【坂口正大元調教師のG1解説】勝因はロケットスタート! 坂井騎手&ドルチェモア/朝日杯FS
全集中のスタートだったと思います。坂井騎手はゲートが開いた瞬間に、ドルチェモアの唯一ともいえる不安点を消し去りました。抜群の飛び出しで、いきなり半馬身のリード。そのままハナに行こうかというロケットスタートでした。この最高の発馬が勝利を大きく引き寄せました。
新馬戦は逃げ切り勝ち。続くサウジアラビアRCは離れた2番手からで、実質的に逃げるような競馬しか経験していませんでした。多頭数のG1で包まれた時にどうなるか。まして1枠2番の内枠です。テンに行きたい馬も多く、スタートで少しでも立ち遅れれば、包まれ、もまれる最悪の展開も想像できました。
最高のスタートは人馬に余裕を生みました。1ハロンを過ぎたあたりで、隣のオールパルフェが行く構えを見せると、好位に控えます。それも無理に引っ張るのではなく、じわっと下げました。結果的に前後半800メートルずつのラップが45秒7-48秒2というハイペースですから、控えた判断は大正解。直線で見せた瞬発力も光りました。
坂井騎手は秋華賞でのG1初勝利に続く2勝目。急成長ですね。とはいえ、一朝一夕でこうなったわけではありません。早くから海外へ出向き、矢作厩舎のバックアップも受けながら力を蓄えてきました。他厩舎からも声がかかるようになり、騎乗馬の質が上がり、今回のようなチャンスをものにする。トップジョッキーへのステップを順調に踏んでいます。今後の活躍がますます楽しみです。
2着ダノンタッチダウンは1頭だけ中団より後ろから差してきました。6枠12番からいったん内ラチ沿いまで寄せて、直線はまた外へ出すという、川田騎手も苦心の騎乗でした。それだけ今の阪神で外枠は不利なのでしょう。勝ち馬との首差は、枠順の差だと思います。3着レイベリングはパドックでもおとなしく、レースも外々を回りながら上手に走りました。日本に入ってきたフランケル産駒には走るごとに気難しさを増す馬が多いですが、この馬はその心配がなさそうです。(JRA元調教師)
ドルチェモアで朝日杯FSを制しガッツポーズを見せる坂井騎手(撮影・前岡正明)
[2022年12月18日]
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