勝敗その一瞬〜重賞振り返り〜

馬体を寄せて進路を確保した川田の判断/高松宮記念

<高松宮記念>

ダノンスマッシュの川田騎手は、レシステンシアの内に馬体を滑り込ませた。内セイウンコウセイとのわずかなスペースを突く。この瞬時の判断が首差の勝利を引き寄せた。

前半は走りのリズムを重視して、あえてポジションは取りにいかず。レース序盤はすぐ前のレシステンシアを目標に中団で脚をためた。あとは直線でどこを割るか。この選択だけ。しばらく壁の後ろだったが、セイウンコウセイが外へ振ったことで、少しばらけて進路ができた。川田騎手は間髪入れず2頭の間へ。レシステンシアに馬体を預けるように体をねじ込んだ。

狙ったコースを閉められたら終わり。内側に張り付くことでライバルの横への動きを止め、スペースを確保した。偶然、前が開いたようにも見えるが、そうではない。道悪(重)で体力を消耗する馬場。余計な動きをすれば、しまいの伸びに影響する。直線に向くまでは「静」。そこから一気に「動」へ。このタイミングが絶妙だった。

鞍上のアクションにダノンスマッシュも応えた。直線で狭いスペースを割ってくる時、セイウンコウセイ幸騎手の右ステッキが気になったはず。ひるまずに抜けた根性もすごい。香港スプリントを勝って、フィジカルだけじゃなくメンタルも強くなった。父ロードカナロアもそうだが、今回のように中団でためる競馬ができれば、マイルG1でもチャンスはある。

高松宮記念を制したダノンスマッシュ(撮影・森本幸一)

高松宮記念を制したダノンスマッシュ(撮影・森本幸一)

 [2021年03月29日]

水島晴之
水島晴之(みずしま・はるゆき)1960年(昭和35年)10月25日、東京都生まれ。0歳から東京競馬場で英才教育。カタカナを覚えるのは早かった。小3の時、競馬専門紙の「ダービー観戦記」に応募。佳作に選ばれスポーツ新聞の取材を受ける。15年後、その道へ。タケシバオー最強説を唱える。

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