【坂口正大元調教師のG1解説】不利な大外枠を有利に変えたC・デムーロの技術に感服
本来は不利であるはずの大外枠を有利に働かせる。クリスチャン・デムーロ騎手の技術に感服しました。
ジェラルディーナには調教も含めて初騎乗でした。これまでのレースでもそうですし、この日のパドックでもかなりイレ込んでいたように、気性的に難しい面もある馬です。大外枠で前に壁をつくれなければ掛かる心配もありました。
ですが、鞍上は出たなりで中団馬群の外をゆったりと走らせました。力ずくで引っ張るわけではなく、優しく折り合わせ、馬場の悪い内には1度も入れていません。馬場は重。特に内が悪く、外を回っても届く状態でした。とはいえ、外々を回ると掛かるリスクがありますが、そこは技術で馬を御し、大外枠を有利な条件へと変えました。
応えたジェラルディーナは名牝ジェンティルドンナの子です。サラブレッドには「競走族」と「繁殖族」がいます。3冠をとるような馬は「競走族」。現役時はさほどでなくても、血統のバックボーンなどから走る子を出すのが「繁殖族」。両方を備える馬は、特に牝馬では少ないですが、ジェンティルはその1頭かもしれません。また、難しさを抱える期待の良血馬を、我慢しながら育てた斉藤崇厩舎と牧場にも拍手です。
2着同着の1頭、ウインマリリンは前脚の肘の不安が解消したことで強い調教が可能になり、それが実になった印象です。栗東に先乗りしたことも含め、陣営の工夫も実りました。もう1頭のライラックには驚きました。今年の牝馬3冠はいずれも2桁着順でした。外枠が味方したのもありますが、3冠を皆勤する馬はやはり力があるということでしょう。
復活を期したデアリングタクトは6着。前走とは違う道中の行きっぷりの良さに、これはいいなと思いましたが、直線は伸びませんでした。私にも経験がありますが、どこも悪くないのになかなか本調子に戻らない。特に牝馬にはそういうことがあるものです。14着スタニングローズは道悪が合わなかったとしか考えられません。(JRA元調教師)
ジェラルディーナでエリザベス女王杯を制したC・デムーロ騎手は歓喜のガッツポーズ(撮影・白石智彦)
エリザベス女王杯を制したジェラルディーナの首筋にキスをするC・デムーロ騎手
[2022年11月13日]
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