引退馬支援 競走馬、乗馬に続く「第3の馬生」を
<角居勝彦調教師 Thanks Horse(13)>
来月末で引退する角居勝彦調教師(56)が競馬を語る月イチ連載コラム「Thanks Horse」第13回は、厩舎解散後も携わっていく引退馬支援の活動について語る。現在の課題は「第3の馬生」。競走馬と乗馬に続くサードキャリアの構築を目指していく。
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調教師として最後の年が始まりました。まさかサートゥルナーリアが私より先に引退するとは思いませんでしたが・・・。彼には種牡馬という次のキャリアで頑張ってくれることを願います。うまくいけば、兄のエピファネイアやリオンディーズを超える活躍ができるかもしれません。
こうして種牡馬や繁殖牝馬になれるのは引退した競走馬のうちごく少数で、行き場のない馬たちは処分されてしまうという現実があります。私たちが取り組む引退馬支援の活動では、セカンドキャリアの構築として、競走馬を再調教して乗馬にする「リトレーニング」を1つの柱としてきました。JRAからの支援も始まり、おかげさまで徐々に軌道に乗ってきました。
一方で、新しい乗馬がどんどん供給されると、高齢や故障などで人を乗せることが難しくなった乗馬が押し出される形で行き場を失ってしまいます。そんな馬たちが処分されるのを防ぐためには、競走馬と乗馬に続く「第3の馬生」を用意しなければなりません。
そのモデルケースとして、祖父の出身地でもある石川県の珠洲市(すずし)で、馬の「終(つい)のすみか」となる牧場を立ち上げました。人を乗せられなくなった馬たちが余生を過ごしつつ、雑草を食べたり、ボロ(馬ふん)を肥料にしたり、お客さんとふれ合ったりして、自分の“食いぶち”を稼ぐという形です。
クラウドファンディングで資金を集め、珠洲市ともタイアップして、まずは3馬房の厩舎を建てる予定です。すでに16歳のドリームシグナル(08年日刊スポーツ賞シンザン記念勝ち馬)が暮らしています。私が引退後に住む場所からも近いので、ここで成功例をつくって、全国で人がいなくて土地が余っている過疎地の活性化として広がっていけばと思います。
馬を活用した農業も考えています。たとえば田んぼに馬が入って耕して、ボロを肥料にすれば「馬がつくったお米」として売り出せるかもしれません。ほかにも、石油に代わる燃料として注目されるペレットを作るために、間伐した木を馬が運ぶという取り組みを始めた牧場もあります。クリーンエネルギーやSDGs(持続可能な開発目標)にもつながる活動だと思います。
大事なのは、馬が活躍することで収入を得て自活できる仕組みをつくることです。クラウドファンディングや寄付は本当にありがたいことですが、それに頼りっぱなしでは真の解決にはなりません。競馬界だけでなく、行政や別の業界の企業にも賛同してもらって、馬の活躍の場や携わる人間をどんどん増やしていくことが重要です。私は引退した後も引き続き取り組んでいくつもりです。競馬ファンの方々からもアイデアをいただければと思いますし、ご理解やご協力をお願いいたします。(JRA調教師)
※次回の「Thanks Horse」は2月19日(金)に掲載予定です
角居師が代表理事を務めるホースコミュニティと、東映エージエンシー競馬グッズ販売部門が共同で、引退馬および競馬グッズ支援のクラウドファンディングを実施している。コロナ禍で大打撃を受けている競馬グッズ企画販売事業の存続、発展を目指すもので、同時に支援金の一部をホースコミュニティの引退場支援事業に活用する。角居調教師が勇退する2月28日まで実施される。
主な返戻品は次の通り。
【角居師勇退記念コース】
・角居調教師の直筆サインmini色紙セット
【東映エージエンシー mini色紙コース】
・ルメール騎手直筆サイン入りウオッカ号
・ルメール騎手直筆サイン入りアーモンドアイ号
・北村友一騎手直筆サイン入りクロノジェネシス号
・松山弘平騎手直筆ライン入りデアリングタクト号
・デムーロ騎手直筆サイン入りヴィクトワールピサ号
・デムーロ騎手直筆サイン入りキセキ号
・石神深一騎手直筆サイン入りオジュウチョウサン&コウキチョウサン
・池添謙一騎手直筆サイン入りオルフェーヴル号
・吉田隼人騎手直筆サイン入りソダシ号
・内田博幸騎手直筆サイン入りゴールドシップ号
・レーン騎手直筆サイン入りリスグラシュー号
その他にも、名馬しおりコレクション、G1トレーディングmini色紙、ウマ娘プリティーダービーシーズン2mini色紙、名馬ケーブルコレクション、名馬マスクケースなどがある。
クラウドファンディングのURLはhttps://camp-fire.jp/projects/view/312534
石川県珠洲市の牧場で暮らす08年日刊スポーツ賞シンザン記念勝ち馬ドリームシグナル(角居師提供)
[2021年01月22日]
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