坂口正大元調教師のG1解説 トップ眼

【坂口正大元調教師のG1解説】道悪の消耗戦 まだまだ力強い大ベテラン内田が馬を動かした

直前にきつくなった雨が結果に大きく影響しました。というのも、同じ芝1600メートルで行われた2レース前の東京9R湘南Sは、まだ良馬場発表でした。その前後半800メートルずつのラップは47秒0-46秒6。古馬の3勝クラスで決着は1分33秒6でした。

シャンパンカラーで5年ぶりのG1制覇を果たして喜ぶ内田騎手(撮影・丹羽敏通)
シャンパンカラーで5年ぶりのG1制覇を果たして喜ぶ内田騎手(撮影・丹羽敏通)

それから1時間余り後のNHKマイルCは、やや重発表。前半800メートルは46秒3と、数字だけを見れば9Rとさほど変わらない平均ペースでしたが、後半は47秒5も要しました。3歳戦とはいえG1ですから、良馬場ならもっと上がりは速かったはずです。決着は1分33秒8。それだけ馬場が悪くなっていました。

勝ったシャンパンカラーはスタートで立ち遅れ、序盤は後方グループでした。結果的にこの位置取りが功を奏します。数字は平均ペースなのに、実際はかなりタフだった流れにより、先行勢は総崩れ。外から見事な脚で差し切りました。

NHKマイルC3着のオオバンブルマイ(左端)。右から2頭目は勝ったシャンパンカラー
NHKマイルC3着のオオバンブルマイ(左端)。右から2頭目は勝ったシャンパンカラー

鞍上の内田騎手は52歳の大ベテランです。出遅れても慌てず、後ろから行くしかないと腹をくくったのはさすがでした。それにしても、直線の追い方などはまだまだ力強い。かつて南関東のダートで馬を動かしてきた名手です。07年のピンクカメオもそうでしたが、今回も道悪の消耗戦でシャンパンカラーをしっかり追って動かしました。

2着のウンブライルもいい脚でした。前半は後方2番手。皐月賞のソールオリエンスもそうでしたが、横山武騎手が展開や馬場を考えて、直線勝負にかけたのでしょう。3着オオバンブルマイも同様に後方から。馬体重426キロという小柄な馬が、よくこの馬場をこなしたなと感心しました。

もし良馬場なら、まったく違った結果になっていたでしょう。敗れた馬たちは次走以降に期待です。(JRA元調教師)

シャンパンカラーでNHKマイルCを制して青山オーナー(右)と拳を合わせる内田騎手(撮影・丹羽敏通)
シャンパンカラーでNHKマイルCを制して青山オーナー(右)と拳を合わせる内田騎手(撮影・丹羽敏通)

 [2023年05月08日]

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