勝敗その一瞬〜重賞振り返り〜

速い流れを読んでレースプランを変更した田辺騎手の柔軟な対応/東京新聞杯

<東京新聞杯>

イルーシヴパンサーが4角14番手から鮮やかな差し切りを決めた。開幕2週目の高速馬場。後ろから行くのは勇気がいるが、田辺騎手は「中団くらいにつけられれば」というレースプランを変更。スタートしてすぐに馬群から下げた。

逃げたトーラスジェミニに、ケイデンスコール、ディアンドルが絡む。最初の1ハロンこそ12秒2で出たが、2ハロン目は11秒1にペースアップ。その後もゴールまで11秒台を刻み続けた。田辺騎手はよどみない流れを読んでじっくり待機。ポジションより走りのリズムを重視した。

もともと折り合いに課題のある馬。無理についていけば、掛かってスムーズさを欠いたかもしれない。だからしまいに懸けた。4角でジワッと外へ出し、そこからは1完歩ごとに前との差を詰め、残り200メートルで先頭に躍り出た。1頭になっても集中力を切らさず、ラスト1ハロンも11秒7の完勝だった。

当初のレースプラン通りに競馬を進めることも可能だったが、周囲の出方や馬のリズムを重視して、控える戦法に切り替えた。このあたりが田辺騎手の巧みさだ。3カ月の休養を挟みながらの4連勝。素質の芽を摘まないように育てた陣営と、鞍上の「柔軟な対応」が初タイトル獲得につながった。

東京新聞杯を快勝したイルーシヴパンサーと田辺騎手(2022年2月6日撮影)

東京新聞杯を快勝したイルーシヴパンサーと田辺騎手(2022年2月6日撮影)

 [2022年02月07日]

水島晴之
水島晴之(みずしま・はるゆき)1960年(昭和35年)10月25日、東京都生まれ。0歳から東京競馬場で英才教育。カタカナを覚えるのは早かった。小3の時、競馬専門紙の「ダービー観戦記」に応募。佳作に選ばれスポーツ新聞の取材を受ける。15年後、その道へ。タケシバオー最強説を唱える。

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