地元勢完全Vで幕、縮まる香港と日本との差/コラム
日曜の香港国際競走は地元勢による完全制覇で幕を閉じました。お家芸の香港スプリントでは6着までを独占。他の3つの競走の2着馬が、すべて日本馬という結果になりました。
今年は米国からの参戦がなく、オセアニア勢も香港マイルで12着に敗れたカミンスルーの1頭のみ。最も賞金が高い香港カップも欧州勢は英国のストーミーアンタークティック(8着)だけで、全体的に日本VS香港の対抗戦のおもむきを色濃くしました。
地元勢による4競走完全制覇は現在のスタイルになった99年以降で初めて。このうちの2つ(スプリントとカップ)をネイティブのF・ロー調教師が制したことは翌日の新聞でも大きく扱われました。
ここ数年の香港競馬は主催者の香港ジョッキークラブ(HKJC)とその会員である馬主の総意によって世界に通用する競馬国を目指した強化策が着々と進められています。
HKJCによって中国本土の広州に建設された従化区(ツォンファー)競馬場はその象徴です。本格的な稼働はもう少し先になりそうですが、これまで競馬場だけで行われていたトレーニングが、芝の坂路コースを持つ広大な調教施設に移されることはさらなる強化につながるはず。香港競馬といえば短距離の層の厚さだけが取り上げられていましたが、最近は馬主が海外で買いつけてくる自由購買馬はもちろん、HKJC自らが世界各国の1歳馬セリで購買して調教を施したのちにセリで売却する馬の中にも距離延長を意識した血統の導入が目立つようになっています。香港マイルのビューティージェネレーションや香港ヴァーズのエグザルタントはその成功例と言えるかもしれません。
英国統治下に生まれて成長してきた香港競馬は「御雇い外国人支配」でここまで来ましたが、最近は地元はえぬきの調教師、騎手を支援して人材育成につなげようという機運が盛り上がっています。F・ロー調教師はその代表です。HKJCは番組の編成においても今は極端に数が少ない2000メートルや2400メートルのレースを増やすことを検討しているとも聞きます。これらのさまざまな改革は日本を強く意識したもの。ライバルの足音がすぐ近くまで迫っていることを知った今年の香港国際競走でした。【奥野庸介】(ニッカンスポーツ・コム/極ウマコラム「ワールドホースレーシング」)