勝敗その一瞬〜重賞振り返り〜

横山武が確保した「特等席」エフフォーリアの1冠をアシスト/皐月賞

<皐月賞>◇18日=中山◇G1◇芝2000メートル◇3歳◇出走16頭

エフフォーリアの横山武騎手は、コース取りがうまかった。2コーナーを3番手の内で回ると、逃げたワールドリバイバルの後ろではなく、ラチ沿いを1頭分空けて2番手タイトルホルダーの直後につけた。この「特等席」を手に入れたことが1番の勝因だ。

馬場の荒れた内を避けたこともあるが、それだけではない。馬の後ろで折り合いをつけると、外のダノンザキッドに体を寄せて壁の外へ放り出した。何気ない動きだがライバルにダメージを与えたのは言うまでもない。スムーズに運べたエフフォーリアに対し、掛かり気味に進出したレッドベルオーブ、アサマノイタズラに絡まれたダノンザキッドは、なし崩しに脚を使わされて体力を消耗した。

もし、逃げ馬の後ろに入っていたら「特等席」をダノンに明け渡し、勝負どころで前の馬が下がってきた時の対処も難しくなった。内側にスペースを作ることで、いざという時の“逃げ道”を確保。慌てて前を追いかけることなく流れに乗った。

前半1000メートル60秒3は平均だが、前夜に降った雨の影響でタフなコンディション。上がり3ハロンが37秒0かかったのを見ても、どこかで脚をためなければ苦しくなる。残り1000→800メートルで外の先行勢がペースを上げたところで、ひと呼吸待てたのもコース取りがうまくいった証拠だ。

横山武騎手が追いだしたのは4コーナー手前。逃げ馬をかわすと、タイトルホルダーの内へ。自慢の瞬発力で先頭に立つと一気に突き放した。時計のかかる馬場を考えた先行策、勝負どころでの「ため」、そして仕掛けのタイミング。デビュー5年目、22歳とは思えない冷静な判断が、初のG1タイトルをもたらした。

直線抜け出したエフフォーリア(左)、右から2頭目が2着タイトルホルダー(2021年4月18日撮影)

直線抜け出したエフフォーリア(左)、右から2頭目が2着タイトルホルダー(2021年4月18日撮影)

 [2021年04月19日]

水島晴之
水島晴之(みずしま・はるゆき)1960年(昭和35年)10月25日、東京都生まれ。0歳から東京競馬場で英才教育。カタカナを覚えるのは早かった。小3の時、競馬専門紙の「ダービー観戦記」に応募。佳作に選ばれスポーツ新聞の取材を受ける。15年後、その道へ。タケシバオー最強説を唱える。

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