた。

特別競走のレース名はJRAの本部番組企画室企画課、トレセン競走課およびレースを実施する競馬場の担当者で原案を作成しているとのこと。近年では弥生賞が「弥生賞ディープインパクト記念」になった。決定の経緯をうかがうと、そこには歴史の重み=高いハードルがある。「ディープインパクトについてはクラシック3冠を含むG1競走7勝といった輝かしい競走成績のみならず、種牡馬としても海外を含むG1馬を数多く輩出、内国産馬としては最長の7年連続(当時)リーディングサイアーとなった点などから、従来採用されてきた3頭(セントライト、シンザン、トキノミノル)と比べて遜色ない実績であると評価し、約50年振りに馬名を競走名に採用することとしました」(JRA)。

もっと積極的にレース名に名馬や競馬界に貢献した人の名をつけるべき、つけてほしいという声があることについても聞いてみた。「過去にはJRA50周年および60周年を記念して、顕彰馬・年度代表馬やファン投票で選出された馬の名前をレース名に付しており、また、第80回日本ダービーにおいては各年代のダービー優勝馬の馬名を付したレースを実施するなど、節目や記念の年において、歴史を振り返るとともにその功績をたたえて馬名を付しております。また、令和元年から『JRAアニバーサリー』事業の一環として、過去(10年前・20年前)の年度代表馬の馬名を付した競走を実施しております。このようにさまざまな取り組みの中で馬名をレース名に取り入れることについては実施しております。なお、今後ディープインパクト等に匹敵するような実績を残した馬が出現した場合には、継続的なレース名とすることも検討したいと考えています」(JRA)

藤沢和師がタイキシャトルで制した欧州の夏のマイル王を決める「ジャックルマロワ賞」も、同じドーヴィルの「モーリスドギース賞」もフランスの競馬界に貢献した人の名前が由来だ。オーストラリア(シドニー地区)のトップスプリンターを決めるG1「TJスミス」は同地の伝説的トレーナーの名前が由来。日本は有馬記念、安田記念が人名由来のG1として知られている。皇室から名前を与えられたレースも多い。英国のG1競走は競馬界に貢献した皇族と貴族の名前がレース名になったケースが多い。

馬の名前や個人の名前を付けるとなると、「じゃあ、この人は?」「この馬は?」、そういう声も上がるだろうが、レース名を決める権利がある主催者が毅然(きぜん)と決断すればいいと思う。できないのであれば、投票を行うなどして、ファンの声を尊重する形にしてもいい。ファンに長く愛される名称になるのであれば、G1でなくてもいいだろう。現状、特に意味のない石や花の名前がついているレース名に代えて、あるいは副題として、かつての名馬、偉大なホースマンたちの名前を刻んでほしい。その皮切りとして、引退する藤沢和雄師の名前を残してほしい。いつの日か、不世出の名手である武豊騎手の名を冠した武豊記念もできるだろう。

記者が勝手に候補を挙げるなら、青葉賞(4勝を挙げたダービートライアル)、京王杯SC(計8勝)、葉牡丹賞(ダービー馬レイデオロを含む計6勝)、谷川岳S(ガルダンで厩舎初勝利。タイキブリザードなどで4勝)、山吹賞(シンボリクリスエス、ゼンノロブロイが勝利)。このあたりのどれかを「藤沢和雄記念」あるいは「藤沢和雄メモリアル○○賞・○○S」のようにできないか。偉大な活躍をしたホースマンに対し、その活躍に値する栄誉を与えることで記録は輝き、競馬はより魅力的なものになるはずだ。英断を期待したい。【木南友輔】

◆レース名を決めるときに参考にしているものは?「原則として2歳および3歳春の競走には、その季節の花、草木の名前を(カトレア、さざんか、福寿草など)、3(4)歳以上の競走につきましては、季節にちなむ名称、競馬場周辺の地名、河川、湖沼、山岳名、また誕生石、月名、星座名等を付しております。これらは辞書・辞典、地図や図鑑、星座の本などを参考にしています。また、京都の「栞S」や福島で実施した「エールS」など、時々の状況に応じて特別な意味を込めた競走名を付すケースもあります」(JRA)。

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