半世紀前の3強対決は3番人気馬が豪快差し切り
凱旋門賞やブリーダーズCなど海外の大レースでビッグネームがぶつかった例はありますが、これほどキャラの立った3強の対決は空前絶後でしょう。まだ見ぬ世界の強豪を迎えて国際招待競走として最初の1歩をしるした約40年前の第1回ジャパンCに感じたワクワク感を思い出させます。
海外で今回の3強対決に近いものを挙げるとすれば、のちにそれぞれが名馬への道を歩むミルリーフとブリガディアジェラード、それにマイスワローの3頭が初対決した71年の英2000ギニー(芝直線1600メートル)でしょう。その後に英ダービーや凱旋門賞を制して20世紀を代表する欧州名馬となるミルリーフはこのレースまで7戦6勝。ブリガディアジェラードは2歳時に4戦全勝。生涯18戦17勝の名馬でした。マイスワローはのちに種牡馬として日本に迎えられた良血馬。2歳重賞のロベールパパン賞で難攻不落と言われたミルリーフを短頭差の2着に破るなどデビューから8連勝を飾って駒を進めました。
ファンの支持はミルリーフ、マイスワロー、ブリガディアジェラードの順。レースは先頭を主張したマイスワローをミルリーフが2番手でマーク。一騎打ちとみられたところを待機策のブリガディアジェラードが豪快に差し切って優勝。「史上最高メンバー」の英2000ギニーの覇者となりました。ミルリーフは3馬身離された2着、マイスワローはさらに3/4馬身差の3着でした。ブリガディアジェラードは休み明けが嫌われて人気を落としていましたが、最も得意とした直線のマイル戦を味方にして歴史に名を刻んだのです。
翻って29日のジャパンC。アーモンドアイ、コントレイル、デアリングタクトの3頭とも東京芝2400メートルで強い競馬をしており、いずれもが力を出せる舞台だけに頭を悩ませます。2頭によるマッチレースは先行有利が定石になっていますが、約半世紀前の世紀の一戦は、ライバルたちを前に置いて「ケイバ」を仕掛ける馬を狙えと教えているような気がします。【奥野庸介】(ニッカンスポーツ・コム/極ウマコラム「ワールドホースレーシング」)